佐々木仁は足元を見なければ灯台元暮らしだと知った。3

「そんな碧海高校にしたいと思っています。皆様、チャンネルのご登録よろしくお願いします」

 『最後ので台無しだよ!確かに売名には十分すぎるの舞台だけどさっ』 


伊良湖の以外に真面目な選挙公約……。だと思っていたのだが最後の落ちが沼すぎた。

 確かに漫才やラノベ、何ならYouTubeの落ちなら最高なのだが「違う違うそうじゃない」。

 それは叫んだ通り、羽豆も思ったらしくジェスチャーも込めて言葉を紡いだ。


 「違う違うそうじゃない!」

 「なんかそれってDaisukeみたいだよね~」

 「お前は黙っとれ。なぜここに存在しているかわからんが」

 「Daisuke☆彡」

 『黙っとれ!』

 「ピエン」


親子感のある眼鏡とヤリチン。ピエンとか死言じゃないのか?いつのだよ!今のだったわ。なんか母も使ってたし。てかこのネタ、審査員さんにはわかるのか?まぁ気にしないでおこう。

 ひなあられ香る今日は月曜日。あと生徒会選挙まで12日。

 昨日一日かけて案を出したおかげでやっと案がまとまったので現在はあと消化だけ。

 それもこれも生徒会(候補)でいる時間はあと2週間。若干のテンポアップが必要だけれどもこの会話を聞いていたら心配が吹っ飛んだ………。勿論良い意味ではないのは皆察しだが。

 俺は皆察しの中、切り込み隊長の如く張り巡らされた空気を張りさく。


 「まぁ本文はよかったよ。ただな、なんかインパクトがいまいちないような……」

 「インパクトって例えば?」

 「シングフェイス」

 『それははやってない』

 「ぴえん」


何このツイッター無駄にむかつく顔文字集は。どっちも画面殴りたくなるのでやめてくれませんか?しばくぞゴルァ。ドンッ。

 液晶が可憐にコンボが決まったところで話の行き先をなくしてしまった。

 っと俺が脳内で困惑していた時、伊良湖は少し気まずそうになぜかレギュラーメンバー入りしてしまった二人に視線を向ける。


 「あの~ですね?大変ありがたことなですがふたりとも暇か?」

 「敬語&ため語~最近仁よく使ってる~」

 「しょうがない。これも校長に勝つためだ」


ヤリチンがアシストして俺がゴールを決める。最高の勝利方法。ってかなんでこいつら毎回のようにいるんだ?


 「だから話そらさないで!暇なの?サッカー部って暇なの?ねぇ」


っと伊良湖が普段に出さない、無駄に張った声を高々に放出させていった。

 っといのりは話出しかけたヤリチンの口を噤み、伊良湖に向け返答していった。


 「私たちサッカー部も部活やる気満々なんですけどねぇ……。上のほうが忙しいらしくなんか部活ができないみたいなんですよぉ………」

 「そゆこと!」

 「へぇーそんなにサッカー部忙しいんだ~。確かに文化祭も生徒会選挙終わったらすぐだしねっ。三年生は思い出作りのためにいそがしいのか……」

 「まぁ俺達にはまだ遠い先の事なんだがな」


俺は明後日の方向を向いた羽豆だったのだが窓越しに伊良湖と目があってしまう。明後日とは近かっただろうか?俺は未来を見た筈だったのに何か違う気がした。ただ、俺が見ていたのが明日なのか、明後日なのか、生徒会選挙が終わった後なのか、それとも卒業なのか、それはいまいちわからなかった。ただ、目先の寂しさという点に捕らえられてしまったという点では、伊良湖の茶がった蜜柑色の瞳と変わらなくて……。もうわっけわからん。

 俺はどこかにその感情を拭うように、忘れるように伊良湖に向かって言葉を伝える。


 「コントやってないでさ、早く練習しよ!」

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