小学生の頃に読んだ、タイトルも覚えていないある小説

 今まで書いてきたこのエッセイを見直してみて、ふと思ったことがあります。それは毎回どこかに必ず、動物が出てきているということ。

 ウサギだったり、猫だったり。意識して動物が出てくる話ばかり紹介したわけではないのですけど、何故か頻繁に出てくるのですよね。いや、何故も何も、自分が動物が好きだからなのでしょうけどね。


 思えば小学校の頃は特に、動物が出てくるお話をよく読んでいたような気がします。『チロヌップのきつね』、『おばけのゆらとねこのにゃあ』、印象に残っているお話は数知れません。何年経ってもこれらの内容は、よく覚えています。

 だけど好きだったお話全てを、細かく覚えているわけではありません。中には好きだったはずなのに、詳しい内容もタイトルすらも、覚えていない作品もあります。

 とても好きだったことだけは覚えているのに、思い出したいのに、何故か不思議と思い出せない。そんな作品も、少なくありません。


 今回はそんなうろ覚えの作品を紹介します。とはいえ、よく覚えていないお話ですから、上手く紹介できる自信がありませんけど。

 もしもこれからの紹介文を読んで、もしかしたらアレかなと思った方は、どしどしコメントしてくれたら助かります。


 さて、問題のその作品というのは、自分が小学校の頃読んでいた小説です。小説と言っても、本として出版された小説ではありませんけど。


 90年代半ば、小学生だった自分は、毎月親から『ポピー』という学習教材を買ってもらっていました。

 その学習教材の内容は、国語や算数と言った小学校で習うことの内容を、予習復習するための問題集の詰め合わせ。

 自分は勉強好きというわけではありませんでしたけど、毎月買ってもらうのを楽しみにしていました。その理由は、問題集の付録としてついてくる冊子にあったのです。


 その冊子、たしか名前を『ポップコーン』って言ったと思います。投稿された小学生のちょっとした体験談や、小話なんかが書かれていて、お話好きの自分は勉強そっちのけで、そのポップコーンを読んでいました。

 その中に、毎月連載されている小説があって、自分はそれが特に大好きでした。

 好きだったわりに、タイトルも登場人物の名前も覚えていないのですけどね。ですから、覚えている範囲で紹介します。


 まず主人公は、小学生の男の子。

 ある夜ふと、急に女の子の絵を描きたくなった主人公は、頭に浮かんだ女の子をの姿を、紙に描きます。するとその次の日、昨夜描いた絵とそっくりな女の子が、主人公のクラスに転校してきたのです。


「ぼくの名前は◯◯って言います。よろしくお願いします」


 そんな感じで挨拶をする転校生の女の子。主人公はその子のことが気になりますけど、じっと見ていることをクラスメイトからからかわれたり、喧嘩になって殴られたりと、何だか幸の薄い主人公でした。


 その後主人公は転校生の女の子と仲良くなりますけど、実は彼女には秘密があって。実は彼女には、この地に封印されている妖怪と戦うという使命があったのです。事情を知った主人公は彼女と協力して、妖怪と戦っていきます。


 ……大体のストーリーは、たしかこんな感じでした。要はボーイミーツガールとバトル要素を備えたライトノベルです。ただ、当時の自分はこれに衝撃を受けました。

 何せ当時は90年代半ば。ライトノベルという言葉も、たぶんまだ無かったか、あっても浸透していなかった時代です。妖怪と戦うなんて話は漫画やアニメで描かれるものであって、少なくとも自分の知る限りではこんな小説は、他にありませんでした。


 そして次に驚いたのがキャラクターです。バトルものなのに、主人公はどこか気弱で、虐めっ子に殴られたりもします。

 当時はまだ、エヴァンゲリオンも放送されていなかった頃。気弱だけど戦う主人公なんて、せいぜいのび太が年に一度、映画で頑張るくらいです。

 もちろんこの主人公も、決める時は決めます。大事なものを守るため、勇気を出して一歩を踏み出す姿が、格好良かったのを覚えています。


 さらにヒロイン。彼女は明るくて主人公を支えてくれる僕っ子でした。当時は『僕っ子』なんて言葉はまだありませんでしたけど。一人称が『僕』の女の子なんて、どの漫画にもいませんでした。たまたま親戚に自分のことを『僕』と言う女の子はいましたけど、やはり当時としては珍しいものでした。


 ここまで書いて、何が言いたいかというと……この小説は時代を先取りした凄いお話だと言うこと!

 今で言うラノベのようなストーリー。気弱だけど、やるときはやる主人公。明るい僕っ子のヒロイン。今では当たり前に使われているこれらですけど、二十年以上も前に作られたとなると驚きです。


 残念ながら詳しい内容はあまり覚えていませんけど、できることならもう一度読んでみたい。しかしこれがとても難しい。何せタイトルも登場人物の名前も覚えていなくて、学習教材の付録の冊子に掲載されていた小説ですもの。

 僅かな記憶を頼りにネットで調べましたけど、かすりもしませんでした。


 それでもいつかは……いつかはもう一度読んでみたいです。

 もしお心当たりのある方は、どうかご連絡くださいm(_ _)m

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