水戸黄門

 今回は、有名作品の紹介です。


 おそらく皆さんご存じと思います。国民的時代劇、『水戸黄門』です。


 時は元禄。天下の副将軍、徳川光圀が、越後のちりめん問屋の隠居、光右衛門を名乗って、助さん格さんと共に諸国漫遊をする。幾度となくシリーズが作られ、日本を何周も何十周も旅していくお話です。

 各話の最後、葵紋の印籠を見せて正体を明かす様は有名でしょう。



 自分は昔から、水戸黄門や暴れん坊将軍などの時代劇は好きでしたけど、その良さを分かってくれない人も多かったです。中学時代は「ダサい」、「おかしい」と何度も言われてしまい、悲しい思いをしてきました(´;ω;`)


 しかし、時代劇には他には無い魅力があると思うのですよ。きっと現代ドラマやファンタジー世界で同じようなキャラクター、似たストーリーの話を作ったところで、あの雰囲気は出せません。


 何故でしょうね。人と人との絆を描いた人情話、悪者を成敗する時の爽快感。それらは他のジャンルでも表現可能なはずなのに、時代劇の雰囲気はやはり特別なのですよ。

 ただ聞いた意見の中には、毎回同じようなことしかやらない。ストーリーがマワンパターンで、つまらないと言う声もありました。


 ですがよくよく見てみると、他にはないオリジナリティ溢れる話しも、少なくないのです。と言うわけで自分が印象に残っているエピソードを、少しだけ紹介します。




『ヤマタノオロチと恐れられた代官の話』


 場所は出雲の国。ある町にやって来た御老公一行は、妙なことに気がつきます。それはこの町には、一人の女性の姿も無いと言うことです。


 聞けばこの町の代官は、大変横暴で女好き。目に入った女性に次々と手を出していき、皆から恐れられているそうです。

 綺麗な町娘はもちろん、少々個性的な顔立ちでも何のその、顔にシワを蓄えたお婆さん相手にも、遠慮無く手を出そうとする節操の無さ。町の女達は代官を恐れるあまり、山に籠って砦を作り、代官やその配下の者達から身をまもるために、竹槍等を持って自衛につとめています。


 それでもあの手この手を使って女性を求める代官。部下に向かって、もし今日中に女を用意できなかったら、お前の女房を連れて来いと言う始末。

 女を差し出せと怒るその姿は、まるでヤマタノオロチのようだと、町の人達は言っていました。




 無茶苦茶ですね(^_^;)


 脚本家も、よくこんなとんでもない代官を考えられたものです。ヤマタノオロチと言うあだ名がついていましたけど、たぶんヤマタノオロチだって、ここまで酷くはありません。


 最後はちゃんと、御老公一行に懲らしめられますが、このぶっとんだキャラクターは、強く印象に残りました。





『あのお話のパロディ』


 御老公達が旅先で出会ったのは、健気に働く町娘。彼女は父親を亡くしていて、継母や義理の姉達に毎日虐められながらも、ひた向きに頑張っていました。

 そんなある日、お城で奉公人を決める為の面接があり、上手くいけば良家のお侍と良い仲になれると思った姉達は、綺麗に着飾ってお城へと出掛けます。

 もちろん働き者の末娘はお留守番ですが、そんな娘の前に、白馬の殿様が現れると言うお話です。


 ……あらすじを聞いていて、「おや?」と思った方もいるでしょう。シンデレラのパロディです。

 特に気になったのは、『白馬の殿様』と言うフレーズです。この言葉は番組予告で使われたのですが、最初聞いた時は耳を疑いました。白馬の殿様って(笑)


 このエピソードがあったのは、水戸黄門シリーズもだいぶ後半になってから。おそらくマンネリ打破のため、色んなパターンのお話を作ろうと、脚本家が頑張ったのではと、勝手に想像してしまいました。


 水戸黄門ではこの他にも、色んな作品のパロディがあります。


 例えば、格さんが打ち首にされそうな親友の変わりに殺されるため、処刑場へ向かって走る話。明言されていませんが、『走れメロス』のパロディと思われます。


 例えば、家で留守番している子供が、罠を仕掛けてやって来た泥棒を撃退する話。おそらく『ホームアローン』が元ネタです。


 更に、水戸黄門一行が大石内蔵助と一緒に、悪い奴の屋敷に討ち入りする話。時代をちょっとだけ先取りした、忠臣蔵です。



 こんな風に水戸黄門では、ビックリするようなパロディが、多数ありました。シンデレラやホームアローンなんかは、よく時代劇で描けたと感心しますよ!(^^)!






『黄門様の偽物が現れるお話』


 放送回数千回を越える水戸黄門では、幾度となく偽の黄門様が現れました。あまりに出すぎて、作中でも「偽の黄門様がまた出たんです」と言われたこともあるくらいです。


 そんな偽黄門のお話ですが、起承転結が同じようなパターンとなっているものも、少なくありません。個人的な見解ですけど、一番多いと思うパターンは……


 ①黄門様の名を騙って、飲み食いする三人組が現れる。


 ②悪代官だの悪奉行だのがいて、偽黄門を本当の黄門様だと信じる。


 ③本物の黄門様一行が偽黄門と接触して、協力して悪人達を懲らしめるよう話を持ちかける。


 ④悪人達に偽者だとバレるも、本物の黄門様が正体を明かして悪人達を懲らしめる。偽黄門は反省していたためお咎め無し。



 自分の記憶では、この流れが多かったですね。もちろん細部は、話によって違ってきますけど。

 この偽黄門の話、よくよく考えてみるとかなり珍しい事をしているのですよ。ウルトラマンや仮面ライダーなど、正義の味方の偽物が出てくる話はいくつもあります。そして大抵の場合は、本物が偽物をやっつけて終わるわけですけど、水戸黄門は違います。偽物と協力して、本当に悪い奴をやっつけてしまうのです。


 偽物が出てくる話というのはよくありますけど、このパターンはかなり珍しいのではないでしょうか?





 個性的なキャラクターが登場する話。有名な物語の、ビックリするようなパロディ。偽物が現れた時の、珍しいタイプの展開。水戸黄門では確かに、過去にもやったような、ワンパターンなエピソードも、数多くあります。ですがそれだけではないのです。40年以上の歴史ある作品ですから、その長い歴史の中には、思わず目を引くエピソードがあったりします。


 もし話し作りに詰まったり、アイディアが出てこなかったりしたら、DVDを借りるなり、BS放送に加入するなりして水戸黄門を見て、どこかにヒントが無いか探してみるのもいいかもしれませんね。


 長年続いた名作だけあって、そこから学べるものは、多いはずですから。

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