碧海高校、生徒会(候補)記録簿1
時間と自分の思ったよりも早く進んでいるものだと俺は思う。
前回からちょうど1日たった水曜日の現在は部活動中。
あの日は改めて確認し、少しビジョンを共有しあっておしまいだった。それもその筈、本番の生徒会長選挙戦は今からちょうど30日後、つまり1カ月後だ。しかも本格的な活動が解禁するのは徒会長選1週間前の公示からでそこまであまり出番はない。つまりまだ焦る必要もなくひーまなのだ。
と言ってもこの時間は妥当と言ったら妥当だろう。
一年生が生徒会長に就任したことはこの碧海高校では前例がなく、困難を極める。だからこそ前々から丁寧に作戦を練って早め早めと行動しなければならない。なので………という事で………………まあ頑張りますか。
× × ×
「それじゃぁみんなから公約を集めていきます~」
響き渡ったのは勿論伊良湖の声。空気を振動させていく伊良湖の声は「こだま」どころか「ひかり」を超え「のぞみ」になっていた。ちなみに愛知県には新幹線が停車する駅が3つあり、三河安城は「こだま」。豊橋はそれに「ひかり」が追加され、名古屋は「のぞみ」が追加される。
そのうち三河安城は「夢の超特急は止まるが快速は止まらない駅」と地元民からは皮肉の的となっており毎回ネタにされている。これが悲しい三河の周知の事実なのだ。
話は少し変わるがヤリチンの居住地が三河安城駅周辺らしくたまに自慢してきてムカついたので「普通しか止まらないじゃん」っと突っ込んだら真顔で「緑が丘は新幹線どころかJRもともらないけどね」っと返されてきた。確かに。論破されちまったよ。
何故ここでヤリチンが出てきたかというと何故か今日もいる。サッカー部って文化部よりも部活動少ないのかな?まあ人員が多いに越したことはないだろうから見逃しておこう。
ここで出番かと思ったのかヤリチン。手を上げる変わりなのか何なのか、よくわからないが立ち上がって周りを小動物の如くチロチロ見渡すと、幼げな声で意外な言葉を放っていった。
「俺は目安箱とかで回りの意見を取り入れるとかいいと思うよ」
『ああ……』
一同、あまりにも常識的なヤリチンの回答に困惑していた。だってヤリチンだよ!三河安城住まいを自慢するヤリチンだよ!なぜか自慢げに星乃コーヒーがあることを主張するヤリチンだよ!確かに緑が丘にはコメダしかないから反論できないけどね!
真面目に行こう。ただ目安箱には1つの欠点がある。それはと言いますけどね……。
「まぁ私は賛成だけど中学時代あまり「目安箱」の効果に実感したことはないんだよね?君」
「確かに、正直でっち上げの形だけの目安箱で票数集めなんてバレバレだろうな。爪が甘い。だから………」
ミスタッチで「妻が甘い」っと出てしまったが俺は結婚していない、無職童貞である。
そんなことはどうでもよく、確かに目安箱の効果を実感したことはない。あったのは四隅が微妙に捲れた白い箱だけ。感じたのはあの哀愁だけ。
こんな一般的な公約、どの中学校でもあると思うので聞いている生徒も飽き飽きだと思う。なので票数稼ぎには使えない。だからな………。
「だから俺は公約としてエクストリーム目安箱がいいんじゃないかと思う」
「ん?」
「は?」
「はッ」
「はて?」
全員から痛まれない視線が降り注がれてしまうがまあ気にしないでおこう。いつものことだしね!
ってかこんなに人、個人によって反意の示し方がこうも変わることなのかね?眼鏡なんてもう嘲笑しちゃってるし。
まあそんなことはどうでもよい。俺は引き続き説明をするとしよう。
「まぁ横文字を使ったのは高校生が好きそうだったかだ。気にしないでくれ。って本質である内容であるがこれは「エクストリーム」っと言う物もあり、速さをしめすという事だ」
「お前、説明って知ってるか?辞書引けって俺は言ったわけではないんだぞ」
眼鏡から軽率な軽蔑をされたがそんなのはもう慣れっこ。
「だからつまり俺が言いたいのは、目安箱で送られてきた要望に1週間以内にお返事を書いて返すっという事だ。俺的にはいいと思うんだけど……」
「確かに!それだったらなんか生徒会に参加してる感出てていいよね!」
「でしょ。」
ふふん。ふふん。ふふん。ふふん。ふふん。ふふん。ほーめらーれたぁー。
急に賛同を得てから気分が良くなって希望が持てた無職童貞なので気にせず言挙げする。
我ながらいい公約だと思う。小学生時代からネタを温め続けたかいがあったな。
伊良湖はこの勢いに乗っておお清らかに言葉を走った。
「仁の意見に賛成の人!」
満場一致。あの悔しそうに前髪をいじる眼鏡は本当に滑稽なものだ。もっと見せてよその顔。もーともっともとたけもっと。
まあいびるのはこのへんにしておこう。
秋かおる図書室の中一つ目の公約が決まった。
1 エクストリーム目安箱の設置、運営。
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