四つ子ぐらし
歳と共に、好きな作品の傾向は変化していくって思うのですよ。
昔はそうでもなかったのに、何となくやっていた事件もののドラマを見ているうちにそういった作品が好きになっていたり、苦手意識があったはずの洋画を、いつの間にか受け入れていたり。そんな経験があるという人は、結構いるのではないでしょうか?
自分は最近になって、家族もののお話が好きなのだと自覚しました。昔は特に好きというわけでもなかったはずなのに、気がつけば家族ものの作品を好んで読むようになっていたのですよね。
このエッセイでも例えば、両親や姉に先立たれて、姉の忘れ形見である甥っ子を育てていく高校生の話(林みかせ先生作、地球行進曲)や、幼少の頃に過ごした家に帰ってきた主人公が、そこに住まうつくも神達と家族のように過ごしていく話(淡路帆希先生、海波家のつくも神)を紹介してきました。恋愛のドキドキも良いですけど、家族をテーマにした作品には、また別の暖かさがあるのですよね(*´▽`)
そして最近、家族をテーマにした作品で、とても印象に残ったものがありました。それは角川つばさ文庫より刊行された小説、『四つ子ぐらし』です。
今までにも何度か紹介している角川つばさ文庫。しかし児童書だからと言って侮ってはいけません。この『四つ子ぐらし』、ほのぼのした雰囲気ですけど、中々にハードな部分もあるのですよ。
まず主人公の宮美三風は、両親も親戚もいない、施設で暮らすひとりぼっちの12歳の女の子です。彼女は産まれて間もない頃、名前の書かれたバスケットに入れられて、施設の前に置き去りにされていたのです。
頼れる人も、心を許せるような家族もいなくて、このまま一生ひとりぼっちなのかと、不安を抱えている三風。しかしもうすぐ中学校に上がると言うその日、三風に思いがけない出会いが訪れます。現れたのは、自分とそっくりな顔をした、三人の女の子。なんと彼女達は生き別れになっていた四つ子だったのです。
しっかり者の長女、一花。
元気の良い次女、二鳥。
優しく気配りのできる三女、三風。
引っ込み思案だけど頭が良い四女、四月。
彼女達は今まで別々の施設で、親の事も姉妹がいることも知らないまま育ってきましたけど、四つ子だったと知ってビックリ。天涯孤独だと思っていたのに姉妹がいたと分かって、嬉しくなる三風。そしてある理由から三風達は、中学生にして施設を離れ、出会ったばかりの四人だけで生活していくのですが……
最初は姉妹がいたことに喜んでいましたけど、今まで育ってきた環境がちがうわけですから。価値観や性格が合わないことが出てきて、共同生活は中々上手くいきません。
仲良くしたいと思っても、距離感があったり、意見の違いからケンカすることもしばしば。こんなことではたして上手くやって行けるのでしょうか?
そしてこの話の注目すべきポイントは、物語の途中で出てくる四人の母親……いえ、正確には、母親を名乗る女性です。
彼女は言います。寂しくなったから皆と一緒に暮らしたい。だけど都合があって、今はまだ四人全員は引き取れないから、あなた達の中で一番かわいそうな子を引きとってあげたい、と。
自分は最初この言い分を聞いて、何とも言い難い違和感を覚えました。
寂しくなったから一緒に暮らしたいや、かわいそうな子を引き取ると言うのが、自分勝手と言うか、なんと言うか。言葉に愛情を感じないと言うか。
作中でもこの自称母親の言動に、四姉妹は何かがおかしいと感じていました。あなた達の為だと言っておきながら、四姉妹の事を全く見ていないような気持ちの悪さが、この人にはあったのです。
これは作者様の秀逸な台詞の構成がなせる技だと思います。
良い人に見せかけて実は悪い人を描きたいと思ったら、良い人に見える台詞と行動をさせれば良いですけど、相手の為と言っておきながら、愛情を感じさせない言動を描くというのは、難しいのではないかと思っています。
コイツは信用できない、何か裏があるのでは。そう疑いたくなるような絶妙な台詞回しは、本当に見事です。
この人は本当に四人の母親なのか? もし違うとしたら目的は何?
そして四姉妹の共同生活は、どうなっていくのでしょうね? せっかく会えたのですし、皆良い子なのですから、力を合わせて頑張ってほしいというのが、一読者としての願いです。
これを書いている時点では三巻まで刊行されていて、まだまだ続きそう。
可愛くて健気な四人の活躍を、これからも見届けていきたいです!(^^)!
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