佐々木仁は本当に「全て」を忘れた。7
たなびく地平線は確固たる地位を見せているものの、スカートはゆらりと揺れていて背けたいものから目をそらさせてはくれない。開いた窓は、快晴とは裏腹にものすごい突風が入り込んでいて目を戻されていく。
選挙活動最終日。そう、明日は生徒会長選挙なのだ。
なのにも関わらず、俺は他の面々と一歩分心の中で距離をとって伊良湖と目を合わせれずにいた。
初めのあの頃と違って、くすぐったい思いもなければただ気まずいだけ。頬なんて双方朱に染めていない。
それは皆同じなのか、図書室に戻る同中だというのに会話なんてありゃしない。これも全てリセットされたと言われたら的を射ているのだが、そのころと違い開いてしまった溝だ。
昨日、そして先週末と体調不良で不参加だった俺だが一様選挙活動たるものはしてはいる。
っといっても仮面みたいなもので、本役は伊良湖と羽豆。
確かに両方、顔は整っているし第一印象はいいのだろう。それなら印象付けには効果的だろうし票も集まる。なら俺は何だっていう話ではあるがな。
重い倦怠感は尾を引き、頭痛も後を行った。それでも簡単に立ち退くことのない壁は、黒部ダムの如く放水しては俺を流して寄せ付けない。
何か変えないといけないなんてわかっている。そんなことは痛い位知ってる。でも、生徒会長選挙が明日というのに行動なんて何のその、まず考えすら浮かばない。壁の前では何も変わらない。状況は変っちゃくれない。そう、ぐるぐると渦巻いていく。
願えば願うほど消えていく。目を瞑っても世界は変りっこない。
『はぁ』
溜息は不協和音を奏でていて全員が俯く。こんなところ居心地が悪いだけでもう、俺には意味がない。
「仁!」
振り切って距離をとって、目視できなくなって、足が動かなくなって。それでも鼓膜の内側では伊良湖の一言が反響する。そして離れていかない………。
「そうすればいいんだよ………」
今日もこの場所がどうにかなればいいと思っていた。でもそんなもの幻影で結果逃げておしまい。
今日も結果時間は進むだけで、何も変わることなく、始まりを迎えていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます