作戦開始!っと無責任に伊良湖みなみは文芸部を巻き込む。3

 曇り空から一本の日差しが差し込む現在は16時10分。この平凡な碧海高校には補修というものなんてさらさらなく、俺は部活兼生徒会選挙控室にさっさと来ていた。………ヤリチンと。

 なんでこいつがついてきてるのかな?部活じゃないの?なんかこの会話少し前にもしたような気がするよ………。

 俺が気負っていたその時、ヤリチンは俺の脳内を読んでいるかの様に俺の疑問を解いていった。


 「よかった今日部活なくて。先生も誰もいなくてさ……。って聞いて驚いたよ!仁推薦人やるってね。頑張って!」

 「なんでいるかな……」

 「それはみなみにたのまれたからだよ」

 「はあ」


果たしてこいつは役に立つのか?国連の非常任理事国並みに空気になるに間違いない!ヤリチンに何ができるのか?それは永遠の謎です。

 まぁ疲れてきたのでさっさと図書室へ入ろう。

 俺は錆びれ少し緑く変色している扉を開けると。


 「ガシャ」


あれ……開かない。あれ?

 なぜか開かない。カギは職員室にはなかったし心当たりのあるところも探したから誰かいるはずなのに……。

 開かないのはただ単に歪んでしまったからだろうか?ぼろいし。なので俺は力を入れ、再びリベンジをするのだが……。


 「固った!」

 「仁ダイジョウブ」

 「な訳ないだろ……」

 「もっかいやってみて?」


俺は力を入れもう一回。


 「ガシャ」

 「もぉ硬い!」

 「それでも株は抜けません」

 「なぜに童話風⁈しかも大きな株だしさ……」

 「まあいいから見て!」


話が旋回したことをお知らせします。というか誰もかれも話すぐに変えすぎなんだよな。

 まあそんなころはどうでもよく、俺はヤリチンの視線の先を注力する。

 そこに窪んだところがどこかカエルの卵に似ているものがあった。………まあそう鍵穴だ。

 いやこいつマジで馬鹿にしてる。職員室には鍵がなかったからな。

 まぁただ見つめていくとあることに気付いた。………あれ?これ、タピオカに似てね……っと。

 話がそれすぎなのは分かってる。でもこの影具合、なぜか父が飲んでいた有名店のタピオカに似ている!ちなみにそれは妹のために買ったらしいが、妹は「タピオカ苦手なんだよね……」っと珍しく申し訳なさそうに拒否っていて父の努力が報われていなかった。 父の並んだ30分の背中が見てられないよ……。

 てかそのせいで初めてタピオカ飲んだけどほんとにぬるっとしていた。ほんとヌルッだよ。

 そんなヤリチンは、何かを思いついたように俺に話しかけてきた。


 「ヌルッ!」

 「どうした⁈まさか俺の心が読めるのかよ……」


怖いってばよこいつ。


 「え、別になんか鍵穴ってタピオカに似てるなーっと思いながら、この前タピオカを思い出しただけだよ」

 「そこまで同じなのね……はあなんか悔しい」 

 「なんで?」

 「いや………なんでも……」


口が裂けてもお前とは考えている次元が違うんだよ!っと言えない。俺もこいつも同じ高校だからな。

 いくら学校内の順位が違ったところであくまでも同じ土俵だからな。何にも言えない………。はぁ勉強しないとなぁ。

 急に訪れる沈黙。もうさっきの会話には見向きもしなくなったヤリチンは扉などをカンカンしたりして耐久性なり何なりと計測していた。会計検査院かな(学校などの施設を点検する院)?

 点検の中訪れる沈黙。俺の中学校ではこのことを天使が通るっと表現されていたどうも男2人だとしっくりこない。でも天使なんだろう。天使ちゃんマジ天使!

 でも実際、俺程度の人間になると天使が通るどころか話しかけられても沈黙になる心配はあるな。ぎょっとしてお互いの沈黙が今よりも冷ややかなものになるのであろう。流石俺。中学時代はそこそこ友達もいたのにな。

 失ってしまったものはしょうがないというがコミュ力まで失ってはもうどうともならない。簡単じゃないんだよリハビリって……はあ俺コミュ力あったのにな~。

 俺は自分が語りを自分に向かってするとかいう高等テクを虚しく行っていたその時……硬質な音は廊下を響き渡らせる。


 『仁(君)』

 「ヌル!ってあッ」


うん、何となくわかっていたがいざ現場になってみると何が起こるかわからない今日この頃……っといっても俺はきょどるだけの今日この頃なんですけどね!その象徴としてヌルッって出ちゃってるし。ヌルッ!

