六番目の小夜子

 今回紹介するのは、『六番目の小夜子』。直木賞や本屋大賞受賞作家である恩田陸さんの初作品であり、ミステリー要素やファンタジー要素が盛り込まれた、学園ものの小説です。


 舞台は、とある進学校。この学校には、通称『サヨコ』と呼ばれる、奇妙な行事が存在していました。

 行事と言っても、学校側が仕切っている公式の行事とは違って、秘密裏に行われる非公式な行事です。


 その内容と言うのは、まず毎年生徒の誰かが、行事の実行役である『サヨコ』に選ばれます。

『サヨコ』に選ばれた生徒は、その事を誰にも知られてはいけません。卒業する日まで、絶対に秘密にしておかなければならないのです。そして卒業式の日に、あるメッセージが次の『サヨコ』に選ばれた者に伝えられ、それを受け取った生徒は、先代と同じように自分が『サヨコ』に選ばれたことを隠しながら、学校生活を送っていきます。


『サヨコ』は、自分が『サヨコ』であることを隠して、在校中にある課題をクリアしなければなりません。もし『サヨコ』であることがバレずに、その課題を成功させることができたら、行事は成功。ですがもし、『サヨコ』であることがバレてしまった時は失敗です。

『サヨコ』が失敗した年は、大学合格率が過去最低になったり、不幸な出来事が起きたりするので、それが嫌なら絶対に成功させなければいけません。こうして良くない出来事を回避する為に、『サヨコ』の行事は何年も受け継がれていくのです……



 ……これだけでは今一つ、ピント来ないと言う人も多いでしょう。すみません、へたに多くを書くとネタバレになってしまいますし、少し複雑な部分もあるので、説明下手な自分では、伝えられる内容に限度がありました(-_-;)


 用はこの『サヨコ』と呼ばれる行事は、不幸な出来事が起きないようにするおまじないみたいなもの。与えられた課題を、バレないようにこなしていって、次の『サヨコ』に引き継ぐという、秘密の儀式と言ったところでしょうか。

 作中ではこの『サヨコ』を巡って、様々な不思議な事件が起こっていきます。果たして『サヨコ』の行事は、本当にただのおまじないなのでしょうか? それとも……



 ホラーめいた雰囲気もありますけど、決して暗いと言うわけではありません。キラキラした高校生の青春の一ページも描かれていて、少し不思議な青春群像劇と言ったところでしょうか。

 少し複雑な話で、読む人によって印象も変わってくると思われます。それ故、自分の紹介では作品の魅力を、あまり伝えられないだろうなと思っています。

 しかしそうと分かっていても、この『六番目の小夜子』を紹介したのには理由があります。それは、文章力がとても凄いからです!


 文章力の凄さなんて、それこそ文章では説明できないでしょう。けどそれでも書きます。


 本を読んでいると、自然と頭の中に情景が浮かんできたり、まるで本の世界に入り込んだかのように周りが見えなくなって、本のことで頭がいっぱいになってしまった経験はありませんか? まるで本の中に入り込んだみたいに、描かれている世界を鮮明にイメージできるような感覚に、覚えはないですか?

 もしかしたら今まで読んできたすべての本の中で、最も本の世界に引きずり込まれてしまったのは、この『六番目の小夜子』かもしれません。それほどまでにこの本の文章には、読み手を引き込むだけの魔力があるように思えます。


 特に凄かったのは、学園祭で行われる、芝居のシーン。体育館で、ただ芝居が行われているだけのはずなのに、何故か異様な空気に包まれていて、作中の登場人物も、そして読んでいる自分自身も、まるで不思議な世界に閉じ込められてしまったような、不思議な感覚がありました。

 それは、下手なホラーよりも全然迫力があって。文字を羅列しただけでここまで、人を引き込む事が出来るのだなと驚愕したものです。




 さあ、自分が紹介できるのは、これで限界です。作品の魅力をちゃんと伝えられたかは、定かではありません。それでももし、少しでも興味を持った方がいらっしゃいましたら、この『六番目の小夜子』、本屋で探して手に取ってみてください。


 今まで色んな作品を紹介してきましたけど、今回が一番難しかったです。

 もっと作品の素晴らしさを伝えられるだけの文章力を、自分も身に付けたいものです。

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