研究バカ設定資料 第一章編

《用語》


〇ア行


【アストラルフィールド】(あすとらるふぃーるど)

 竜胆輪花が「神の存在証明」研究中に導き出した、情報の場のこと。

 当初は「情報が伝う網」と仮定していたが、死後中にアストラルフィールドを訪れることで「場」に訂正した。

 元々は、生命体を情報を集約し固定する存在と仮定すると、その情報はどのように世界に影響を与えるのか、また、どのように拡散するのかを捉える概念だった。

 だが、竜胆輪花はこの概念を自然科学体系に昇華することで「神」を捉えようとした。

 竜胆輪花の死後、このアストラルフィールドを利用した科学大系が生まれたとかなんとか。


【いたずら】(いたずら)

 精霊によるいたずら。

 自分が冠する属性、要素を好き勝手に変更する。

 精霊破局の大部分の被害が、このいたずらにより引き起こされた。


【海の獣】(うみのけもの)

 海より生まれ出でた存在、もしくは海に生まれ落ちた樹の獣。

 世界を循環させるという役目ゆえに、大戦中も中庸の立場を示す。

 だが、英雄たちの嘆願により、外海へ繋渡の道を示した。


【エスラトウス】(えすらとうす)

 異世界。無限の海と無数の島々が織りなす世界。

 探記時代に世界の果てが示され、無限と無数は条件付きの有限となった。


【エレメンタルスキル】(えれめんたるすきる)

 リンカがこの世界に来て編み出した霊素自体を扱うスキル体系。

 霊素を消費せず世界に影響を与えるので、非常に燃費がいい。ただし、現状はリンカしか扱えない。

  エレメンタルハンド……霊素で手を構成し、遠隔操作でモノを扱える。複数展開可能。

  エレメンタルソナー……極小のエレメンタルハンドを発散して周囲を走査する。使用するとかなり疲労する。

  エレメンタル糸電話……霊素を情報を伝える糸に変化させて、相手の思考を解析する術。設定で深層心理も探れる。

  エレメンタルドット……極小のエレメンタルハンド。

  エレメンタルアイ……エレメンタルドットを半球状に配置した霊素の眼

  エレメンタルレッグ……狂気に陥る頭から生える足。ボツ案。

  エレメンタルバンド……伸縮する霊素帯。硬度を持たせつつ伸縮する、外骨格機能と筋肉を併せ持たせた。

  エレメンタルパワードスーツ(EPS)……むーちゃんとの合作。体中に配置したエレメンタルドットである程度の攻撃を無効化し、エレメンタルバンドによって自身の筋力を強化する。起動中は他のエレメンタルスキルを使えない。


【王の選別門】(おうのせんべつもん)

 神霊樹に置かれている、その者が王にふさわしいかを選別する門。

 選別基準は『民』『為』『守』の三つがあり、それら全てを満たさなければ王になれない。

 ちなみに、本系であるリンカの母はクリアできなかったので、再従姉妹だったリーヴェスが選別を受け、王になった。


【王竜会議】(おうりゅうかいぎ)

 年に一回、八枝〜十二枝で開催される、世界を統べる六国と世界の中心である神霊樹の代表が集まり、世界の諸問題を話し合う会議。

 外交・外商関係も一括で行われるため、一大政治イベントとしても注目される。

 問題が少ない場合は短く終わるが、近年は開催期間が増加傾向にある。

 余談だが、開催期間のトトカルチョも行われている。


〇カ行


【過去視】(かこみ)

 エンエの徴術。過去の再現を視ることが出来る。

 現在は意識した囲いの中の過去を、霊素で作り出したミニチュアを介して視ることが出来る。

 ——時間とは観測できない時空間不連続面の積み重ねであり、過去視はそれも再現している。


【樹の王】(きのおう)

 樹の獣の中でも特に強力な徴【七つの徴】を持つ種族の王を指す。


【樹の獣】(きのけもの)

 神霊樹から生まれ落ちた存在。

 霊獣、幻獣とも呼ばれる。

 彼らは基本的に不死の存在とされ、その肉体が大地から消えても存在は神霊樹に還り、また復活する。

 高位の樹の獣は、肉の形を自由に変えられるため、ほかの獣と対話する場合は姿をその獣に似せて会話する。


【樹の民】(きのたみ)