 で誰かとは何となくわかりながらも後ろを向くと、そこには冷たい札幌雪祭りみたいな目の羽豆と、うわーみたいなあからさまに既視感のある目の伊良湖。なぜかヌルっと意味の分からないこと言っちゃたし……。はぁ。

 っと羽豆は冷ややかな目をの勢力を保ったまま目線を少し上げ猛烈な勢いを保ったまま目を合わせてきて一言。


 「いや何それきょどりすぎだよ君。コミュ障は中学生の時からの折り紙付きだよね?」

 「まてまてまずなんで俺に確認するんだよ」

 「まさかいま今「俺……コミュ力は中学の時から折り紙付きなんだよ……」って脳内でイケボ風で言ってたの?」

 「いやいや人の脳内美化させるのはやめようか。恥ずかしいから」

 「はあ恥ずかしいのはこっちだよ……君で何回共感性恥知を覚えたことよ……」

 「てかなんだよそれ!」

 「はあ、まだ気づいてないの君……ちょろいな」

 「てか何…………………が!」


――――――いやいや脳内美化させるのはやめようか……。って………………………。

いや~俺認めちゃってますねほんと俺。てへへろっと行かないのが人生。


 「お前誘導尋問さらっとするなよ……」

 「誘導されたのは君ですし、気づくの遅すぎ。ラノベの主人公ですか?」

 「そう少しかわいく言えよ。例えばお兄ちゃんのラノベ主人公!っとまずニートになってからさ」

 「君もニートの道に誘導していってるのですがね。まあ君がラブコメコンプなのはわかりましたよ………」

 「そうそうラノベの主人公って基本的にこう言われるんだよな……」

 「まさかの自分が主人公扱い!」


っと伊良湖は顔を引き付けながら突っ込んでくる。その蜜柑色の瞳は透き通っていて理科の実験で使った天球みたい。いや、かわいくね~。っでヤリチンかというとなぜかタピオカ内部を凝視していて特に聞いていていない模様。よかったよかった。


 「少しは反論してよ君、私が悲しくなるんだけど」


っと語る羽豆を俺は無視し伊良湖からカギをもらう。

 思い出したよ……。なんで

 俺はカギをタピオカの中に突っ込み回転させる。


 「ガさ――――――――」


明らかに軽いその扉は自分の勘違いを思いおこす。そうだよな、鍵がなきゃ開かないもんな。

 明らか知能指数が低いのは俺だった模様。【悲報】俺氏ヤリチンに敗北する。

 窓についていたカーテンを払いながら中に入るとどこか涼しい気がした。今日、外は汗ばむほど暑い。……で、電気もついているし……は?

 見渡すとそこには二宮金次郎、では半分なく眼鏡が今日は珍しく緑色の本を読んでいた。決してホラーというわけではない。

 え……。


 「なんで……お前そこにいるんだ」

 「何って部活動の一環だ」

 「いや違う。なんでお前が入ってるんだっと……」

 「なんだそんなことか。それはカギを使って入ったからだ」

 「鍵?」

 「そうこれはカギと言う物だ。この先を鍵穴事タピオカに入れ回す」


流行ってるのそれ!しかもこいつがタピオカってかわいげなさすぎ……って俺もか。だって妹が受け取り拒否したタピオカでタピオカ童貞卒業したぐらいだし。


 「いやそれは知ってるのだけど……なんで開いていなかった?」

 「それは閉めたからだ」

 「は?」

 「そうしまってたよね?仁」


ヤリチンの声。こんな時には少しは役に立つんだな。


 「まあそうだろうだって閉めたからな」


ん?俺は開かない扉を無理やり開けようとした挙句、心まで読まれたと……。どこまで遠回りするんだよ俺。


 「っという事は伊良湖さん?そのカギは?」

 「えっこれマスターキーda」

 「マスターキーかよ……」


俺だけの沈黙が一番つらかった。あとの面々は気まずく微笑む、蜜柑少女。嘲笑する男女二人。鍵穴を興味深く観察するヤリチン。まだやってたのね。

 各々の状況を把握しながらも俺は今日の会議を始めることにした。


 「……それじゃ、始めよう。伊良湖、今日の話題はなんだったけ?」


俺の転機を効かせた疑問に周りはすくすくっと笑い出してしまう。

 俺はというとなんだか愛想笑いしか出ず、落ちるように席に着いた。

 ガシャンと鳴り響く無機質な金属音。そして出てくる愛想笑いの音。

 愛想笑い、今日、俺はその愛想笑いに初めて意味を感じていた。なーんてね。冗談だよ(笑)

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