7月18日(火)

 タイトル:私は涼森れいなの娘です


 私は女優である涼森れいなの娘です。

 昨年末に他界しました。死因は末期の乳がんでした。

 

 芸能界という世界では大きな変化だったかもしれませんが、しかし、だからといって私の生活は変わりませんでした。

 テレビや新聞、雑誌などのマスメディアは、母の死を悼み、特番なども組んだりして、彼女をお大袈裟に讃えています。


 私は、それが嫌で嫌でたまりません。


 もし、私の母が涼森れいなでなければ、私も「素敵な女優さんがいなくなってしまって寂しい」という気持ちになったのかもしれません。

 しかし、母はそんな皆様に賛辞を贈られるような人じゃありません。


 母は、まだ幼い私を捨てました。

 涼森れいなという女優の顔は知っていても、母の顔は全く知りません。育児を妹である叔母に託し、私は叔母に今まで育ててもらいました。

 父親もいません。親は叔母のひとりだけ。そんな身勝手な母が、どうして美化されるのか――


 私は母の本が書きたいんです。

 ですが、さっきも言った通り、私は母のことを何も知りません。概要のところで、大袈裟に「みんなの知らない」と謳いながら、自分だって何も知りません。

 だから教えてください。女優の涼森れいなではなく、母である彼女のことを。




(「第二章」へつつぐ――)

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