ずっと横目で見えていた筈であった世界は這ったりで……5
まだまだ終わらないようだった。沈黙の中、響き渡るスリッパのカツカツとした音はよく耳に反響してやはりうるさいのは変わりない。
無機質に打ちっぱなされた、コンクリー作りの渡り廊下。そこに人間情緒なんてものは存在しなく、あるのは黒と緑で飾られた苔だけの世界。
『………………………………………』
まあここまで遠回しに情景描写してきましたが、つまり言いたいことは…………………僕はルシファーってことで(唐突)。
………すまんかった。急にダイナミックに作画崩壊ではなく、頭おかしいことことになったがそんなことは置いておいて現在、とても気まずい。
なんで俺ら初々しいカップルみたいになってるの⁈俺は振られたんだよ。………あれ?振られない?
俺は現状は、振られたけど振られてない。よくわからないがあの「付き……合って……」っというのが引っかかっているのは確かであって……。
結局はうやむやになって今現在。一歩進めていないのは俺だという事位分かっている。でも踏み出せないのは自分であってて……。
っと気負っていた刹那、彼女は少し頬を朱で染めながら俺の方をちらりと一回見ると逸らし、一言呟いてきた。
「ほんと今日もいい天気ですねぇ~」
「会話下手か⁈しかも老後を迎えた老人ホームでの会話風だし!しかもそれ、寄りにもよって外人に紹介する定型文、ベスト2だよ!」
思わずツッコミ症候群の発作がでてしまう。
「ちなみにだけどベスト1は?」
ぐいぐいと我を忘れて近づいてくる伊良湖。
俺はそんな伊良湖に対してほほんっとドヤ顔をすると満点の回答で返してやった。
「あなたはおなかはいっぱいですか?」
「それChinese!しかもそれ今現状の仁だし……」
「なんで俺の周りはイントネーションだけいい奴が多いんだよ……。あと現状ってドユコト?」
「それは………」
つまり詰まって排水管にマナティが詰まってしまう程。俺は尊くてとろけそうな地獄のリプ欄見たくなってしまいそうな衝動を抑え伊良湖の視線を白線で引く。
…………嗚呼。こんにちは俺の腹。少しぽっとこりと覗かせた腹は満腹そのものに見えた。でもね伊良湖ちゃんデブはいつでも満腹ってわけでもないのよ……。というかまさにその逆であって……。
「嗚呼~腹減った」
「まさかの空腹⁈私ベスト1使ったら危うく奢る羽目になってたよ!」
サラッとデブは奢られるのが当たり前とか言う感じで受け答えされた気がするのだがまあ見逃しておこう。実際そうだし。そうだよな!新実!
俺はデブに食い逃げされたことを恨んではいるのだがそこは置いておいて、いい波に乗っていくツイッタラーの如く俺は、話しを続けた。
「まあ奢るのはまたのことにしておいて、結局スモールトークって言うのは嘘っぱちだよな」
「せめて500円までで許して鈴木ちゃん!………じゃなくて、まあそうだよね仁」
送られてくる視線は先ほどよりも冷ややかで軽蔑を含んでいた。ソウデスネイラゴサン?
「まあそうだね……。そうだよそう!そうだよ!だって入門コミュニケーションっていう本読んだって彼女どころか友達すらできないんだもん!」
「悲しい悲鳴……あっ、それただの悲鳴だ!でもいいんだよ仁らしくて!」
らしいとは何なのかとつくづくと思ってしまう。俺らしいとは何なのか?心底考えることでもないけどね。
ふわりと和やかな雰囲気に包まれる二階階段。
図書室は3階にある筈なのでもうすぐ着く筈だ。
俺は少し恥ずかしながらもポツリと一言呟かずにはいられなかった。
「頑張ろうな……」
自分でもこんなにやさしい声音が出るとは思わなかった。多分初めてのことなんだろう。
そんなことをしみじみと思いながら俺は階段を一段ずつ上る。
できれば入門コミュニケーションを返品したいと、1320円を羨めしく思って。
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