佐々木仁は本当に「全て」を忘れた。3

香る大地は一瞬にして消え失せ残されたものは15年分の経験。

 今日は土曜日であってあと生徒会選挙まで6日。

 布団の中でうずくまりながらも結論を探し、そしてまた絶望する。そこには不思議と涙はなく、空虚に時間が1秒1秒刻んでいくだけだった。

 手に取るスマホでラインの画面を映し出し、「ごめん」っと質素に伊良湖に向けメッセージを送る。

 すぐに帰ってきたテキストには「大丈夫!来週は頑張ろうね!」っと返信が返っていっているようで、テキストにそう記されている。


 「大丈夫なのはどっちだよ……」


呟きは漏れださず収束する。アニメを見習って自分を活気づけるために出した声も、思ったより発することができななくこの気持ちにバイアスを駆けるのみ。

 今日は作戦会議!みたいなもので足立のカラオケで集まるらしいのだが仮病を使って休んだ。ほんと俺は何をやっているのだか………。でも、結局は何をやっても同じだ。日常通り。それなら金を貯めた方がましだろう。

 はぁ。世界は光なんて与えちゃくれない。神様なんてどこにもいりゃしない。

 もし存在するとしても、見せるのは楽しい欺瞞に満ちた夢に溢れた景色で、それは目の前で弾けていく。


      ×        ×        ×


 寝たくても寝れない。寝る時間ではなくとも寝れない。早く経ってほしい時間だって進まない。

 カーテンから漏れ出す、ほんの少しの陽光も煩わしく苛立たしい。温かみなんて肌でしか感じない。

 そんな状況が更に偏頭痛を悪化させていく。

 全体には気怠さが蔓延していて、それは偏頭痛と合わさって不協和音ですら奏でていた。

 ―――――――また負ける。

 俺の中ではその言葉が渦巻いていく。あの時見た悪夢が再び放映される。

 その悪夢はぐるぐる回るほど俺の考えを取り込み、一体化し、飲み込んでいった。

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