 樹の獣の中で、最も人類に近い姿形をしている存在。

 霊素の取り扱いがうまく、属性の適性数も多い。

 そのため、樹の民の血を継ぐ者は術師として大成する者が多い。

 耳が鋭角にとがっているのが特徴。


【樹の民の眼】(きのたみのめ)

 樹の民が持つと伝えられる霊素を視覚的に捉える徴術。

 いくつかの段階があり、極めれば霊素の動きから術の初動を予測できるという。

 霊素を見ないよう、術者が意図的に切り替えることも可能。


【樹守の竜】(きもりのりゅう)

 神霊樹を守護する竜。

 英雄時代では、七英雄を導く存在として活躍した。

 歴史書では「竜の娘」と書かれており、現在唯一の地上で生まれた竜である。

 霧との戦いが沈静化し、最愛の賢者を看取って以後、樹守の竜となった。


【霧の王】(きりのおう)

 黒霧を撒きちらす、神霊樹の天敵。

 樹の獣が霧魔化したとも伝えられる、霧魔を統べる王。

 特に禍津七霧と呼ばれる樹の王の対存在は、樹の獣、地の獣の生存圏の九割以上を奪った。

 英雄時代とは、すなわち七英雄と禍津七霧による戦いの時代である。


【霧魔】(きりま)

 黒霧に冒された獣全般を指す。

 姿が異形となり、身体から黒霧が立ちこめていると伝えられている。


【霧払いの武具】(きりはらいのぶき)

 黒霧を切り払う加護が付いた武具。

 攻撃力はないが、黒霧に覆われた世界から錐を払うのに役立てられた。

 原型制作者である女性鍛冶士は後に石の英雄と馴れ初めた。


【霧払いの術】(きりはらいのじゅつ)

 霧払いの武具の原理を応用し、術にしたもの。

 英雄が使用した魔術のひとつであり、精霊破局と共に失われた。

 霧魔特攻とも呼べる術で、英雄時代後期における究極魔術と言われる。


【契約石】(けいやくせき)

 術精霊と契約し、移住させるための霊石。

 術精霊の属性にあった霊石を用意することが好ましい。

 消費する霊石と間違えないよう、厚みがある両凸レンズ形状に加工されたものが一般的。

 使用する際は、武具など術者本人が携行するモノに契約石ホルダー加工を施し、ホルダーに填める。

 術精霊時計訳すると、契約紋が中心に顕れ、回りに階位円、その外側に熟練度が表示される。


【声届の霊器】(こえとどけのれいき)

 エンエが使用していた音声通信用の霊器。ねじり蓋を閉めると交信を開始するようだ。


【刻紋】(こくもん)

 術の発動手順を解析し、精霊語・図形(図紋)・記号(符紋)・心象画(術図)に起こし、物質に紋様として刻み彫ることで、誰でも術を使えるようにした技術。

  【外霊素型】(がいれいそがた)

   霊素供給型の一つ。

   刻紋の外側から霊素を取り込む型

  【内霊石型】(ないれいせきがた)

   霊素供給型の一つ。

   刻紋内に設置した霊石から霊素を得る型

  【内外型】(ないがいがた)

   霊素供給型の一つ。

   外部から霊素を取り込み、内部からも霊石から霊素を取り出す、ハイブリッド型。

   概念だけは刻紋研究史の初期からあったが、実現には至らなかった。

   しかし、リンカの研究により、三連型として実現した。

  【三連型】(さんれんがた)

   内外型を実現するためにリンカが作り出した刻紋型。

   外部供給紋と内部供給紋で術図紋を挟み込む事により機能を分割。

   また、外霊素型の改良により内霊石型並の霊素供給圧を確保した。

  【霊素充填符紋】(れいそじゅうてんふもん)

   リンカが発見した立体符紋。

   これを霊石に刻むと、放置するだけで霊石内に霊素を充填する。

   充填には、大気中の十分な霊素濃度が必要。

  【図紋】(ずもん)

   刻紋の形と順序を決める紋様。

   紋様の形を決める外縁紋と、命令のコマ割りと順序を決める内縁紋がある。

  【符紋】(ふもん)

