作戦開始!っと無責任に伊良湖みなみは文芸部を巻き込む。1
勿論あれから進んでいない。残念。もう少しのご辛抱を………。
俺はあのあと開けたキャロットジュースを啜ると、体温を調節し、伊良湖が前面にある黒板で何かをやってるところを眺める。
それにしても本当に眠い。
暑さこそ薄れてきているが現在は9月の中頃。ほどほどの暖かさでお昼寝のピークのシーズンで花粉もピーク。ほんと目と鼻だけはやめてほしい。
だが今はその心配もなく安心して眠ることができる。ね
俺はなくなりかけてきた缶の中身を覗きながら大きな欠伸をする。
「おい、仁⁈なにあくびしてるんだよ!」
っと伊良湖の声。文面上では攻撃されているように見えなくはないが、実際はめちゃくちゃ機嫌がよくノリノリ。なんなら語尾に♪がついていてもいいぐらい。
伊良湖から少し目線を放し後ろの黒板を見る。そこには伊良湖の綺麗でかわいい字が書かれていて……。
「役割分担ね……」
俺はポツリと誰にも聞こえないよう、演出上つぶやく。
役割分担では少々昔苦い思い出があってですね。
という事で少々俺の回想へ移行。小学校時代、学級委員を決めていた時。嫌がらせで俺に推薦の嵐が来て少し頭にきたから「推薦しんで」っと少し大き目な声で呟いたわけだったのですが、大勢の生徒、に嫌がらせで俺に推薦が多数来たんだけどそこで俺が発した言葉、「推薦しんで」を「先生死んで」に先生には「先生死んで」っと聞こえてしまったらしくその後は修羅場だった。ちなみにどのぐらいかというと修羅の国と呼ばれる福岡県位。(ちな実話)
そこからあまりいい思い出がない集団での役割分担であったが今回はどうだろうか?まあ大体嫌な予感はついてるのだけどね!
てか話は変わるが俺はいいとしても文芸部は強制参加らしい。まぁ伊良湖もなんか友達っぽかったしわからなくはな。ただおめぇはだめだ眼鏡。
多分眼鏡が拒否しない理由は俺らもそうなのだが推薦が大きく影響してくるからだろう。大学は極力一般で行きたくない。勉強してくないぉ~。っと個人的推測しておく。
という事で結論、勉強したくないっとこちら側では決まったのだがまだ黒板は白紙模様。
伊良湖は考えるように一瞬顎に手をやると、はっとしたようにこちらを振り向き、元気な、オレンジ色の音を響き渡らせる。
「咲は一緒に学校中を回るのでいい?」
「まぁいいよ。全校の前で出るのでなければ」
「それはいいよ!もう決めてあるから!」
ん?誰だ?てっきり俺は伊良湖だと思ってたからなぁ~。まさか……ね?
「勿論、仁だよ」
『はあ?』
俺、羽豆、眼鏡。この三人の意見がそろう時なんてそうそう稀であろう。
当事者である俺は軽く心がえぐられたのだがそんなことよりも「俺が」「全校」の「前」に出るという事のほうが問題だろう。
碧海高校の生徒会長選挙本番は推薦人、立候補者交互で構成される。
という事は俺は伊良湖から推薦人として指名されたことになる。
そのことにとっくに気づいていた羽豆は「いやいや」と前置くと俺の方を向き嘲笑するよう言葉をぶつけてきた。
「まさかみなみは正気だったんだ……まさか本当にするとは、君を」
「なんで倒置法で俺を強調するかな?」
「あれ?自覚かったのですか。まあ仕方ありませんよね?私だって君が入学当初、かの有名ラブコメの主人公の………」
「やめろ!あれはインスパイアというんだ!決してそんな事実はない!」
「そうですか………そういう意味でしたか……」
「なんか誤解してません羽豆さん?てかサラッと誘導尋問するなよ……」
「サラッとではなく私はぬるっとやりました」
「ヌルッ⁈」
「ヌルッ!」
なんかよくわからないが双方バグってしまったようだ。ヌルッってなんだよそれ。
なぜかヌルッの一言で絞められたこの空間の後味は悪く沈黙が、あれから10秒続けようとしていた。
誰か泣かせてください、てか誰か助けてよ!俺がこう沈黙の時間を過ごしている間でもヌルっとヤリチンみたいに空気を読まないやつがいれば……ってバカ俺。なんで頼ってるんだ。俺はボッチ。孤高な存在なだ!
……いや、まだ患ってたよこのラブコメ症。ラブコメなんて現実ではありえない!って言ってるやつも大体ラノベ主人公だよな!という事は俺も……いや現実でこれを考えている奴はもう頭がおかしい。
絶対俺成人したら顔真っ赤にすることもなく成人式を家で過ごしそう。
まあこの考えに至るのも俺が最近ヤリチン以外の男と話していない証拠で有ろう。しかもヤリチンとは俺が完全受け身のサンドバック。完全受け身形態というなのEDがいくらあっても足りなさそうな状況。
傾き始めた陽が文芸部部室及び図書室を照らす。窓から差し込む光はスポットライト同様、伊良湖を照らしていてどこか既視感でいっぱいであった。
照らされ、光り輝く笑顔が180度ターンしこちらを向く。柑橘系の香りが漂ってそうに見える。
――――――付き合って欲しいの。
俺はこの言葉が抜けずにいた。あの何処までもない無防備な姿。まるでひとりいじめしているみたいで彼女の発した言葉は何処にも不信感なんて思い浮かばなかった。だから俺はここにいるのであろう。
まあ今になってはただの自意識過剰なだけなんだが。
光の道筋をたどっていくと外は陽に満ちていた。
大体17時に差し掛かった時、伊良湖は口を開いた。
「ダイジョウブ!私には博士がついているから!」
「パワプロかよ……」
腰がボキボキと悲鳴を上げた。これと共、飛ばしすぎたツッコミ疲れがのしかかる。
少し雰囲気がよくなったのでまあいい機会。俺は体重を改めてパイプ椅子に乗せ、二人の話でもヌルっと聞くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます