うそカノ

 月刊LaLaに連載していた、林みかせ先生の学園漫画。タイトルの『うそカノ』は、嘘の彼女という意味です。


 主人公の高校生、神宮寺すばるは、特進クラスの入谷くんに恋をしていました。

 ある日貧血を起こして保健室のベッドで寝ていると、想い人の入谷くんが部屋の中に入ってきて、すばるが居ることに気づかずに「彼女のフリしてくれる人みつけないと」と呟いたのです。その瞬間、すばるは彼女のフリをしたいと名乗りを挙げました。こうして開始から10ページも経たないうちにすばるは、意中の男子の嘘の彼女、うそカノとなったのです。


 このお話のポイントは、本当の彼女ではなく嘘の彼女ということ。そんなことで近づいても、長続きしないのでは? そもそもどうして、彼女のフリをしてくれる人を探していたの? 色々突っ込み所があります。勿論入谷くんには入谷くんの事情があるのですが、果たしてこの恋の行方は……


 と、こんなお話です。

 ブックオフで一巻と二巻が安く売ってあるのを見つけて、絵が可愛かったので何となく買ってみたうそカノ。家に帰って一巻を読んでみたのですが、読み終わった後、すぐに二巻を読もうとはしませんでした。

 二巻を読むよりも先に、当時発売されていた三巻と四巻を買うべく、家を飛び出して行きました。

 二巻を読まなくても確信したのです。これは絶対に続きを読みたくなるやつだって。その時はもう夜になっていたので、モタモタしてたら本屋が閉まってしまいます。大急ぎで向かいましたよ。


 加えて二巻を読まなかったのには、もうひとつ理由があります。それは一巻を読んでいる時、あまりにもキュンとして悶えすぎて、このまま続けて二巻を読んだりしたら、自分の中の何かが致死量に達して死ぬと思ったからです。

 そうして一時間後、戻ってきた自分の手には、『うそカノ』の三巻と四巻、更に同作者様の短編集と、過去作の『地球行進曲』と言う漫画が握られていました。


 どうせ今後、この作者様は他にどんな作品を書いているか気になることは目に見えていたので、『うそカノ』の残りと一緒に色々買っちゃいました。自分にとってはそれくらいの、大当たりな作品だったのです。


 この『うそカノ』、主人公のすばると入谷くんも見ていて楽しいのですが、実はもう一組、好きなカップルがいるのです。

 それは同じ高校に通う主人公の妹のトモちゃんと、そのクラスメイトの男の子の時田くんです。

 時田くんは校内のミスターコンで3位になるくらいのモテ男子なのですが、トモちゃんのことが好きで、事ある毎に声をかけたりアプローチしたりしたりしてくる、とても健気な奴なのです。


 しかし! そんな時田くんの一途な想いは、トモちゃんには全く届いていません!

 それどころか、どこかに誘っても無下に断られるし、壁ドンしたら頭突きされてセクハラ扱いされ、グーパンされて死ねって言われて、ストーカー扱いやチカン扱いされ、毒殺されそうになって。毎日毎日、虐げられて虐げられて虐げられて虐げられて……………………虐げられて虐げられて! だけどそれでも、トモちゃんの事が好き。それが時田くんなのです!(虐げられていると言うのは、あくまで自分の見解です)


 ……この子はどうしてそんなにトモちゃんの事が好きなのでしょうかね? 作中では明言されていませんけど、Mなのではないかと自分は思っています。そうでないと辻褄が合いませんもの。

 で、こんなにも虐げられているにも関わらず一途に想う時田くんと、彼をスルーするトモちゃんを見ていて思ったのです。

 不憫男子好きの自分にとって、この二人は理想のカップルだと!


 これのどこが理想のカップルだと思う人もいるでしょうけど、自分にとっては間違いなく理想なのです。自分もいつか、こんな感じの二人が出てくる小説を書きたいって、思うようになりました。


 そうして、うそカノと出会ってから数年。時田くんとトモちゃんに負けないくらいのカップルを作りたいと思って書いたのが、『お隣の吸血鬼くん』でした。

『お隣の吸血鬼くん』の鈍感でぶっ飛んだ所のある主人公皐月と、気弱だけど一途で不憫な男の子、基山は、この二人を意識して書いたのです。設定や性格はかなり違っていますけど、好きな女の子に振り回される男の子と、相手の気持ちに気づかずにたくさん酷いことをする女の子というコンセプトは、受け継いだつもりです。


 そんなわけで自分の作品に多大な影響を与えてくれた『うそカノ』、去年完結した時には、LaLaに送った応援メッセージが掲載されたりもしました。

 たくさんの笑いと感動と胸キュンの詰まった作品、これからも何度も読み返していくことでしょう(^^)

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