   霊素の流れと精霊語の命令を調整する役目がある記号紋様。

   二十種類あったが、霊素充填符紋の開発により一種増えた。

   【論式符紋】(ろんしきふもん)

    論理演算用の符紋。

    NOT/AND/OR/XOR/NOR/NANDに対応する符紋がある。

  【精霊語】(せいれいご)

   精霊が術を発動する際に使う圧縮言語を可視化した紋様。漢字のような表意語に近い。

  【術図】(じゅつず)

   術の内容を一枚絵に表した図で、逆に言えば術の内容を決めている紋様。

   術図は要素さえ抑えていれば発動するが、緻密な絵の方が良いというわけではない。


  【ガーガリル式】(がーがりるしき)

   ヴィーヴ・ガーガリルが彫る、特徴的な絵柄の術図。こちらの世界ではデフォルメとも呼ばれる。

   芸術点はないが、要素が分かりやすく、かわいいため女性にファンが多い。

   なぜか術の効果もちょっと高いため、他の刻紋技師から嫉妬されている。


  【術図の伝承】(じゅつずのでんしょう)

   術図は彫っただけでは利用できない。

   利用するには、術図の要素を理解し、術図を発動していることを観測する必要がある。

   ただし、自ら作成した術図に関しては自分がオリジナルなため、伝承は不要となる。


【黒霧】(こくむ)

 黒い霧のような物質。神霊樹を腐らせ、樹の獣や地の獣を浸食し霧魔にする。

 どこから発生したのか、未だに不明。

 霊素と共に樹の獣の霊素吸収器官に入ることによって機能不全にさせるため、樹の獣は戦場で秘術を扱えなかった。

 竜の娘と霊人種は、地より肉を作ることで強靱な霊素吸収器官を獲得してたため、術の行使ができた。


〇サ行


【栽培術】(さいばいじゅつ)

 草木・霊樹を栽培する技術。

 霊素を利用することにより、栽培中の草木、霊樹を急速成長させることができる。

 戦闘面での主な役割は、戦場で霊樹を成長させることによる霊素供給。

 また、霊樹を意図的に品種改造し、特定の機能を有する霊樹にすることができる。


【栽培術師】(さいばいじゅつし)

 栽培術の術精霊と契約した術師のこと。

 枝の外などの霊素が少ない環境で十全に戦うためには必要な術師。


【術】(じゅつ)

 霊素を消費し、事象を起こすことを術という。

 術は大まかに分けて、三つに分類される。

 ・理術……属性を利用し、世界事象に追記して事象を再現する術。火球・水刃など。術は主にこれを指すことが多い。

 ・武術……先人の武技を事象化して再現したり、術で強化する術。影突き(槍術)・千棘天衝(槍術)など。

 ・巧術……先人の巧技を事象化して生産などを補助する術。温度感知・素材鑑定(石材)など。

 また、ここに徴術・秘術などの分類が入る場合もある。


【術精霊】(じゅつせいれい)

 術が扱えない霊人種が、術を扱うために契約する精霊。

 枝の賢者が七英雄の為に発見したと言われている。

 術精霊はこの世界で生まれた現象や経験を術に保存することができる。

 これにより、先人の技の失伝という事が無くなり、技の再現が容易になった。

 しかし、安易に使えるからか、術を自らの技として昇華する者が減った。

 精霊破局により術精霊を生み出す技が失われて以後、術精霊の技を学び取る風潮となり、現在に至る。


 術精霊との契約は、そう難しくない。

 術を扱える条件を満たした者の前に術精霊が顕れるので、その時に契約石を用意すると契約することができる。

 だが、条件は術精霊を生み出した者、もしくは大精霊しか知らないため、条件を探すことが至難である。


 契約者の術系統の練度は術精霊が測ることができ、契約石の外縁に十個の光点として顕れる。(単位は雫)

 また、契約者の成長にあわせ術精霊自体も成長する。階位は契約石内の外縁内の円の本数として顕れる。

 十分に成長した術精霊は他の術精霊と子精霊を作ることもある。子精霊は親精霊の特性と階位を引き継ぎ、より強力な術を扱える。

 各王家はそれぞれ象徴する術精霊の世代を重ねており、術精霊王とも呼ばれる術精霊を保有している。


【純人種】(じゅんじんしゅ)

