碧海高校 生徒会(候補)記録簿 4 

 「っという事で決めよーう!」

 『はーい』

伊良湖の生き生きとした声に、年齢+50位した全員の野太い声が追撃する。まさに高校野球部。まぁったまに声が高い1年生が居てかわいいけどな。

 話は戻りまして俺たちが一番知っているのだ。ここからの長さを。ここからの日常を。

 っという事で改めて今まで決まった公約を再確認する。


 1 エクストリーム目安箱

 2 昼食後の昼寝

 

 このの2つ。

 この2つは9日間という長い歳月を隔ててやっとまとまったのであって俺らはなかなかまとまらない地獄を知っている。眠気を強制退会させる伊良湖の声。ほんとたちが悪いよな。あんなかわいい声で囁やかれちゃぁ寝るに寝れん。まぁ逆に眠気を促進させるまであるが。

 「………」

もっちろん沈黙に決まっている。それはいのりも何か察したのかツインテールの毛先をいじるのにいそしんでいた。しっかりと空気は読めるのだな。なら何故転校そくぼっちになったのか訳が分からないけど。

 そんなことはどうでもよくて、この沈黙の時間をどうにかしよう。

 そういえば眼鏡は言っていたな、「陰キャにも配慮しろ」っと。まあ言ってないのかもしれないがそういう事だろう。でもそれこそ流動票を獲得するチャンスかもしれない。そしてそれもあい合わせて千歳先輩の流動票を獲得しなければならない。

 なら、こういう事じゃないのか?俺が面白そう、楽しそう、っと思った戯言。そして学校単位で騒げる戯言。団結が好きそうな陽キャに向かった戯言。今まで退屈だった文化祭を変える戯言。俺が最近知ったばかりの言葉戯言。ちなみに俺は今まで戯言をたわれごとって読んでいて変換に苦労したもんだ。恥しいいよ……ふぅ、ほんと変換しないまま書き起こさなくてよかった。「簡単に死ねますよ」

 でも戯言で楽しめるのならばこれは最高なのではないか?

 小学生時代先生は言った。楽しいとふざけるは違うと。

 でも実際、おふざけで心から楽しいと思えたら人生もうけもんじゃないか?しかも自制心が利く高校生ならなおさら。

 ただ何事も本気でなさなければいけないのだ。結局中途半端では面白くない。俺もこの短時間の日常でそれを学んだ。結局与えられたチャンスを惰性で流してきた………。だがこれも楽しめるのじゃないのか。本気で声だして、笑って。そうだ………。

 「とっとこハム太郎はどうだ?」

 『却下』

あれ?普通ここまでのモノローグパートが入ったら団結して「お――――――――」みたいな感じだと思っていたから拍子抜けしてしまう。それはそうだ。現実は上手くいかないからな。

 「はぁ?いいだろ!偏見で悪いのだが陽キャってとりあえずなんか団結してはしゃげればいいんじゃないの?」

 『はぁこれだから陰キャ脳はだめだんだよ』

 「ただ俺が言いたいことはな、全員で本気で楽しむってことだ。結局戯言でもなんでもいい。ただ陰キャ陽キャ関係なくかかわれる行事を探したらこれが出てきただけだ」

 『却下。それっぽく言っても却下』

 「何その無差別却下は!意図がないだけ無制限潜水艦作戦よりも悪質だよ!誰か俺の擁護してよ~」

っと俺がマジ顔になって講義をしている途中、半笑いをこらえながらいのりはそそのかすかの如く、透き通った声を発する。

 「まだ死なないだけいいじゃないですか♪」

 「何その極論!死かそれ以外かなんてローランドでも発さない言葉だよ!」

 『確かに』

 「素直に感心するな!」

最近、あるライトノベルの影響で叫びまくりだがまぁいい。やっぱ良くない。めちゃくちゃ面白かったよ!その影響でツインテールキャラが書きたくなったって言うのはあったりなかったり……。やっぱサブヒロインの妹って最高だわ。

 っと俺が感慨に浸っている途中、眼鏡は蛍光灯にて光り輝かせた眼鏡をカシャリっとやると、いつもとは違う目線を女子陣に向け言葉を放つ。

 「ならお前らは何か考えがあるのか?」

あっけにとられた伊良湖達。

 『………』

っという沈黙に眼鏡がにやりとした。いやこいつ性格悪すぎろ!っと突っ込もうと思ったが基本的にボッチになるやつは何処か捻くれてるので仕方ない。

 眼鏡が息を吸いだすと今度はいのりがにやりと微笑み先手を取った。

 「あの~、私が東京に住んでいた時の私立の文化祭に行ったとき、なんか学校内ステージみたいなやつでやってたのですけど、なんか賞金掛けてたらもう、出ている人の目つきが違ったよ♪」

 『それだ!』

眼鏡は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが気にしないことにしておこう。

 確かにこれはいい気がする。金で陽キャどころか陰キャもおびき寄せて本気を金で買う。これなら賞金のためにステージの質も上がるし次第に参加者も増えていく。実にいいのではないか?

 それにとっとこハム太郎も付けたら無機質な文化祭が少しは本気で楽しめるものになるのではないのだろうか?

 俺は余韻残らぬまま、情報を追加する。

 「確かにそれに加えてとっとこハム太郎を入れたら楽しそうだよね」

 『却下』

 「おっと」

ここまでの鋭い目線をぶつけられたのは妹の卵焼きを盗み食いをして酷評した時以来だろう………って結構最近だった。ちなみに妹theキッチンの最新作は、マシュマロ入りチョコレートクランチ。冷凍庫で急速冷凍したおかげでカチコチの保存食。これが幼い時なら顎が広くなるからって、あえて硬いものを食べさせる時に使うぐらい硬かった。多分やさしいジャイアン(月曜から夜更かし参照)でも食べれない物であろう。って懐かし。八百屋は上手くいっているのであろうか?

 「まぁ女子の意見なら仕方ないか」

俺は疲れ交じりで言葉を紡ぐ。

 まぁ仕方ないことなんだろう。俺ら男に分からないこともあるしな。

 『ふう』

やっと長かった公約探しに終焉の幕が下りた。っと言っても生徒会選挙までの本番にまだある程度の工程がある。でもこの図書室は達成感で満ち溢れていた。

 久しぶりに打ち込めたのかもしれない。それもこれもこの全員のおかげ、いや伊良湖のおかげだ。

 立ち込める、黒ずんだ雲の隙間から光が一線、漏れ出した気がした。

 その光は図書室一室を照らし上げ、心地よい暖かさに包んでいた。

 やっと終わった公約。

 最後に公約のまとめをしておこう。

 1 エクストリーム目安箱

 2 昼食後の昼寝 

 3 文化祭の活性化(学校内ステージの賞金など)

なんか勝てるような気がしてきた。

 腕元のチープカシオを見ると5時50分を映し出していた。

 俺はいつもの様鞄にいくつか入ったキャロットジュースを持ち上げ開け、オレンジ色の液体を啜りながら帰るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る