第47話 妖刀ムラマサ
「な、何だ!?自殺……いや、まさか……」
岩山の頂上から落下してきたオークの死体にレアは動揺を隠せず、落下の衝撃の際に肉体が四散してしまう。それでも彼は落下寸前のオークが既に全身が血塗れの状態であった事を覚えており、彼は目の前の岩山の頂上を見上げる。そして山頂からこちらを見下ろす人物を発見し、その姿を見た瞬間にレアは動揺を隠せずに驚きの声を上げる。
「高山!?」
「キルゥウウウウッ!!」
山頂からレアを見下ろしていた人物は「紅色の日本刀」を手にした「高山考」であり、彼は岩山の頂上から跳躍すると地上に存在するレアの元に向けて落下する。
「な、馬鹿っ!?死ぬぞっ!?」
「斬る切るキルッ……!!」
自殺行為としか思えない考の行動にレアは驚愕するが、彼は落下の最中に刀を岩山の岩壁に突き刺して勢いを殺し、速度を減少させて地上に移動する。その彼の行動にレアは戸惑いながらもカラドボルグとデュランダルを引き抜いて構えると、岩壁から刀を引き抜いた考が頭上からレアに攻撃を仕掛けた。
「斬るぅううううっ!!」
「くっ!?」
咄嗟に両手の聖剣を交差させて頭上からの剣戟を受け止めるが、想像以上の衝撃がレアに襲い掛かり、荒野に激しい金属音が響き渡る。考は軽快な動作で地上に着地すると即座にレアに向けて紅色の刀を振り回し、剣筋は素人だが確実に彼の急所を狙う。
「このっ……また妖刀を作り出したのか!?」
「キキキキキッ……!!」
「正気を失ってる……この馬鹿っ!!」
考が所持する刀にレアは見覚えがあり、彼が王城の医療室で作り出した「妖刀ムラマサ」で間違いなく、前回の時は考の体力と身体能力が貧弱だった事で刀を扱いきれずに妖刀に支配される前に手放してしまった。だが、現在の彼はダガンの地獄のトレーニングを乗り越えた事で召喚当時の時よりも体力と筋力が身についており、今回は妖刀を扱える程に成長した事が仇となって呪われた刀に操られてしまう。
「カタナカタナカタナッ!!」
「どんな掛け声だ……うわっ!?」
単純な腕力はレベルが高いレアの方が上だが、考は普段の彼からは想像できない身軽さで妖刀を振り回し、トリッキーな動作でレアの肉体に斬り掛かる。両手の聖剣で彼の攻撃を捌きながらレアは考から刀を奪うため、両手の聖剣に「雷属性」の付与魔法を発動させる。
「痺れろっ!!」
「ギギィッ!?」
聖剣の刀身から高圧電流を迸らせながらレアが斬りかかると、考は後方に跳躍して距離を取り、地面の土砂を拾い上げてレアの顔面に向けて投げつける。
「ギャギャッ!!」
「くっ!?こいつっ……!!」
咄嗟に腕で顔を庇って砂利を防ぐが、考は魔物ような鳴き声で笑い声を上げて一定の距離を保ち、レアは聖剣を構えながらどのように対処するべきか考える。流石にクラスメイトを殺す訳には行かず、だからと言ってこのまま戦闘を続けても勝機があるとは言い切れず、彼は必死に考から妖刀を奪う術を考えながら周囲を窺う。
今現在の所は二人以外に生物の姿は見えず、考が殺したオークの死体が存在するだけであり、レアは地面に飛び散った肉塊と血液に視線を向けて眉を顰める。先ほどのオークは全身が斬り付けられた状態で地面に落下しており、明らかに考が相手をわざと長く苦しませる方法で全身に刀傷を与えていたとしか考えられない。先ほどからレアも急所を狙われているが頭部や心臓が存在する胸元の部分には攻撃を仕掛ける様子はなく、じっくりと痛めつけるつもりなのか考はわざと即死は免れる箇所を狙って攻撃を仕掛けていた。
「段々と苛ついてきたな……もう拳銃で撃ち抜こうかな」
「きる斬る切るキルッ……!!」
レアは聖剣を構えた状態で考を向かい合い、流石に相手も迂闊に仕掛ければ危険な相手だと判断したのか不用意には近づこうとせず、お互いの行動を窺う。そしてレアは地面に視線を向けてある考えが閃き、右手に握りしめていたデュランダルだけを鞘に戻す。
「きるっ……?」
「降参……じゃないよ」
聖剣を戻した事で自由になった右手を地面に押し付け、彼の行動に考は戸惑いの表情を浮かべるが、レアは意識を集中させて自分の掌を押し付けた地面に「付与魔法」を発動させる。
「雷属性エンチャント!!」
「ガアッ!?」
考の視界には掌を押し付けたレアの掌から電流が迸り、そして自分の足元に向けて「電撃」が地面を伝わる光景を確認し、彼は咄嗟にその場を離れようとしたが幾ら肉体を鍛えようと電気の移動速度に人間が敵うはずがなく、考の肉体に電撃が襲い掛かる。
「あがぁあああああっ!?」
「やったっ!!」
地面から放たれる電流に感電する考にレアは握り拳を作り、彼は地面に雷属性の魔法を付与させ、離れた相手の元に電流を操作して攻撃を仕掛ける事に成功した。
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