承
日常なんて一言で変わってしまう。1
3 想定外と日常は常に背中合わせ。
コーヒーが香るAM6時50分。俺は足立駅から少し離れたコメダで1人、コーヒーを飲んでいた。
ウッドハウスみたいな内装。そこから明星と共に入ってくるように見える小学校はまだ時間が早いからか先生の車しかなくシーンとしている。本当に朝早くお勤めありがとうございます。
そういえばうちの担任もこんな感じで言ってた気がする。「一時間前出勤なんて基本だよ」と……しかも残業もするんだろ。ほんと頭が上がりません。お勤めご苦労様です。そのまま御用になってくだ さい。
まあ俺はまだ高校生なので軽く鬱になるぐらいで何の関係もない。なのでお構いなく甘いコーヒーを啜り今日の朝食を待つとしよう。
あーおなかすいたほんとに。せめてまた卵焼き盗んどけはよかったなー父の分も一緒に……………きっとあの父なら腹を壊してでも食べようとするだろうから丁度地雷にいいな……っとバイオテロの如く、いつもの妄言を吐いていると背後から香ばしい香りがする。
「お待たせいたしました!味噌カツパンです」
朝っぱらなのに木一枚板のテーブルに三切ほどのボリューミーなカツサンド……ゴホン、カツパンが何色にも染められていない純白の皿の上に居座りながら置かれる。
「あーうまそう」
やばい、まじやばたにえん、やばみーっと陽キャ三段活用を使用するぐらいでも伝えたいこのすごさ……もう尊い。これはtwitterのリプ欄で軽く画像まみれになるぐらいだ。
初めてあのヤリチンに自ら共有したいと思ったぐらい絶品を目の当たりにした俺には、朝から味噌カツの重さなんて気にしないぐらいで逆にそれもいいと思っているまでである。人生重い時ほど重くしてこうぜ……きっと気持ちが晴れたまま重い人生を謳歌しぜる日が来るから……っと。いいんじゃないこのキャッチコピー。特に東京でこんな感じで掲げれば労働前か朝帰りの人の目につくはず!……社畜から搾取する前提だけど。本当にお勤めご苦労様です。
多分目の当たりにして凝視しているであろう俺の前でも今、この味噌カツパンは「気持ち……悪いんだけど……ほんとに……」っとか妹の如く言ってこない。ほんとやさしい……やさしいせかい……やさいせいかつ……まあ出資者にはだけど。
結局世は辛らつだがどうでもよく食べるとしよう。
俺は一つ重量間のある物を持ちあげ勢いよくかぶりつく。あ~うまい。この口当たりの良い味噌からは追い打ちするように来るカツのジューシーさ。あつあつの衣は今揚げたのかとてもほふほふで口からは湯気が出てくる。隙間を縫うかのように入っている味噌と油とが絶妙に混ざり合ったキャベツは負けず劣らずシャキシャキしていて3つ、味噌、カツ、キャベツと共和していて本当に最高。シアワセ……
これはもう……もう。
× × ×
15分の時が流れたとき、俺は完全にミスってしまったことを察した。別に死期が近づいているわけではない。忘れてたよ朝モーニングだったこと……目の前には激戦の上最後の一つミソカツレツパンがルミーンしていた。英語にしてもそんな変わんないな味噌カツパン。
そんなことはどうでもよく、俺、おなかいっぱいです。……ふぅ。やばい!残しちゃう!
でも愛知だからこそ発動できる技があるんだよな~。それはですね、俺の右手に眠りし18の禁じられしレクイエムの中にひそめられた秘儀の一つ。それは……。
「すみませーん。プラスチックのパックありますか?」
「もちろんご準備してますよ。お持ちいたしましょうか?」
「お願いします」
そう、基本愛知県には余ったものはパックで持ち帰る文化がある。それは喫茶店でもラーメン屋でも寿司屋でも……。なので俺はその文化に甘えさせてもらって今日の昼食にでもするとしよう。ちなみに秘儀をもう2つだけ紹介するとすると、一つ目は大須の今は亡きグットウィル近くの信号を見極めることで二つ目は藤田屋のあん巻の中のカスタードをぺろぺろすることだ!意外に藤田屋は碧海高校の近くにあるのでコメダと同じく、数少ない息抜きの場として重宝させてもらっている。大須のグットウィルの信号はぜひともGoogleマップで見てみてね。驚くから。
俺は愛知県マメ知識とパックに入れた味噌カツパンをパックにいれ手ばやに席を立つ。
会計に向かうともうそこには店員さんの姿があってとても心地よく会計ができる。可愛いなこの人。
「1430円です」
「ぐふっ」
サイフハセンヨンヒャクサンジュウノダメージヲウケタ。財布から札が二枚旅立っていく音。ある意味清々しく心地よく学生にとってはまたダメージが大きい。でもそこには確かな満足があったので十分なのだが……まあいいだろう。帰りにあん巻かってこ。
結局散財する俺であった。まあ別にいいだろう。最近やっとプログラミングで収入が入り初めたし。
俺は軽い足取りで暖かい木のドアノブを捻り、今日の昼はまだかまだかと楽しみに学校へと向かった。
今日は珍しく清々しい気持ちで。さっきと違い。アスファルトを蹴った。
でも……アスファルト特有の香りはぬぐい切れず、俺の底に蟠っていた。
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