作戦開始!っと無責任に伊良湖みなみは文芸部を巻き込む。7
「はあなんで俺までいるのかな?」
「しょうがないじゃん。だってこの提出には推薦人もいるんだもん」
カツカツと鳴り響く部活棟階段。渡り廊下の入り口から入り込んでくる光がよどんだ、照明もついていない辺りを照らしていた。
っで今は部活及び生徒会(候補)中、なのに俺が駆り出されている理由は俺と伊良湖、また周囲の人々を繋げた立候補届を出しに行く為。なーんて大層なこと言ってるのだが、実際言葉にして、文字にしてみるとどこかくすぐったいところがあって恥ずかしい。
「そー言えば先生になんていわれるかね?」
「まぁ確かにあの先生にはな」
思い出してくれただろうか?久しぶりの佐久鈴先生。あの皮肉大好きな私服のダサい声優に似た佐久先生。確かにあの先生にはなんていわれるか分からない。だってこの前、「あ~私が今回の生徒会選挙の代表とか立候補者全員消えてくれないかな~。それかもう公約生徒会を消すとかにしてくれないかな~」っと授業中、何のためらいもなく言ってしまうからな。もうこの人先生やめて声優になった方がいいのではないか?だって声とルックスは可愛いし。目は………。まあ編集で輝くようになるだろう。
布が擦れる音が迫りくる日差しと一体化しており全てが非日常に見えた。
伊良湖は息を吸う音を立てると、俺の方を向きながら微笑する。
「まー。私は普段ちゃんと予習もしてくる優等生だからいいとは思うけどね。ちら」
「おい、わざとらしく「ちら」っと横目で見るなよ……。しかも残念だな伊良湖。お前も聞いたことあるだろうが先生は甘い声音で「はーい。生徒会のやつね~多分出ないと思うけど上からの指令だから一様配っとくね~」とか言っちゃう先生なんだぞ。群道先生の乳首ガチャよりもやばい」
「なんでVYouTuber……。まあ確かに良い意味では贔屓しない~だとか裏表がない~とかなんだろうけど、あの先生は違うよね」
「うんそれ分かる。って伊良湖vYouTuber見てたんだな~」
「まあ私は緑仙だけどね」
「ああ太一が見てたような……」
「仁って友達いたの⁈しかも名前呼びだし!」
伊良湖は賎しむ目ではなく好奇心に満ち溢れている。
その目は佳麗で伊良湖がより一層ひきしめられ可愛く見える。って可愛すぎて突っ込めない!
かわいいが一番ツッコミ辛いことを知った今日この頃です。という事で俺の辞書かわいいの欄に新しくこう記すことにしよう。突っ込み辛い、っと尊くてリプ欄に偏差値の低そうな画像を送る……っとね?。そうでしょ?ね?お前だよ!Twitter民!
× × ×
『はあ』
1年生の教室群の奥地。丁度一組の横に位置している部屋の前で俺らは溜息を付く。はあ。
伊良湖と顔を見合わせても浮かんでくるのは不安交じりの愛想笑いであってさっきまでのだんらんムードは打ちひしがれていた。
俺たちの前に所在している教室は分室と呼ばれる先生たちの控室であり労働場所であって生徒会立候補届の提出場所である。
「そういえば千歳先輩もこの前立候補するためにここ通ったのかな?」
沈黙の中を切り裂くような囁き声で俺の耳をなぞる伊良湖の声。その声は沈黙に順応していくように熱が引いていった。今思うとあの千歳先輩からすべてが始まっていたのかもしれない。
俺はその言葉にそっと息を吹き込むと、心の中で温めて話を続ける。
「まぁそうだろうな。流石に1年の廊下を歩く上級生は何かしら理由はあるだろうし」
「確かにね。はぁ。あの千歳先輩綺麗だったな~本当に。なんか私とは遠いって言うかなんというか、物理的には距離は近いはずなのにどこか遠いっていうか……なんて言うのかな?」
「芸能人……みたいな感じかな?」
「確かにたっくーtvが伸び出したら少し寂しいというか、遠くなったな~って感じたけどね」
「芸能人じゃないし!まあ確かに妙に的を射ているから反論できないけど」
「え……違うの……。なら吉田製作所?」
「ガジェオタ!本性出てきてるよ!伊良湖さん。これも的を射ているから反論できないけどね!」
「え……。ん~?」
まだ考察しようとしている伊良湖。ポツリと聞こえてくる声には、ゆゆうただったり、スマイリーだったりスーツだったり遠藤だったり……もうYouTuberで考えるの辞めようか。もう最近YouTuberがテレビ出たり芸能人がYouTuberになったりともうわけわかんない。ちなみに俺の推しはドランクドラゴン鈴木だったりするのは内緒。
久しぶりに逃走中が見たくなったところで、俺は自首をする、否ついにこの扉を開ける決意をする。
ふう。張り詰めた空気は徐々にビーツを刻んでいく。
俺はドアノブに手をやったで比較的最近替えられたばかりの扉だったのでつるつるとした感触で冷ややか。まるでよりひとの様に……。って全く逆だわ燃えてる。炎上商法ミスっちゃったよ!
「ずるずるzzrzrzrzrzrzrz」
俺が脳内お花畑大会を開催している時、伊良湖は思いっきってドアを開けた。
『あれ?』
そこには閑散としたプリント類が散らばっている。そこには俺と伊良湖のきょとんとした声が響いているだけだった。
「あれ」
伊良湖はまた同じく言葉を放つと華奢で細々とした指をピンっと指す。ああ、艶やかな爪がかわいいな~っと思っていた刹那、「そこじゃない」っと頬を朱に染めながら拒否する。
俺は素直に従うことにし、目を落とすとそこには。
『立候補届はここに置いておいてください…………っかぁ』
緊張の紐が切れた音がした。嗚呼、なんで誰もいない空箱で俺らはコントしていたんだ。
『はあ』
疲れがどっと肩にのしかかると、俺はキャロットジュースが飲みたくなるほど喉はカラカラになってしまっていた。
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