 樹の獣と交わっていない、純粋な地の獣由来の人種。

 霊人種に庇護される立場ではあるが、文明・文化面で才能を発揮する者が多い。

 学者・経営者も多く、


【徴術】(しるしじゅつ)

 樹の獣と霊人種が使用出来る、個々の霊素親和性を具現化した術。

 霊人種の場合は、隠し情報として階位が存在する。

 熟練度や個人の資質の高さでオリジナルである樹の獣の性能に迫る階位となる。

 要素として、個人で得意なこと+霊素親和性+種族特性により、傾向と階位が決定する。

 しかし、上記はあくまで一般的な徴術の話であり、イレギュラーは存在する。

 研究魔とか枝の賢者とか姫子とか。


【神霊樹】(しんれいじゅ)

 神々の亡骸から生え出た樹と言われる。

 神霊樹は、創世後の神々の戦争により痛んだ世界を癒やすために生まれ落ちた存在と言われている。

 神以外で霊素を作り出せる原初の存在である。

 霊樹や樹の獣を生み出せる存在でもあり、この世界の人々にとっては信仰の対象でもある。

 遙かな高みまでその背を伸ばし、世界を覆うほどの枝を伸ばすその姿から世界樹とも呼ばれる。

 その枝葉から光が生み出され、世界を照らし、温める。

 神霊樹の光、樹光は一定の周期があり、それは神霊樹の上に存在する精霊界に住む大精霊が移動しているためであり、大精霊が司る基本属性に影響された気候が下界にもたらされている。


【神霊樹の加護】(しんれいじゅのかご)

 霊人種に神霊樹から与えられた、『一日一回、死を免れる』という加護。

 さらに、致命的な攻撃を無効化した後、登録した霊樹まで身体を転移する。

 病気、毒などによる継続的なダメージによる死は無効化できない。劇薬なら可能。


【神霊石】(しんれいせき)

 古き樹の民の額と耳に付いている石のこと。

 膨大な霊素を含んだ霊石、と言われているが詳細は不明。

 リンカ曰く、これがあるからエレメンタルスキルが使えている気がする、とのこと。


【精霊】(せいれい)

 神霊樹の葉からこぼれ落ちる、意思を持った霊素のかたまり。

 霊素自体が意思に集まる特性があるため、精霊とは意識の塊ともいえる。

 精霊の意思ごとに得意な属性があり、精霊の近くにある霊素もその属性に偏りやすい。

 そして、属性と意思を得た精霊はグループを作り、存在意思が似た精霊と共同体(コミュニティ)を作る。


【精霊破局】(せいれいはきょく)

 一人の男が術精霊との契約を反故し、存在を消そうとした時に起こった、精霊達による暴走。

 共同体を超えて拡散された暴走状態は、安寧期に入っていたエスラトウスに未曾有の大災害をもたらした。

 精霊破局による混乱が鎮まるまで、王にして三世代ほど掛かったと伝えられている。

 このときの暴走により、あらゆる植物製の紙がいたずらされ、歴史資料など重要な資料が散逸した。


【育手】(そだて)

 王家の子を王の選別門を通るにふさわしい王に育てる、特殊な傍系。


〇タ行


【大精霊】(だいせいれい)

 知性を持った精霊、名を持った精霊とされる、伝説にその姿、名前を残す精霊。大量の霊素を蓄え、増幅し、強大な魔術を操る存在。

 英雄と契約したときの大精霊は、巨大な霊素増幅器となり、その状態で放つ魔術は千兵による軍勢を一瞬で灰にしたという。

 術精霊とは違って成長はしなかったと伝えられている。


【大精霊級魔術】

 大精霊と契約した第一世代の英雄が行使できる術を超えた術。

 曰く、島を一つ消し飛ばした。

 曰く、霧に冒された大気を一瞬で浄化した。

 曰く、三島先の山に穴を空けた。

 などの逸話が残っている。


【大霊樹】

 七英雄の一人、カティアが植えたとされる霊樹とそれに住まう精霊を指す。

 シャドラ王家の子供達に徴術を教える役目と霊石を生み出す仕事を与えられた。

 今では大精霊に階位を上げ、カティアの血を引く子らに合うのを楽しみにしている。


【地の理】(ちのことわり)

