やはりおはようから日常は始まる。6

 「おはよ」

 「おはよー仁」

今日は何の悪戯も行ってこないみたいなので構わず朝食を食べる準備をする。

 今日は改めて決戦の日である日も、何ら変わらないおはよう。日常はまた今日も始まった。

そんな俺であったが生徒会長選挙も終わったらテスト週間、テスト………死にたくなったなこれ。次は伊良湖に勝たなければ……。英語、指示代名詞、不定代名詞etc……。高校の英語難しすぎるんだよね!もう共通テスト受けることがないようにがんばろー!

 まぁそんなことを頭の片隅にあるクリーンセンターに放り込みながらも俺は、焼却するように焼きあがったトーストを絡めついたチーズのかかった耳からちぎり口に入れる。

 最近では菓子パンを食べることが多くなっていたが、家では久しぶりのトースト。貧乏の味がするよ。

 お金が失せて支払うことすらできなくなったコメダのモーニングとは少し違い、8枚切りの薄くサクッとしたところにチーズのとろけぐわい。ピンクに染まったハムはチーズの衣を纏っていて絶妙にマッチしていて旨さを上げている。

 そんな風にトーストをほおばっていると母は微笑みながらものんきな声色で言葉を紡ぐ。

 「今日は元気ね~。若いって素敵」

 「そうかな?別に素敵を捨てきった生活だったからどうとも思わなかったけど」

 「素敵を捨てきったね~。まぁそうかもだけど納得!」

 「寒いダジャレの方を突っ込んでくれませんか!」

 「ほら元気、元気~。仁たんも?」

 「元気、元気ー。……はぁ」

母に早速NHK的にあしらわれる俺。こう見えて、考えながら会話を進めている限り頭いいな~っと思いながらも俺は、紅茶の反射する鏡面を眼差す。………やっぱ見れないや。自分の顔。

 頭をぶんぶんと軽く左右に振り払い、改めて波立つ紅茶を啜る。

 すすsssssssssssssssssssssssssssss。

 「ふぅ」

いつも砂糖一杯入れる俺であったが今日はそんなことをせず、無糖で試飲してみる。意外にいけるかも……っと俺が学校に持っていくものアリだなっと思っていたが、よく無糖紅茶持ってきたぜーみたいに中学時代小声で喚き散らす輩が居たことを思い出し躊躇する。ほんと、なんで紅茶程度でイキれるだろうなあいつらは。しかも俺はレモンティー派かな?っとかすかして小声でつぶやく奴いるし……。俺だったわ。まぁ結局チキって持っていくことは愚か、その話すらしなかったのは内緒だがな!

 でも実際、レモンティーは紅茶の中でミルクティーと遜色ない位美味であり、さっぱりとしていて本当にやめられない。中毒だわ………。カフェインの。

 そう紅茶の派生に思いを描いている思考を一回止め、また啜る。

 かしゃりと甲高い音がした所に目を取られていたら飲み口のあたりから液体が曲面に沿ってソーサーに一つの水溜りができていた。その水溜りは、雫から量が溜まるにつれ周りにじわじわと拡散されいく。

 ふぅ。

 窓外を見ると相変わらずの改正は変わりないが、今日は肌寒い気がする。もう冬がやってくるのであろう。

 そう悦に浸ると、もう一杯紅茶を入れカフェインで身体をを奮い起こす。

 今日が決戦の日。俺以外何も変わっていない水槽の中で、俺は水の色を変える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る