佐々木仁は足元を見なければ灯台元暮らしだと知った。2
「おはよ」
「おはようございます。現在、台風が太平洋沖で発生いたましたので進路次第では今後日本列島への影響も懸念されるおそれがあります。進路には十分にご注意してください」
「最近のテレビは随分と高性能ですね!」
「うふふ、まぁ録画なんだけどね」
朗らかなその口調……母か。っていたずらが酷じゃないですか?これが社会の時事問題対策のためにやってるならもう母親として策士すぎるけどさっ!
母は俺にドッキリ(擬き)を仕掛けてご満月なのかテレビ画面をZIPでポンに戻して紅茶を啜っていた。
「はい、いつもの」
砂糖一杯分がティースプーンに乗った物と同時、紅茶が差し出られる。いつも乗ってあれじゃないの?
「え……。いつも乗って味噌カツパンじゃないの?」
「若いね~。太っちゃうぞ♪」
「うっさいわい」
「あら、藍(妹)と同じ反応。やっぱ強大な力で結ばれてるのね」
兄弟だけにね?っと言いたかったっと思ったのだが本人は気づく素振りを見せない。天然なの?養殖なの?
まぁ人間なんて養殖だろう。囲いの中で育って出荷されるかの如く社会へ出ていく。しかも子供に金をかければかける程、美味しく、良い所へと出荷されていく。………。
とても良い持論だと思ったのだが一つ欠点。金持ちは養殖なんて食わねぇ……。
Q.E.D. 証明不完了。以外に照明って簡単なようで難しいよな。数学でも……。人生でも……。
ここまで自分で語っといてなんだがその通りだと思う。自分という存在を証明するために何かをするのか?それは至って簡単に見えて本当は人生の中で一番難しいのではないのか?なにここの名言風のエンドレス。エンドレスエイトよりたちが悪いよ……。
名言風おしまい。でも実際そうじゃないかなっと俺はつくづく思っている。
っと俺が悦に浸っていたとっさ、母ははっと顔を上げるとどや顔で言葉を発してきた。
「兄弟だけにね」
「しっとるわ!」
「ピエン」
「何それはやってるの⁈」
母はうーっと考えると朗らかな声音でいつも通り呟いてきた。
「なんだろうね?この偏差値の低い会話」
「それあなたが行っちゃいます?序盤、中盤、終盤、隙がなく偏差値が低いのですが」
「羽生はふすぁんつよいよね」
「今季どこかで誰かがこのようなインタビューで受け答えしてたのは私もしってるのですけどね!」
「お—————(ぱちぱちぱち)」
フォーメーション橋本、完成!
多分集中してみてないよわからないような受けごたえに母は無邪気に拍手を送る。ってここまで知ってる人いるのかな?俺もさっきYouTubeに張り付きながら書いたからわっかんなーい。
そんあ馬鹿らしい会話も親子ながら楽しかった。
紅茶の茶葉は勢いよく舞い上がり、そして沈んでいく。
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