三匹のおっさん

 ある時本屋で、何か面白そうな本は無いかと探していたら、目に飛び込んできた本がありました。その本の名前は、『三匹のおっさん』。名作時代劇、『三匹が斬る!』を意識したタイトルで、『三匹が斬る!』が好きだった自分は、つい手に取ってしまいました。おそらくタイトルが違っていたら、この本と出合うのはもう少し遅くなっていた事でしょう。そう考えると、タイトルって大事出すねえ。


 と言うわけで手に取った『三匹のおっさん』。『三匹が斬る!』と名前は似ていますけど、もちろん内容は全くの別物です。

 舞台は現代の日本。主人公は60歳で勤めていた会社を定年退職した清田清一。退職はしても、まだまだ働く気満々だった彼は、系列会社の経営するアミューズメントパークへ再就職する事が決まっていました。けれど息子夫婦や孫は、そんな彼を年寄扱いして、何だか毎日が面白くありません。楽しい事と言えば、幼馴染の立花重雄、有村則夫と、酒を飲むこと。


 剣道の得意な清田清一、柔道家の立花重雄、機械や物作りに長けている有村則夫。三人はお互いの事をキヨ、シゲ、ノリと呼び合い、昔近所では『三人の悪ガキ』と呼ばれていた、子供の頃からの仲良しでした。

 キヨと同様に、何か面白い事でも無いかと思っていたシゲとノリは、三人で私設自警団を作り、それぞれの特技を活かして、ご町内の平和を脅かす引ったくりやチカン、悪徳会社を、次々と懲らしめていくのでした。


 歳をとったからと言って、甘く見てはいけません。キヨやシゲは、剣道や柔道の腕は衰えておらず、荒事に巻き込まれてもその腕っぷしの強さで相手をねじ伏せ、機械が得意なノリは、もし持っていることが警察にバレたらこっちが捕まってしまいそうな改造スタンガンを振り回し、悪党どもをやっつけていくのです。

 ……何だかこの紹介だと、一人ヤバ目の人がいると思ってしまうかもしれませんが、まあ良いでしょう。実際ちょっと、ヤバイ所がありますから。だけどそこが、面白かったりするのですよね(≧▽≦)


 作者は『図書館戦争』や『レインツリーの国』で知られる有川浩先生。この方の書く作品のキャラクターは、とても個性的な人が多いですけど、本作もその例にもれません。

 何年経っても童心を忘れない元気なおじいちゃん……いえ、おっさん達の活躍は、読んでいて元気が出て、勧善懲悪のストーリーには、時代劇にも似た爽快感がありました。



 北大路欣也さん主演でテレビドラマ化もしているので、原作は読んだことが無くてもドラマは知っていると言う人も多いのではないでしょうか。

 三回にわたってシリーズ化され、2018年、2019年には新春特別ドラマとして新作が放送されました。他にも、松平健さん主演で舞台化された事もあり、この作品が如何に人気かがよく分かります。

 舞台も見に行きましたけど、小説、ドラマ、舞台共にそれぞれの良さがあり、どれもとても楽しむことができました。



 また、日本最高齢の正義の味方というのがこの作品の売り文句ですけど、おっさん達以外の、若い世代の活躍にも注目したいですね。

 個人的に気に入っているのが、キヨの孫の清田祐希。祖父であるキヨの事を「ジジイ」と呼び、口が悪くてチャラ目の格好をしている、現在の若者といったイメージの祐希。物語当初こそキヨとの折り合いが悪かった彼ですけど、キヨが自警団を作って悪人を懲らしめていることを知り、また、祐希自身危ない所をキヨに助けられて以来、少しずつ祖父の事を尊敬するようになっていきます。


 三匹のおっさんとは立ち位置が違いますが、巻き起こる騒動を別の角度からとらえ、時には事件解決にも貢献し、この物語の影の主役と言っていいくらいの活躍をする事もある祐希。そして何と言っても、彼の売りは恋愛模様。ある事件をきっかけに知り合った、同い年の女の子、有村早苗と交際するようになるのですが、二人の恋する姿がとても甘酸っぱく、青春小説を読んでいるみたいに、キュンとしました( *´艸`)


 で、この祐希の想い人の有村早苗。実はスタンガンを振り回すノリこと、有村則夫の一人娘なのですよね。孫ではなく、歳の離れた娘と言うところがポイント。愛しい娘の恋愛を、お父さんは心配していて。

 祐希も下手な事をしてノリを怒らせてはいけないと、節度ある行動を守っています。何せ粗相があると、ノリのスタンガンが火を噴きますからね。命がけの交際ですよ(;´・ω・)



 こんな個性豊かな面々が活躍する『三匹のおっさん』笑いあり、感動ありの作品です!(^^)!

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