 地球でいう自然科学。ただし、霊素の影響を受けるため、純粋な地の理を観測することは難しい。


【地の獣】(ちのけもの)

 大地より生まれ出でた存在。

 樹の獣とは別の系統樹であり、地の理を基本に生きる存在。霊的存在ではない。

 霊的存在でないため、生存に霊素は必要なく、大地の上で生態系を構築できる。

 生物はここに分類される。また、適者生存・突然変異による進化も起こる。

 霧の影響は受けない、もしくは受けにくいが、樹の獣よりも脆弱な存在なため、霧の魔物、霧の魔獣に生存圏を追われ、駆逐されかけた。


【手】(て)

 エレメンタルハンドのこと。樹の民の眼のような、霊素自体を捉える認識法以外では不可視の手。

 鍛えれば鍛えるほど膂力は増し、練習すれば練習するほど器用になっているとは本人の談。


【時詠の眼】(ときよみのめ)

 狭間の獣の徴。眼全体が濃い蒼で、その中に星空のような光点が点在する。

 七つの徴には数えられなかったが、かなり強力な徴である。

 ただ、彼らは狭間に居る故に。


〇ナ行


【七英雄】(ななえいゆう)

 大地に愛されし七姫と七樹の王との間に出来た子が初めて世に現れた英雄——七英雄と呼ばれる。

 生まれながらの霊素による膂力、徴術による特別な力を持つ存在として、人々の希望となった。

 その後、規格外な大精霊の力を得たことにより、魔術を使えば奇跡が起こったと言われる。

 また、七英雄の側には、霧の軍に戦いを挑んだ竜の娘と、神の枝を持ちし賢者が居たという。


【七つの徴】(ななつのしるし)

 七つの徴とは、樹の獣の中でも力の強い特徴を指す。


 秘術をもたらす角を持つ「竜」の徴

 形容をもたらす岩を持つ「石」の徴

 叡智をもたらす耳を持つ「木」の徴

 轟力をもたらす牙を持つ「牙」の徴

 繁栄をもたらす蹄を持つ「蹄」の徴

 循環をもたらす鱗を持つ「鱗」の徴

 拡大をもたらす翼を持つ「翼」の徴


【七つの偉業】(ななつのいぎょう)

 七つの偉業とは、七英雄を産んだ姫君たちの偉業を指す。


 千を屠りし槍士の偉業……霧の軍勢を単騎で屠り、竜王に力を認められた槍姫の偉業。

 霊石具を作りし石工の偉業……霊石具を作り出し、英雄の武具を納めし石姫の偉業。

 樹の種を盗みし盗人の偉業……神霊樹の種を盗み、人々に霊樹をもたらした盗姫の偉業。

 隷属を覆せし闘士の偉業……奴隷解放を謳い、それを為した闘姫の偉業。

 熟饌を捧げし料理人の偉業……精霊、樹の獣に捧げる熟饌を作り、捧げた饌姫の偉業。

 大地に祈りを捧げし巫女の偉業……大地に祈りを捧げ、神霊樹への道を拓きし巫女姫の偉業。

 繋がりと知恵を広げし商人の偉業……対話計画を建て、樹の王と大地の姫を繋ぎし商い姫の偉業。


 この七つの偉業によって人族と樹の王との対話が始まり、英雄計画へと進んでいく。


【名にも無し】(なにもなし)

 大霊樹の大精霊が示したリンカの徴術。

 この世界の全ての徴術を知る大霊樹でも判明しなかった徴術に贈られるユニークホルダー確定名。

 ぶっちゃけいえば、お名前リストにない徴術全般を指す術名だったりする。


〇ハ行


【狭間の獣】(はざまのけもの)

 本来の姿は単眼だけが中に浮く、怪物と言われてもおかしくない樹の獣。

 時空を見通し、時間の狭間に隠れ住むため、知っている者しか彼の存在を見つけられない。

 英雄時代では、英雄育成のため狭間を貸したと伝えられる。


【果ての魔獣】(はてのまじゅう)

