作戦開始!っと無責任に伊良湖みなみは文芸部を巻き込む。6
足立駅からピアゴ(スーパ)を目印で曲がった道。つまり碧海高校の通学路に当たる道ではあるのだが途中少し入ると分岐することができ、その道は著しく人通りが少ない。なので時折カップルなどがうろつく時以外は深い沈黙で閉ざされていて、たまに適正な時間で登校する俺愛用の通学路である。通称カメラのキタムラルート。
なぜいきなりこんな話をしだしたかは不明だが、俺が言いたいことはただ一つ。……。
———————————今日は適正な時間で登校しているってこと。
………何を言っているんだ俺は。っとお思いがちだろうがいつもの俺を考えてみてほしい。最近は家から飛び出し6時10分出発。そこからコメダっとその日々を繰り返し。
朝先生を労いながら社会の厳しさを痛感し、味噌カツパンをほおばる。そしてそこでも社会のつらさを痛感させられるキャッチコピーを思い出し、食べきれなくて持ち帰りながら社会の厳しさを痛感され、猫に味噌カツパンを盗まれ、学校へ行きまた学生社会の厳しさを痛感させられる……………。俺、社会向いて無くない!wow wow。だからって異世界に飛んで行ったところでどうせ異世界でもその社会の辛さを痛感させられてクソラノベレビューの一環にされそうな生活を送りそうなのでので意味がないのだけどね!嗚呼……生きている限り万物辛辣である。
そんなこんなでこんな生活を送っているため学校へと到着が次第に早くなってしまう。
そんな俺であったが今日、珍しく適切な時間で登校してる。なぜって?
「ほぁ~眠い」
まぁ寝坊したよね。っと軽く寝坊の定理を壊しつつ、俺の寝坊の定理はコメダに行けなかったというものと再確認し、深い沈黙にくるまった一本道を歩む。
あたりは商店街の裏やら住宅街の裏やらっと基本的に何でも裏なので、陰であふれていてワラビやタンポポなどが生い茂っていて秋風の香りと共、こんな住宅街ばかりの田舎でも自然を感じることができる。何処か落ち着く香り。そう、それはまさにバラの芳醇な香りのようで……。
「あら?佐々木君……。はお兄さんもね?確か仁君、でしたよね?」
秋風と共、乗せられてきた香りはワラビでもタンポポでもなく千歳先輩だったよう。
勝手だけど大通りルートで登校していると勝手に推測していたので少し意外だ。なに故、このルートで登校する人にろくなボッチしかいない。俺もその一概である。
「そうです。けどもなんか意外ですね。カメラのキタムラルートを使っているなんて」
「カメラのキタムラルート……。ああ、この道のことね?なんかへんかしらね?」
「いや、全然そんなことないですよ。むしろ似合っています」
「それはどうゆうことかしら……」
「あっ。いやすみません。慣れていないものでして……」
「なんて冗談よ♪」
そんな、少し俺より拳2つ分ぐらい大きい背を少し丸めながらも微笑み、首を傾げる千歳先輩。何処かコメダであった時の雰囲気と似ていて、あの時の千歳先輩は幻影だったのかと見誤ってしまうぐらいであった。
とりあえずほめとけばいいみたいな風潮はこれで消え失せた。これからの会話どうしよう……。
そんな心配は置いておいて、やはり美人ではあるが朗らかな雰囲気が俺どころか空気を支配している。ほらそこの猫。欠伸しながら味噌カツパンほおばってるよ………。ってあいつ!俺の880円返せ!そして社会の厳しさを痛感しろ。俺の代わりにな!
そんな虚しすぎる俺と猫の一人会話をしながらも千歳先輩は前を向き、言挙げする。
「そういえば仁君、生徒会長選挙に立候補するらしいわね」
「まさかそんなことはないですよ。というか自分ではしませんよ。俺はあくまで推薦人ですし……しかも伊良湖に依頼されたものですし」
「そうね、冗談よ。みなみちゃんに依頼されただけか……やっぱり……」
「すみません。なんか……」
「女の子にはとりあえず褒めとく&謝っておく理論は通用しないわよ♪見え見えの、だましだましの方法……そんなところかしら。あくまで私の意見ではあるけどね」
「おっしゃる通りです……」
朗らかな論破とはもしかしたら世界初かもしれない。はぁ肝に銘じておきます。……。っといっても解決案がわからないのでどうしていいかわからないのですがね!誰か……助けて……。
「それで準備はうまくいってるの?」
千歳先輩の助け舟。やはりコミュニケーション能力はこの人の方が何枚も上手のよう。
「まぁ程々にですね。途中コントになってしまうことを除けば大体は計画通りです」
「そう。それはよかったわ楽しそうで。……。。私の方はいろいろと大変で……ね……」
言葉に詰まる千歳先輩。気負っているようで眉間にしわを寄せていた。それほど気負うことはあるだろうか?俺らと違い千歳先輩たちのチームは計画的に物事を進めていっている筈。まぁ千歳先輩だからね!伊良湖さん♪よろしくね。
俺は息を吸うと、女子との会話最終手段、慰めを使用し言葉を発す。
「そんなにまとまりませんか?確かに僕らも手こずってますけど」
「違うわ。そうゆうことじゃなくてね……」
「え、それ以外にあまりなくないですか?」
千歳先輩は俺の持論をすべてへし折ると、カメラのキタムラに差し掛かる。
唯一開けたカメラのキタムラ。そこからは朝日が差し込み空気で拡散する陽光が目に見えた。
照らされた千歳先輩はとてもきれいで、儚かった。それはあの日の印象と準ずるものであって……。
よく考えるとさっきからずっと気負いながら俺と話していた気がする。だから三点ダッシュ(…)が増えていたような………。ってそれ常時だったわ。ただ会話が続かないだけ……。いや~もしかしたら俺の方が儚いのかもな。今でも崩れ落ちちゃいそうだし。
そんな俺を横に、千歳先輩は深刻そうな趣を隠さずに出すと、開けたカメラのキタムラとともに、場面はは収束していった。
「キャラを作ったまま長時間人と接するのが大変なの」
「そんな気負ってそれ言うか⁈………ってすみません」
「いいわよ。突っ込んでくれた方が私の気もだいぶ楽だし。こんな事、真顔で返答されるのも困るしね♪」
初めて会話において正解した気がする。千歳先輩は俺に気遣ってか言葉使いをほんわかとしたものに変えてくれた。
そんな余韻冷めぬうち、千歳先輩は真面目に、顔を近づけ、俺に問おてくる。
「っで、どうすればいいと思う?」
「どうすればって……。確かに初めてコメダでこの一面を見たときは驚きましたが……。なんといいますかね?まぁ一つぐらい人間味があってもいいと思いますけどね。だって完璧なんてきもちわるいですし。っと僕はそう思いますね」
「そう。全く問題の解決になっていない気がするけど。まぁいいわ。ありがとう」
「なんか辛辣⁈社会って厳しいよぉ~」
本当に迷っているのか……。そんな吹っ切れた様子かは否か。千歳先輩はぴっきりっと学校モードにチェンジし、乾性で冷然な風がローズの香りと合わさって吹き荒れていた。
「ふふふ」
千歳先輩が破顔している。……っというのは気のせいだったのだろうか。さっきまで曲がった背を引き延ばし、俺を置いて紅葉萌ゆる正門をくぐっていった。
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