三毛猫ホームズ

 自分は高校の頃、毎日のように図書室に行っていました。当時から読書が好きで、学年でもトップ3に入るくらい、図書室で本を借りていました。


 だけどさすがは図書室。当然ですが本の数が多くて、いくら借りても、まだ読んでない本なんて山のようにあります。しかしこう本が多いと、どれを借りれば良いか迷ってしまいますね。だって面白そうな小説が、たくさんあるのですもの。


 そんな風にどれを借りれば良いか迷った時、本を選ぶ方法の一つとして、気に入った作者の本を借りていくと言うのがありました。たくさん本を出している方だと、全部読み終わるのに時間が掛かりますから、一度これを始めると中々他の方の小説に目が通せなくなるのですよね(^_^;)


 そんなわけで、気に入った作者様の作品を連続で読んでいましたけど、高校時代に最も多く読んでいたのは、おそらく赤川次郎作品だと思います。


 赤川次郎と言えば、『セーラー服と機関銃』や『三姉妹探偵団』など、数々の有名作品を書かれている方です。自分の青春時代は、この方のお陰で楽しく過ごせたと言っても過言ではありませんよ。



 そんな自分が赤川次郎作品の中で最も多く読んだのは、三毛猫ホームズシリーズです。

 この作品は警視庁捜査一課の刑事でありながら、気弱でお人好しで騙されやすく、血が苦手で、死体を見ると気絶してしまうこともある、おおよそ刑事には向いていない男、片山義太郎を主役とした推理小説です。


 作中では度々、ダメ刑事と言われる義太郎。推理小説の主人公としては、些か以上に頼りないです。

 ですがそんな義太郎をサポートする、頼りになる存在がいます。それは義太郎が飼っている、ホームズと言う三毛猫なのです。


 ある事件で飼い主が殺された事で、片岡家で飼うことになったホームズ。このホームズですが、猫なのに驚くほど頭が良い子なのですよ。


 事件現場に行っては、警察が気づいていなかった手がかりをくわえてきたり。誰かが怪しい行動をとった時は、義太郎のズボンの裾を引っ張って、追いかけろとジェスチャーして伝えてきます。

 人間の誰よりも早く事件の真相にたどり着き、身ぶり手振りでその事を義太郎達に伝えてくる、常識外れの猫ちゃんなのです(´^ω^)



 ホームズは猫ですからもちろん、喋ることはできません。物語はあくまで人間視点で描かれているので、ホームズが何を考えているのかは、言葉では描かれず、ホームズはこんな事を言いたいのだろうと、人間が解釈する範囲でおさまっています。


 これだと描ける事がかなり制限されるはずなのですが、まったくそんなことを感じさせないのが、この作品の凄い所です。

 猫が推理して人間に伝えると言うビックリするような内容ですけど、以外とすんなり受け入れられるのですよ。読んでいくうちに、ホームズがこんな行動をとったということは、何か意図があるのだなと、分かるようになってきます。


 そしてホームズは人間よりも賢い名探偵と言う認識は、作中でもあります。

 事件の捜査に行き詰まった時、義太郎はホームズに知恵を借りようとします。義太郎の上司の課長は、ホームズの事を高く評価していて、「警視庁の顧問にしたい」「片山は頼りないけど、ホームズがいるなら安心だ」等と言っています。顔馴染みの鑑識の人も、「猫くんが気になってるということは、これは何かあるな」と、ホームズに対する信頼が非常に強いです。


 人間よりも猫の方が信頼されていると言う変わった状況ですけど、それがこの作品の持ち味です。他には無い不思議な雰囲気を作り出しています。


 それとこの三毛猫ホームズシリーズは、話が大変コミカルなのも、大きな特徴です。

 事件ものと言うと、緊迫したシリアスなお話をイメージする人も多いでしょう。しかしこれは、ダメ刑事を主人公とし、猫を名探偵にするような作品です。他のキャラクターだってどこかズレていたり、変わり者だったり。みんな大変個性豊かで、明るい雰囲気があります。


 要所要所にギャグが散りばめられていて、半分が推理小説、半分がコメディといったところでしょうか。



 普通の推理小説には飽きて、変わり種が読みたいと言う方、猫が好きと言う方に、お勧めです(^∇^)

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