佐々木仁は全てを忘れ正直に楽しむ。1
「はぁ」
溜息走る今日は水曜日。生徒会選挙まであと23日。
「はぁ」
それでもって現在は4時限目。グラウンドの片隅、ダサい青ジャージ。
体育の授業はボッチとしては辛いものであってヤリチンが加わってもそれはなおさらである。
基本的に俺はクラスではヤリチンとしか話してないので盲目的になってしまいがちだが、奴は友達という奴らが多いらしく先客が入ってしまったらしい。二人で現在キャッチボールをしている。
っという事で俺ボッチ~。ボッチはこの指集まれ~。何だこの虚しい響きは。
日常を楽しむとは何だったのだろう。
最近ボッチに慣れてきたとはいえど、中学時代は一緒にやる相手がいたので体育は少しもどかしい。まあその時が疲れないといえば嘘ではないのだがな。
「おっ佐々木。………。………。………。」
俺に話しかけてきたのは体育教師の中田修平。アップルウォッチが光る50代。座右の銘は「Apple is beats!」。東京丸の内店開店記念品のノベルティ、リンゴのトートバックをいつも下げているので特徴的だ。
まるで県道で引かれてしまった猫を見るかの如く、俺はその視線を浴びせられていた。……泣きたい。
「やめてください先生!全てを察せられた目で見られるのがボッチとしては一番虚しいです。もっいっそのこと軽蔑の目で見てください。そして感じてください!このボッチをっ」
「じ――――――」
あそこで一人、壁当てを敷いている少女の方向に先生は目をやる。体育は2クラス合同でするので見覚えのない人をよく見かける。まぁ俺に限っては同じクラスだった伊良湖すら、見覚えがなかったから同じクラスってことも十分あり得るが……………うむ、よく分からん。ってか流石に先生。そのまなざしは可愛そうじゃないですか?
「やっぱ俺だけを見てください」
「なんだその意味深な表現は!男同士ではしたないゾ!」
「古いよ!もう語尾にカタカタ付けるのは!うちの父親でも……。あっ何でもないです」
「確かに宮沢賢治も語尾にカタカナ付けていたな~」
「それ雨ニモマケズ!雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌだよ!」
「おっ早口で言ってそう」
「確かにリアル早口だよ!オタクだよ!」
先生は呆れたように見えて俺への軽蔑を辞めた様には見えなかった。………。やっぱ虚しいわ。みんなは暖かい目で見守るだけにしようね!ボッチからのお約束だぞ♪
そんなことはどうでもよく、俺は中田先生に向かって「どうですか」っと誘う動作をする。ここまっでここまで来て一人でうじうじしてるのも仕方ない。あと推薦には内申いるし……。
「おっいいぞ。お前の内申は上げてやろう」
………ん?まぁ最近内心を当てられることも多かったし別に驚くことじゃないよな。内申だけに……ね?
中田先生は雲一つない快晴の中、日差しを反射するアップルウォッチに目をやると腕を下げ、一息置いてから俺に言葉を放った。
「その代わり………。あそこにいる奴とキャッチボールしたらな」
「え?」
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