やはりおはようから日常は始まる。5
「ヤリチン、頼む」
LINEのベタな似た色の吹き出しの上見た目とは相反していている白の背景に、テキストを刻む。
「は⁈………まさか聞いてはいたけど仁、ほんとに狂っちゃったんだね」
即座に既読がついたと思ったら転瞬的に返信。なんでこんなにタッチパネルで早く打てるんだよ。尊敬するよ………。軽蔑するよ………。
俺は屈することなく、自陣地だけLINEのイメージカラー通りになった吹き出しに、テキストを並べていった。
「そこを頼むよ~」
「なんで?」
「なんってなんだろうかわからないですけど。それはあれだよあれ。いちようわたくしのですね……」
「キャラブレ過ぎ!やっぱいつの仁だ!」
ちょっと意味が分からないが、LINEの適正な返し方も分からない。ため語⁈敬語⁈。これは敬語&ため語の延長でもなんでもなくマジでどっちかわからない。ちなみにその他でも困るLINEの対処法がある。一つ目はスタンプを親戚に送って行っていいかっという問題でもう一つは自分。一人称。基本的に「俺」でいいのか「僕」なのか私なのか……わたくしは論外だけど。
「ちなみに俺はLINEでの一人称を避けるようにしてLINEしてるよ。なんか「俺」ってすごい文章の会話だと使いにくいしね」
「打ち消しってない・ぬ・んとかだけだと思ってたけど俺もなのかー」
棒を装って指摘しておく。
「え⁈これノーベル賞的な発明じゃん!学会に提出しなければ」
「学会追放不可避だよそれ!」
気づけばタッチパネルの速度も上昇していた……っということはできない。単にだ単にPC版のLINE使ってるだけだからそんなことはない。意地でもない。
「っというか何の話だっけ?」
あほ丸出しのLINEのテキスト。同じ高校なのがもう恥ずべき事実。勉強しなきゃ―。
「あのお願いの話だよ。詳しいことはトーク履歴で見て」
「了解!」
珍しくあれから1分が経った。幾度もなく続くと思っていたLINE会話であったがここで終止符が打たれただろう。
やがてパソコンの簡素なスピーカーから電子音が流れる。
「いや~俺の立場もあるし。無理かな」
「そこまでお前に地位はあるのか?」
「そりゃーいっちょ前にはね?」
「なぜ疑問形」
「いや~」
まぁ俺には分かるが断ろうとして失敗してしまった図だ。大体こんな感じで「いや~」か「え~」か「そうかぁ~」が二回以上続いたらさっさと断れ警報なので控えめにしよう!
「そうかぁ~」
「なぜ仁が!」
「そうかぁ~」
「すみませんやめておきます」
うまい具合にはまれば……っと思ったが駄目だったよう。ならもうこれしかないな。
「最後に聞く。やるかやらないか」
「やりませ…………………………………キープ」
「キープ⁈」
「あの番組でキープは「せん」も同然だよ!仁!」
胸を張ってヤリチンは紡いだ……っというのが文面で伝わってしまうからLINEでもやはり人間は出るのであろう。
「確かにそうだけどさっ!シリーズ途中で買われちゃってるしさ!」
一様突っ込んでおこう。〇〇ゼミを思い出したのは同じだし。
「それでやらないのだな」
「うん!もちろん」
「1味噌カツパンでどうだ?」
「ん――――――3!やっぱ―――4かな?いい?」
「なんでお願いしている立場がお願いされているか分からないがまぁ良しとしよう。まあいいだろう。手を打った」
結局なんか交渉されて、最後の粘りを見せたヤリチンであったが勝負あり。これで明日は体上部であろう。期待してる。ヤリチン。
ラインの右端を押し、閉じると出てきたのはワードで作った文章の面々。見渡すと画面内でデータとして書き出されている物々。そして明日、その文面は声となり肉となる。ついに決戦の時だ。
俺は一回に印刷するため、パソコンを持ち立ち上がると、そっと蜜柑のさわやかあ香りが鼻を撫でた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます