佐々木仁の勝負はもう産前で全て決まっていた。4
「ピピピピッピピピピッ」
あ~眠い。眠い眠い眠い。もう学校休もっかな~
一年中出ている毛布は恋しく、いとおしく離れがたい。でも、現実そうともいかないのが現実だ。
カーテン越しから漏れる木漏れ日は、朝がいつも通りやってきたことを伝えこんな調子でニートになったらどんな迫害が待っていることやら……と、なぜか朝早くから考えさそうとしてくる。ん~怖い。日を浴びると脳が活発化するとかなんとか言うけどふざけんな!朝から鬱にさせてどうするんだよ……てかまだ浴びてすらいないし。とはいえ、一回は改妹罵りを見てみたい自分がいる。
父上様、今こそ出番です!そんな他力本願で親鸞の弟子時代だった俺が出てきたと思ったがそれは少し前の話。決して中2の時ではない中一だ。ここ大事だからね!
一部実話交じりではあったが妄言だと気づき腰をのばす。ううううう――――――。起きるかぁ~。
× × ×
「おはよ」
「………」
このデジャブ感。いつまで続くの?今日も今日もで卵焼き作っているし………これは………まさか思春期特有のアレですか?思春期症候群?ラプラスの悪魔?
な訳なく日付は6月27日……じゃないです9月です!
ほんと現実は残酷。もうちょっと浸らせて。せめて妹には猫のパジャマでも着てほしいところ。
まあそんなことは叶わずAM6時半現在ジャージ姿。朝練でもあるのであろうか?一部のフェチ共はブヒブヒいうのだろうが俺にそんな性癖なんてないので手札はトラッシュへ。いや妹なのでロストゾーンへ………。最近ロストゾーンがまた新パックで再装されたらしい。ぜひまたやりたいところだ。
そんなことを思ている間でもまた今日も凝視してしまった。という事はあれですね?
あの言葉を覚悟する。来るんだよなあれ。
「………」
よかったーと言葉では無かもしれないけどでも目は狂。なまはげでも般若でも天狗の面でもなく、あくまで妹オリジナル。サガミ………いやなんでもない。というか妹さんもう獲物に食らいつこうとする目だよアレ。マジ野生。ほんとネコ科。怖いよぉ~。
それでも瞳は漆黒というわけではなく、澄んだ紺鼠。その瞳は妹の純粋さを教えてくれ、中学生っぽさが少しにじみ出てきた。どこかの先生とは違って。
少しは可愛げあるんだな……と思ってた。恐れてた♪あれ?少しちょっと視線おかしくない?
その純粋な目は俺には向いていななかったことを報告しよう。知ってたとか言う赤文字は不要。後ろからはやっぱり爽やかな石鹸の香り。振り向いたらそこには冷蔵庫に向かうモコモコのパジャマ姿の兄。お前が着てどうするよ……。あと…………とりあえず赤コメで埋めようとしないで悲しいから。
目について知ってたか否かというと完全に知っていた。今日も期待していたのだがやっぱり駄目だった。
ここでも兄には勝てない。セオリー通りならこうゆう時こそ俺に妹がなつくとかそんなところなのに。こんな俺、庇護欲湧かない?
セオリーなんてノンフィクションでは通用しない。これも平常どうり、日常どうりはあ。
腹なんて空かない。でも卵焼きは食べたい。
そんな矛盾を抱えながらも俺にもうこの場所に居場所はない。なので髭をそり女子高生を………拾いはせず、鞄を持ち颯爽と家から駆け抜けだした。周り全員の目は点。それは仕方ない、こんな時間に出ていけば。
メタリックに光を反射する紺のチプカシが示す時間はAM6時10分。
早すぎるが後戻りできないので足を動き出す。
人間後戻りができたらどれほどいいだろうかと思うときは誰でもあるだろうがもう結論に至っている者はどこにも戻りはしないだろう。タイムマシーンなんていらない。だって現状16年間ぐらい同じような感じだし戻ったって変わらない……戻ってもただ一人、背中があるだけだ。時間なんて嘘だ。
そう、時間なんて嘘でしかない。~最後の文化祭、とかそんなの欺瞞でしかない。兄がいるからな。
「てか兄、お前なんて兄じゃね!」
現実に起こるならそれぐらいがいい。独裁スイッチで一人消すぐらいでちょうどいい。なので俺は涙をぬぐいながら誰も聞こえない屍のような声で叫ぶ。軟弱な声は何処にも漏れず、脳内を跳ね返り続ける。そんな中俺の気持ちは変わらず、どこへ向かうか分からないまま一づつ足を出していった。
きっとこのまま日常は変わらない、そう思って。
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