陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女
さあ、前回予告した通り、今回紹介するのも恋愛小説です。そしておそらく、かなりマイナーな作品だと思われます。
その作品のタイトルは、『陸と
野村美月先生と言えば、この『ライトノベルが凄い』で何度も上位にランクインし、一位を取った事もある、『文学少女シリーズ』が有名だと思います。他に、『ヒカルが地球にいたころ……』や、『吸血鬼になったキミは永遠を愛し始める』等、数々の名作を生みだした方です。
カクヨムのエッセイでも、野村美月先生の名前は時々見かけます。そんな先生の隠れた名作が、『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』なのです(^^♪
シリーズものでは無く、単発作品。そのせいか他の作品と比べて、少々知名度は低めですけど、これが実に素晴らしい。
主人公は、離婚間近の両親のことで悩んでいる、良家のお嬢様の
季節は夏。ケンカばかりでギスギスしている両親の元を離れて、夏休みを別荘で過ごしていた千星。だけど両親のことがどうしても気になってしまい、楽しむ事なんて出来ずに、やる事と言ったら別荘の近くを散歩するくらい。しかし散歩の最中、かぶっていた麦わら帽子が風に飛ばされてしまい、木に引っかかってしまいます。
でも困っているところに通りかかったのが、新聞配達の少年、陸でした。無言のまま木に登って、麦わら帽子をとってくれて、そのまま自転車で走り去っていく陸。突然の出来事にお礼も言えなかった千星ですけど、無愛想だけど親切な陸の事が強く印象に残って。そして陸も、ちょっと気弱だけれど、上品で可愛らしい千星のことが、気になってしまうのでした。
千星の家に、毎日のように新聞を配達に行く陸。二人が顔を合わせるのは、その時の短い時間だけです。だけど一言二言、些細な言葉を交わすだけで、相手のことがますます気になっていく二人。
だけど千星は思うのです。あの新聞配達の男の子は、家族の為に働いている。きっと助け合って暮らしている、仲の良い幸せな家族なのだろう。ケンカばかりの両親や、そんな両親に何も言うことのできない自分とは全然違う、と。
しかし陸の家は、決して良い家庭とは、言い難いものでした。唯一の家族である母親は、新しい恋人を作る度にアパートに帰らずに、自分の生活費を稼ぐために、新聞配達をしていたのです。成績は良いのに、家の経済状況を考えると、行きたい高校にも進学できずに。あの別荘のお嬢さんと自分とでは、住む世界が違うと、思っているのでした。
家庭に問題を抱えている二人。だけどお互い相手の事情は知らずに、つい距離を感じてしまいます。
気になっているのに、ろくに話をすることも出来なくて、実にもどかしい! もしここで何かのきっかけがあって、互いに悩みを打ち明けられたら、気持ちも楽になるかもしれないのに、なぜそれをしない!
陸、相手は良い所のお嬢様、手の届かない所にいる人だなんて思うな! 千星、陸だって君と同じように悩みもあるし、辛い思いだってしてるんだ!
読者と言うのは、勝手なものです。もっとこうしろ、どうしてこうなる、そんな事を何度も思っては、亀のように歩みの遅い二人の仲に、ヤキモキさせられました。だけど……そんなもどかしさも含めて、良いお話だったのです!
どこまでもピュアで、切なさと寂しさを胸に秘めている陸と千星。大きな事件が起きたり、不思議な出来事が起きたりするわけでもなく、主人公二人の会話も、極端に少ない。なのに互いの事を考える時の心の声が、どうしようもなく胸に響いてくるのです(≧▽≦)
加えて言うと、お嬢様と新聞配達の少年の、身分違いの恋と言うのが、自分にはとてもツボでした。平成が終わって令和になりましたけど、だからこそこんなレトロな感じの恋物語に、妙に惹かれてしまうのですよね(*´∀`*)
ピュアな恋愛小説が好きと言う方は、ぜひ読んでみてください(^^♪
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