日常はおはようの一言で始まる。2

「はーい。生徒会のやつね~多分出ないと思うけど上からの指令だから一様配っとくね~」


 いつもこのクラスの担任はこんな調子だ。俺は今年に入って何度目かも分からなくなってきた小さな溜息をつく。

 俺が所属しているクラス、1年A組の担任である佐久鈴先生は研磨する前のダイアモンドみたいなひんやりと、濁ったダークブラウンの瞳でこちらの様子をうかがう。

 しかもその瞳は生徒たちが移っているとは到底思えず、底なし沼のように光を反射させていないない。沼!沼ぁ~!

 しかもこの発言は……さすがに今日秋も萌ゆり始めたこの現在春から4か月程度の付き合いであるA組内もさすがの苦笑喝采で朝のホームルーム中とは思えない、身の毛もよらない寒気に包まれていた。確かに一年生から生徒会をやる人もいなければやりたくないので気持ちはわかるけど。

 いつもは「先生はね~まだ新卒から一回も定時で帰ったことないんよ~」とか「なんでPTAのやつらって権力もないくせにあんなに舐め腐った発言できるの?」とか……ってこれも身の毛がよらないじゃないかよ!いいのこんな先生雇ってて愛知県?ほんとこの先生は「いつも」という単語が「いつもの様にやっていいんだよ」っと落ちた第一志望の面接官に慰められた誰かさんと同じぐらい似合わないよ……はあ、ほんと実話って怖いね?

 先生はこの空気なんてなんのそのっと、少しクチャッとなりかけた生徒会立候補届の用紙を配り始める。

 ざわつきは終息へと向かい、紙々が擦れる音だけが空気を伝っていく。

 普段、こんな沈黙は授業中でも、先生がまずいことを放った後でもどうとは思ったことないこの空間だというのに、なぜか今日という日だけはふわりと高揚感が湧いてくる。まるでメダルゲームに行く時みたいに……ってこれ俺だけなの?

こんな感覚は初めてで心臓に悪い……。でもどこか温かみを帯びていて確かに胸の奥で打っている音が響き渡ってくる。

 心が俺を追い越す……そんな直前、俺の席から前、少し椅子を引き俺の方へ色黒、黒髪のすぐに人の投稿に「イイネ!」していそうな男がプリント片手に振り向いてきた。

 振り向き先、その色黒男の無邪気な黒目に「⁈」っとしてしまうも体制を立て直しプリントを受け取ろうとしていたその時だった。

 色黒男は俺と少し感覚を近づけ、耳元で一言。


 「やべーよな、先生。何も言わなかったらマジかわいいのに」


こんな男でも意外に空気は読めるらしい。マジ意外だわー。


 「ほんとだよな特に目とか」


 無関心を装いながらも一様、答えておく。ここで変に無視してクラスの晒しもの確定!とかだと嫌だし。ただこんな状況でも一様俺と色黒の意見は同じであって……っと少し安心している俺氏であった。多分こいつならわかるであろう。あのメダルゲームの高揚感!

 ここで話は終了らしい。色黒は正しいきちっとした姿勢に戻っていた。ほんと人は見かけによらないな。

 プリントが田舎の公立高校には珍しい茶がかった蜜柑色の髪をしたボブの女の子にいきわたったところで気を取り直して……。俺は色黒頭部のから視線を逸らし佐久先生の方向を向く。  

 その容姿はユルふわにクルンとかかったダークブラウンに染まったショートカット。それにあの日の付け所のない天使フェイスでかの私服がものすごくダサいと有名なあの声優さんみたい。すんごいそっくり。

 そう以下の事柄からうちの鈴は可愛い……っと彼氏ずらしてみるのは小野さんに失礼に値する行為だと思うので自粛しておくが本当に可愛いのである。………目を除いては………。

 冷ややかな研磨されていないダイアモンドみたいな瞳、決して目が合わないという点においては一種の恐怖すら感じる。

 人はバランスなんだっと気づかされる。


 「ん~っとですね今日は~」


先生の声色はほんわかと暖かくさっきまで見ていたもののギャップに少し寒気を覚える。これが声優向きな感じなのかな?顔と声だけはいいんだよな~。

 こっちに限っては私服がダサい声優さんのほうが優れているというかなんというか……とにかく声優の方は可愛いんだよ!まあ先生も客観的に見たら可愛いのだろうけど。

 まあつまり言いたいことはというと何かの暁にはぜひとも声を入れてもらいたいという事。


      ×      ×      ×


 朝のホームルームが終わり、現在は一時間目の授業の間の放課。一様説明をしておくが愛知県において放課とは授業後である放課後ではなく授業と授業の合間などのことを指している。

 俺は今から始まる国語の授業に向け、教科書、ワーク、ノートを置き勉しておいたまんまに机の上に出す。

 そして俺は基本的には教室では孤独の孤高な存在……まあ簡単に言えばボッチなのだが、そんなところなので緑が目印のライトノベルを手に取る。

 っとその刹那だった。目の前の席の色黒男がまたまた俺の席の方向へと体を向かせ、先ほどの続きを問おてきた。


 「そうかな?先生は可愛いと思うけどな~」


何処から話が続いてきたかは分からないがさすが、様々な人が集まる偏差値50付近の学校と行ったところだろうか?

 色黒は上書きするように一言放ってきた。


 「目もね?」

 「え?」

 「え」


行きどころがない違和感。ん?何かがおかしい。何かは分かってるのだけど……そうだよあれ……あっヤリチンだから仕方ないことなのか。確かにヤリチンなら人を選ばずに行ってそうだし。我?やっぱそうなのか?ほんとあの目がいいとか正気じゃないよ。やっぱヤリチンは人を選ばないよな。俺が童貞なのは……はっ

 虚しいとはこのことを指すのだろう。まさか悟りを開いた瞬間魔法使いになれるとはおもっていなかったよ~………………………………………………。………。………。………。

 まあ俺のことは気にしてもどうにもならない。まあ気にする人は俺しかいなけどな。

 日は差し込まないものの窓の向こうを見渡せは青一辺倒で深みはない。でもそんな青に俺達人間は思いを乗せ希望を目指す。

――――――――希望か……。

 俺の吐いた生暖かい溜息と共、俺は空には羊が紛れていたことを知った。

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