 世界の果て付近に出没した、謎の攻性生物。

 生命を見つけ次第攻撃を行い、事切れるまでその勢いは止まらない。

 様々な地の獣の姿をしているが、術のような攻撃も行うため、樹の獣かの区別も付かない。

 倒したり捕縛した時点で霧散するため、遺体を検証することもできない、研究者泣かせの存在。


【秘術】(ひじゅつ)

 樹の獣が行使する術全般を指す。

 術精霊無しで行使するため、自由度が高く、霊素変換効率も高い。その分、霊素の消費も激しい。

 そのため、霊素が薄い場所では極端に性能が落ちたり、発動すると周りの霊素を奪い尽くしたりする。


【人族】(ひとぞく)

 地の獣の中でも繁栄したのは人族であり、文化を形成できる島では人族がいない島はないとされる。

 ただし、純粋な人族(純人種)は、闇霧時代に絶滅の危機に瀕したため、貴重な存在となっている。

 現在の人族は、何かしらの樹の獣と交わった霊人種がほとんどである。

 ただし、現在では世代希釈が進んでおり、純粋なヒト種と霊人種で見た目はほとんど変わらない。

 樹の獣の特徴を持つ霊人種は血の管理が出来ている王族か、先祖返りがほとんどである。


【姫子】(ひめこ)

 霊素を身体に宿し、偉業を達し七英雄の母となった七人の女性。

 →【七つの偉業】


【古き樹の民】(ふるききのたみ)

 最も古い樹の獣と呼ばれる、樹の民の上位存在。

 額と耳に神霊石を持ち、古き樹の秘術を操るとされる。

 樹の獣としての役目は、世界にある知識の収集と保持。

 そのため、転生することで知識を保持している。

 現在は樹の民の子として極たまに生まれ、その全てが転生体である。


〇マ行


【門】(もん)

 →【門樹】


【門樹】(もんじゅ)

 場所と場所を繋げる門を作ることに特化した霊樹。

 ワープホールゲート。

 これを育て、運用することは、霊培術師の到達点の一つと言われている。


〇ラ行


【竜の鼻】(りゅうのはな)

 竜の徴とトゥーワの驚異的な嗅覚より生まれた徴術。

 生命の存在と感情の機微を鋭角に感知する。

 匂い物質を介してではなく、角で感知した生命体を共感覚のように匂いで感じ取っている。


【霊器】(れいき)

 枝の外の技術。詳細不明。研究が待たれる。


【霊人種】(れいじんしゅ)

 霊人種は、樹の獣と交わることにより霧と霧の魔物に抵抗する力を得た種である。

 純人種との明確な違いは、霊素が扱えるということだろう。

 純人種は、体内への霊素吸収と貯蔵ができないが、樹の獣から得た霊素器官を体内に持つ霊人種は、霊素を体内に吸収、貯蔵ができる。

 術は残念ながら徴術しか使えなかったが、術精霊との契約により、他の術を扱うことができるようになった。

 また、霊素は身体内部で巡らせることにより身体強化できるため、成長するにつれて霊素の扱いがうまくなると超人化が可能となる。

 この霊素の力と術により、霧の魔物に対抗する手段を得たヒト種は、霧の魔物から生存圏を取り戻していく。


【霊素】(れいそ)

 エスラトウスのあらゆる場所でエネルギーの代わりに使われている謎物質。

 神霊樹や霊樹が生産しており、術に使うと消費される。霊石として結晶化貯蔵も可能。

 存在場所は空気中とされ、空間中の飽和濃度は温度変化にかかわらず一定とされている。

 そのため、この霊人種同士の戦闘では、空間中の霊素をどれだけ自分に取り込めるかが重要な要素の一つとなっている。



《術・術図》


【来光術図】(らいこうじゅつず)

 熱を発しない光を発生させる術図。

 術図:光を表す図。キラキラ。

 効果:指定場所に光源を発生。

 要素:[位置][形状][時間][光量]

 基本的な術図。刻紋の基礎として教えられることが多い。


【竜盾術図】(りゅうじゅんじゅつず)

