佐々木仁の勝負はもう産前で全て決まっていた。2
日付はあれから変わらず9月12日木曜日。さっき助けてもらったお礼を羽豆にしたかったのだが、今日は部活がないのでそうはいかない。仕方なく帰路に着くとしようじゃないか。
にしても文化部の部活は緩い。これほんとに推薦取れるの?
数時間前まで教室内を陽だまりで囲っていた太陽は、まださんさんと照っていて少し汗ばむぐらい。朝までの肌寒さは身を隠し、まだ夏であったことを悟った……そんな今日この頃でございます。
まあ、あの身の毛のよらない寒気を溶かすには丁度いいかもだけどさ。
かっかっと乾いた歩行音が単調に響いている。そんな日常はイケメンが歩いてたら絵になるんだけどな~と思っていたり、思っていなかったり。イケメンは日常を絵にする力を持っている。生まれる家間違えたかも。いや違うな。「生まれてくる家まちがえた~」
完熟張りに俺は脳内で叫んだわけだが本当にあの子には頑張ってほしい。一緒にエンジョイしようよ!高校生活。俺の分も!よろしく!
ああ……高校生活は何一つない単調。これがボッチ系高校生というのか?最近はボッチ系大学生というのがYouTube上でトレンドとなっているのだがもしかしたら俺も人並み当てれるかもしれない……やっぱ無理だわ。
結局諦めれば人生安泰なんだよ。誰とも比べなかったら劣等感を感じることもないしな。
気づけば俺の足取りは重くなっている。
こんなんじゃだめだ、っと俺は軽く頭を振り再び歩数を数え始めた。
その刹那、後ろからの気配。軽快な足音。爽やかな石鹸の香り。俺は大体この人物が誰かわかっている。
大体絵になるんだろうな~。
どうせサッカー部キャプテン容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能、おまけに周りからの信頼の高い天才、なぜか碧海高校のくせに偏差値70近くある佐々木君であろう。誰?俺!……。……。じゃないよな……。
それじゃあ答え合わせと行こうじゃないか。
俺はハーフ&ハーフぐらい……。つまり四分の一ぐらい首を曲げると……。
そう振り向くとそこには他確かな存在。佐々木俊哉がいた。……やっぱりか。心の隅でほかのだれかなのではないかと期待していた俺がもう痛まれなくなる。
はあ。どうせサッカー部なことだし黒塗りの高級車にぶつかっとけよ。
「やあやあ仁君や、弟よ。元気してるかい?」
「ああそうですねお兄様。元気元気~」
「ああ大きいお友達はローテンションだな~うーたんのほうがかわいいだろ……」
ほんとこいつのせいで黒塗りの高級車を手配したくなる。貴様のせいですこぶる調子が悪いんだよ!しかも俺はコッシー派だ!覚えとけ!ほんと不愉快きまわりない。
「よんだ?」
「よんでないよ」
背番号21が本人ではなく俺にのしかかる。ほんとにイケメンだよな……
黒髪を右流しに軽くワックスで整えた清潔感の漂う兄及びイケメンが颯爽と歩数を合わせてくる。いやーイケメン。勝てねえっすわ。
ほんとに兄弟である俺からも息が漏れてしまう程程の用紙、正確、純白さ。ほんとに紙になってしまえよ……。そして舞え!
はあ。ってかこいつさぼりなの部活?運動部は毎日有る筈だけど……。
多分俺だけが感じているであろう空気を変えるべく、なるべく俺には関係しないと事に話を変える。
「あれ~?今日部活じゃないの?優等生の地元国立志望お兄様がさぼりですか?」
情報量の多い煽りになってしまったが少し気持ちがよい。というかもっとしたい。
そんなひねくれまくって金属の加工硬化の如くもうカチコチな俺はな~にも気にしず兄は爽やかにはにかみイケメンにこう返す。
「ちょっとなーー学校関係でやる事が合って。勿論、顧問の先生に言ってはいるから公式だよ」
イケメンだ~。てかこいつが公式とか使うとどこぞの桃太郎傾斜船みたいな歌い手っぽくなってしまうからやめろ!自分で言うのもなんだが結構うまく伏字にできた気がする。
てかほんとに俺ら兄弟かよ。俺と兄の共通点は黒髪と佐々木という苗字だけ。ほんと疑いたくなってしまう。俺の気持ちわかるだろ……
俺らは佐々木という苗字でしかつながっていない。血すら繋がっているかも定かではない。まあ兄は何も感じていないようだがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます