佐々木仁は本当に「全て」を忘れた。1


 「わーんお兄ちゃん強いよぉ~」 


 「今度はこっちだよ!お兄ちゃん」


 「また負けた……。もう一回!」


 「僕、将来お兄ちゃんみたいな人になれるように頑張る!そして超えるね♪」


 「勝つまで辞めないもん」


 「さっすが僕のお兄ちゃんだね!」


 「僕のお兄ちゃん京都に遠征に行くんだって!すごいでしょ」


 「近づけるように毎日の積み重ね……」


 「お兄ちゃんって実行委員やってたんだね。それならもちろん僕もやるよ!」


 「卒業文集……将来の「夢」がセオリ―通りだよな……。やはりあれだな」


 「いや辛辣!どんだけ俊君は勉強してるんだよ……」


 「え、俊くん碧海高校へ行くの?なんであんなに頭のいい俊君が……部活やりたいんだ……わかった」


 「塾の体験、マジで緊張する。てか声デケェ」


 「なんだよこの課題……。ミルフィーユより重いよ……」


 「いや死ぬ!単純に死ぬ!」


 「はぁ。また模試Ⅾ判定……」


 「無理なんて先生が決めることじゃないです!俺はに受かって見せます!きっと……いや絶対!」


 「はぁ?愛知県の受験問題終わってるでしょ!」


 「社会って楽しいんだな……。面白いかもしれない。この塾講師の人」


 「今度こそ。勝つんだ!」


 「努力は報われる。絶対………そうだよな。わかったよ!」


 「やっとB判定か。やった!」


 「不整脈……。せめて受験後にしてくれよ。」


 「今日、何もかもを犠牲にし、そして………挑む!」


 「あと合格発表まで4日か………あー落ち着かない!寝れない!」


 「へープログラミングって結構気晴らしになるんだな。お金なんて待ったく使ってなかったしいいパソコン買お」


 「いや明日かよ……」


 「103だよな。よしっ覚えた!」


 「緊張するしコメダでモーニング食べてから行くよ!だから………母さん、行ってくるね!」


 「ふう、ふう、ふう」


 「なんだ結局早めに来てしまった……って一時間早い⁈」


 「……………101………………102………………………。……………。…………。なんで………」


 「なんで……なんで番号がない………なんで……なんで!」


 「……………………………………」


 「……………………………………」


 「俺は何のために………」



 「はぁ。もういいや。諦めたの方が人生楽。誰も、いや俺は傷つかない……。結局努力なんてその物事自体を神格化し、崇めているだけの偶像崇拝より馬鹿馬鹿しい。そうだ!そうなんだよな………」

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