 半透明な盾を発生させる術図。

 術図:盾を構える竜の図

 効果:指定座標に垂直な盾の発生。盾はある程度の物理攻撃を防御する。

 要素:[大きさ][形状][硬度][エネルギー吸収量][位置]

 刻紋開発史の最初期からある術図。しかし、謎の多い術図。

 どの術が元となって出来た刻紋なのか不明。

 竜の盾なので、竜の秘術が元になっているのではないかと考えられている。



《場所》


【父知らずの館】(ちちしらずのやかた)

 英雄時代末期に建てられた、築千年以上という由緒ある館。四階建て。

 父無し子を身ごもったカティアが住まうために建てられたため、父知らずの館という名前が付いた。

 以後、シャドラ王家の子供達はここで育てられた。


【枝の外】(えだのそと)

 神霊樹の枝の外。霊樹を植えない限り、霊素も供給されず、神霊樹の加護も受けられない。

 治外の世界。神霊樹の光が常に夕日のようになることから、斜光の世界とも呼ばれる。


【枝の内】(えだのうち)

 神霊樹の枝の内側。霊素が常に供給され、飽和状態に近い。

 神霊樹の加護を受けられる他、門樹の転移門網も使える。

 平和と安定の楽園を目指した世界だが、


【中枢島】(ちゅうすうとう)

 六国の政治経済の中心となっている島々を指す。治安が行き届いている島。

 神霊樹の幹に近いため、大精霊の影響も強い。


【世界の果て】(せかいのはて)

 枝の外を神霊樹に背を向けて進んだ先にある、世界が途切れる地。

 虚無に落ちる海、下より生える大地、果ての魔獣など、世界の終末を思わせる光景があるという。

 世界の果てを発見したことにより、探記時代が終わった。



《国》


【牙国】(がこく)

 霊人種牙族・蹄族を中心とした国。

 土の大精霊の影響で土地が豊か、蹄族の農耕技術もあり、一大農業国となっている。

 また、牙族はその器用さを生かし、石材工芸品や織物を輸出している。

 牙族と蹄族で構成された国軍は、六国の随一の強さを誇る。


【石国】(せきこく)

 霊人種石族を中心とした国。

 風の大精霊の影響で砂礫が多いが、その変わりに島が大きく、石材が豊富である。

 石材加工の最先端でもあり、頁石や各種建材も多く輸出している。

 国土防衛に関しては無類の強さを誇る国軍だが、進軍は種族特徴故に遅い。


【木国】(もっこく)

 霊人種樹族を中心とした国。最も純人族が多い国でもある。

 水の大精霊と大樹の大精霊の影響で温暖な気候が特徴で、木材と霊石の産出が盛ん。

 刻紋研究のメッカでもあり、技術の木国とも評される。

 ただし、国軍の質は最も悪いと揶揄される。ちからがたりない。


【翼国】(よくこく)

 霊人種翼族を中心とした国。

 光の大精霊の影響でからっとした過ごしやすい時期が多い。綿花と霊鳥の飼育が盛ん。

 特産は衣類の素材。特に霊鳥のダウンは高値で取引される。

 浮遊する島が多数あるため、移動手段として飛空船が開発されている。

 飛空船開発のため、地の理にも精通した者が多い。


【竜国】(りゅうこく)

 霊人種竜族を中心とした国。

 火の大精霊の影響で日照りが強く砂漠が多いが、歴史上重要な建物が多くあり、観光地や修行地として売り出している。

 快適な居住地が少ない故に、外に向かう傾向が多く、数多くの竜族は傭兵として活躍する。

 人数が基本少ないため、軍全体の戦闘力は牙国に及ばないが、個人の力としては六国中一歩抜きん出ている。


【鱗国】(りんこく)

 霊人種鱗族を中心とした国。

 陰の大精霊の影響で曇りと雨が多く、島にも洞窟が多い。街も洞窟の中にあり、特殊な文化が成り立っている。

 神霊樹を崇める宗派がおり、その巫女が代々王となる宗教国家でもある。

 また、中枢島には聖蛇様と呼ばれる樹の獣がおり、崇められている。

 術に秀でる者が多く、特に医術の才能を持つ者が多い。


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