日常なんて一言で変わってしまう。2

  昼休憩、ついにこの時が来た。

 4時限目が終わり辺りがほわほわとだべっているのを片目に俺はバックからプラスチックパックをだけを取り出す。決して愛知県マメ知識講座ボリューム1は出さないからな!ちなみにボリューム3まで刊行中だからお近くの書店まで。ディアゴスティーニ。

 脳内ではお決まりのbgmが流れ出す。ディアゴスティーニ!

懐かしいな……別に創刊号以外かったことないけどね!

 朝から照り付ける昼の日差しは適度にこの碧海高校、1-Aの教室に陽溜りを作っており差こんでくる光がどこか眩しい。

 とはいえど今現在、目の前にはもっと素晴らしい眩しい味噌カツパンが置かれておりやっぱり眩しい。眩しいっすわ。磯貝君。

 思わず中学で禿キャラだったクラスメイト、磯貝君が出てきてしまったが実話なのでこれ以上触れないことにしておこう。

 昔話に花を咲かせずつ、俺はパックのゴムを外し、味噌香るパンを持ち上げようとした……そんな時。


 「え、やばそれ。絶対チーズ〇ットグよりおいしいじゃん」


俺が気だるげに視線を上げたそこには、幼い、少し大きい瞳に鮮明に味噌カツパンを移させキラキラさせたヤリチンの姿があった。何?物乞い?

 ヤリチンは少し間を開けようともせず、俺に聞きやすい口調で追記する。


 「あっ、もちろんチー〇ハットグもおいしいんだよ?だから訴えないでね。お願いね?新大久保の皆さん」

 「いやそっちかよ!しかも古いよ……。今タピオカの時代だよ。まあこんな田舎にはないがな!ちょうど夏休み初めて〇ーズハットグ食べたぐらいだし!」


思わず俺がそう叫ぶと昼休みのため人が半分ぐらいに減った教室内に嘲笑が広がる。父さん……これが嘲笑うって言う物なのね。初めて学んだよ……。

 で、時は変わらずヤリチンはヤリチンぽくヤリチンの如く空気を読まず話を続けていった。


 「別にあるよ。ほらあっこ」


そんな近くにあるのか。知った俺はもう陽キャだなっ♪とかわいく思っていたものも指を刺された先には細長い黄緑と白に包まれた建物があった。

 ヤリチンはそこで買ってきたと思わしきタピオカを俺の口に突っ込むとカップをぐしゅっとつぶし俺の胃に突っ込んでくる。


 「げっほ。げほッ。なんだよお前殺す気か!まさか死と同時にタピオカ童貞卒業するぐらいの価値だとは思わなかったよ!タピオカ!」

 「いや、重いでしょ。仁に限っては」

 「なんだよその「俺は違いますよヤリチンですよ」みたいな感じは!まあ確かに俺は進路希望調査に魔法使いって書いちゃうぐらいだけどね!」


どうもこんにちは。魔法使いまでの折り返し地点を颯爽と走っていった佐々木仁です。いや~世知辛い世の中ですよ~俺だって少子化に一歩歩んでいきたい……………。でもだめだぞ!皆の諸君。無責任な浴求は。

 きっとここまで説得力のない演説は某ゴーストライターでも兵庫県議でもしないであろう。すごいよなあの年の謝罪会見オールスターズ。でもちなみに俺の推しは吉兆ですね。はい。

 俺は再生ボタンを押すとさっきまでパックについていたゴムをグーっと伸ばしながら腕に着け、なんかこれ保険の授業以来の感覚だな~っと思いながらも……ってまだこの話続いていたのね?

 そんなことをおもっていると再びヤリチンはしゃべりだす。


 「でっだけどさっ、これ少しくれない?」

 「……」


少し考えてしまう俺が居た。普段ならオブラートに包まず即座に無理っというところだったが少し共有したくなってしまった俺が居たので仕方がない。俺もインスタを始めたらハマりそうだな。っふとそう思ってしまった。まあ友達いなくて共有できないのですけどね。


 「あげるよ」


素直な気持ちになったのは結構久ぶりだったので気恥ずかしい。しっかり「イイネ」付けてくれよ。

 手を差し伸べた後のヤリチンの顔は太陽に等しいものになっていた。眩しいよ……眩しすぎるよ磯貝君。

 そして味噌カツパンが口の中にほほりこまれると笑みがこぼれた。いやなんでそこまで無邪気になっちゃうかな?

 ヤリチンはしばらく堪能し続けると満足そうな眼差しのまま正面を向きこう発す。


 「うん!うまいこれ。まじで。どこのなの?連れてってよ!」

 「まあ今度ね」


俺がボッチの常套手段を使ったが多分ヤリチンは気づいていないのだろう。だってヤリチンだし。

 ほんとヤリチンは人との詰め方がえぐいってよ……。なんか古くからの友達みたいだけどガッツリと話したのは今日で初めてなんだよな……味噌カツパン。

 俺はヤリチンに昼ごはんを上げてしまったので購買にでも余りものを買いに行こうとしたよう。

 そう立ち上がった転瞬、廊下からだろうか、いつもとは違う足音が凛とした空気と共に響き渡ってきた。

 その空気は「冷たい」とか「暖かい」だとかいう感情は無と言っていいほどなく、その代わり酸素をはらんでいるだけ。色もなく形もない。強いて言うのならば死とその天地のよう。真理…といったほうがいいのだろうか?

