ラストゲーム

 今までは小学校の頃に触れた作品を紹介してましたけど、今回は大人になってから読んで、影響を受けた漫画を紹介します。

 その漫画の名前は、『ラストゲーム』。月間LaLaに連載していた、天乃忍先生の代表作です。


 自分がこの作品と出会ったのは、28歳の頃です。当時勤めていた職場はとにかく仕事が忙しく、残業休出が、月に120時間を越えるのは当たり前でした。

 体力のない自分は、常に疲れ果てていて、たまの休みの日もどこにも行かないで、家でじっとして体力を回復させていました。そしてそんな毎日を送っていて思ったのです。楽しくないなあ、って。


 いつも忙しいのなら、せめて何か楽しいことを見つけないとやってられません。しかしその頃はとにかく疲れの溜まりが酷くて、小説を読もうとしても途中で眠けに襲われる事がしばしばありました。

 なら漫画ならどうか。漫画だったらまだ、眠気に負ける前に読むことができる。そう思ったのですが、生憎面白い漫画なんて、そう簡単には見つかりませんでした。興味のあるもは、もう粗方目を通した後でしたし。


 だけど何かないかとネットで探していたところ、目についたのがこのラストゲーム。

 恋愛ものの話が読みたいと思って探している時に見つけたのですが、この作品、それまで読んできた作品にはあまり無い、ある特徴がありました。それは……少女漫画だと言うこと。


 ストーリーと絵を見て興味を持ったのは良いですけど、それまで少女漫画なんてほとんど読んだことがなかった自分は、少女漫画を読むことにどこか抵抗を感じていました。今思えば下らないことで躊躇していたものです。

 少し悩んだ末に結局買ったわけですけど、これがその後の自分の生活を大きく変えることになろうとは……


 このラストゲーム、ストーリーを簡単に説明すると以下の通りです。


 主人公は勉強も運動もできる、イケメン小学生の柳くん。更に父親は大手リゾートの会社の社長という、非の打ち所の無い完璧な男の子です。

 しかしそんな彼の前に現れたのが、転校生のヒロイン、九条です。第一印象は、地味で貧乏くさい。大して気にも止めなかった柳ですが、テストでも体育でも九条は柳よりも好成績を修めていきます。

 今まで負け知らずだった柳は面白くありません。ライバル意識を持って事あるごとに突っかかっていきますけど、九条からはまるで相手にされません。

 どうにかして九条に勝ちたい。そう思っている時に、柳はたまたま通りすがりの人が話していた、「惚れた方が負け」という言葉を耳にします。そして、柳は思ったのです。


 九条が自分に惚れる→九条をフる→俺の勝利!

 こうして柳は、九条をメロメロにさせようとするのでした。


 ……残念なイケメンという言葉は、きっと彼のためにあるのでしょうね。

 その後あの手この手を駆使して九条を惚れさせようとしますけど、中々上手くいかずに、気づけば十年の時が流れ、二人は大学生になっていました。この頃になるとこういった話のお約束通り、惚れさせるつもりが逆に、自分の方が九条のことを好きになってしまっているのですけど、九条は物凄~く鈍感だった為、柳の気持ちに全く気づく気配はありません。

 好きなのに、頑張っているのに気づいてももらえないとは、なんて不憫な主人公でしょうか。


 この作品を読んだ事がきっかけで、自分は鈍感女子に不憫男子が振り回される話が好きになりました。

 自分の書く小説で、鈍感女子や不憫男子が度々出てくるのはラストゲームの影響が大きいです。泣きを見ることになった不憫男子の面々、ごめんね( ̄ω ̄;)


 そしてこの後、少女漫画は面白いということを知った自分は、次々とLaLaや花とゆめのコミックを買い漁る事となります。今年に入ってからだけでも、100冊くらい買ったかもしれません。今年はりぼんコミックが多いかな?

 いったいどれだけのブックオフに行って、どれだけAmazonでセット本を買ったことか。


 更に熱意はそれだけには止まらず、それらの本を読んでいるうちに、自分でもこんな話を作ってみたいと思うようになったのです。

 とはいえ、絵が下手なので漫画なんてかけるはずがありません。しかし、それなら小説ならまだ書けるのではないかと思いました。

 幸い昔から小説は読んでいたので、活字には慣れています。読むのと書くのは全くの別物ではありますけど、とりあえずやってみようと思い、パソコンと向き合いました。

 その後カクヨムに来るようになって、今ではすっかり生活の一部になっています。


 もしあの時ラストゲームを読まなかったら、おそらく他の少女漫画を読むこともなくて、カクヨムに来ることもなかったでしょう。

 ラストゲームは自分の生活に、大きな影響を与えてくれました。

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