 そして、そこから0・と5秒後。艶やかな黒髪ロングの165センチに近い美しい女性が普通のセーラー服と黒タイツという構成を非日常に変える程着こなし、颯爽と、ゆっくり歩みを進めていた。絶対的美人、そんなところであろうか?

 俺は視界に入った瞬間ぞっとしてしまう。多分俺からは一番遠い世界だと。宇宙から一番遠い場所。ここまで突き放された気分はいつ頃以来だろう。きっと……。

 そしてまた0・5秒後俺の前をサーっと効果音が付きそうなぐらい凛と、でもそこに彼女自身の爽やかさはなく、でもその代わりに爽やかなバラの香りを圧倒的に美しい容姿と光と共、運んできた。

 俺はもう身動きが取れなかった。これが金縛りなんだろうと初めて実感した。多分このまま俺はこの情報四面体から抜け出せないと思ってしまった。

 でも……………何処か彼女の姿は俺には儚げに写され「何か」が俺の喉ぼとけに蟠る。蟠っているものは「その頃」とは違う。なぜかそれだけは確信できた。きっと何か大切なものなのだろうと。知らぬうちに俺は胸にしまっていた。

 その刹那、どこかから音が入り込んでくる。

 「仁のかばんに入ってるあおい本何?」

っと……時空の狭間から幼い一言で俺を引き戻す。俺は冷や汗という汗はかいてはいなかったものの、いつの間にか握りしめてしまった手は水分で蒸れていてむず痒い。なぜだろうか?

 俺の表情筋はもう疲弊しきっていてヤリチンも前としても営業スマイルをすることができない。

 嗚呼…………………………………………………………………………っていつも通りだったわ。

 さすがに俺のいつもの苦笑いが4か月振りぐらいになったのかを心配したのかヤリチンの表情が曇る。

 そしてはっきりと詰めるような、でも心配するような声色でこうささやく。


 「あーーきれいだよね千歳先輩。そおーかー。仁はツンデレ派なのか……ちなみに俺は萌えはだけどな」

 「てか勝手に人をツンデレ扱いかよ……てかツンデレでも萌えれるんだぞ!あやせ、桐乃……まっ推しは黒猫だけど」


嗚呼少し後悔したよ…期待して。表情が曇ったのは好みが違うだけで詰めるのもそのせいか。っとなると…まあつまり心配したのも屁でもないの??なんかおかしい気がするけど。

 ふう……俺は少しほっとする。こいつがこいつであってくれて。ヤリチンであってくれて。本当に……。

 そんな俺の性癖がバラされた昼休み。もしかしたらここからすべては始まっていたのかもしれないと、俺はいつになったら気づくのであろうか……

 

 ごめん。これ一回やってみたかっただけ。ごめん、すまんかった、大変に申し訳ございません。っと軽く謝罪三段活用という社畜御用達で有ろう活用を使ったとこで………ってヤリチンなんて言った?


 「仁!仁!」

 「何?」

 「これこれ……千歳君って書いているけど先輩の弟の本?」


指をさした先は俺のバックからはみ出していた青い文庫本……。


 「違うよ。少しラムネ瓶の中に入ったらこうなったんだ」

 「へー」


露骨に興味をなくすヤリチン。先ほどまでも幼い好奇心に満ちた視線は消え失せ棒で言葉を紡いでいた。なんかむかつく。面白いのに。


 「露骨に興味興味なくすのはやめようか。面白いんだよこのリア………」


この作品の面白さを語ってから「だからヤリチンは」っとドヤ顔をするときほどの爽快感はないのだが思わず言葉に詰まってしまう。


 「ん?なんか言った……」

 「いや、なんもない」


ふうよかった。リア充と宇宙から一番遠い場所にいる俺からしたらこんなこと恥ずかしすぎて本当に……。まあ結果良ければすべてよしだろう。


 「なんでリア充になりたいの?」

 「ぐっふ」


痛いところついてくる。なんでひろってくるんだよ!

 ヤリチンは何かを思いついたのか、っは……っと顔を朗らかにすると得意げに俺にこう言った。


 「ぐっふってなんかおっふみたいだよね。なんだろうまあアレも一周回ってリア充……」

 「なんでそこ……てかもうやめて!それ以上いくとパロディーの領域じゃなくなっちゃうから!」


ろくなことじゃないですよね……

 そんな俺を横目に、ヤリチンはまた180度話を変える。


 「まあいいや。味噌カツサンドを食べられて、千歳先輩も見れたし……」

 「確かにそうだけど……ってか味噌カツパンな」

 「うっす」


俺はあのあっけとられていた時間を取り戻すべく、珍しくヤリチンと長きに渡って会話をしていた。

 不思議なことにその会話は続き、さらに不思議なことに苦痛の中にも楽しさがあった。そして不思議なことに俺の性癖がしれーっとばれてしまったようだ。まあとき来るべきしてきたって感じだがな。まだこれなだけよかったのであろう。

 でもここまでうまくいくというかなんというか。本当にそのこと不思議な気がした。

 まあそう感じるのもいつもが悲惨なだけな気がしないわけでもないがな。

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