第29話 地下階層 〈スケルトンの墓場〉

「離せこのっ……痛いっ!?筋肉ないくせに意外と力強いっ!?」

「カタカタカタッ……!!」



レアの足首を掴んだ骸骨は彼を嘲笑うように顎を激しく動かし、その光景に苛立ちを感じたレアはデュランダルを握りしめ、容赦なく振り落とす。



「このっ!!」

「ッ……!?」



聖剣で派手に骸骨の頭部を吹き飛ばした瞬間、足首を掴む力が緩まり、その隙にレアは手首を振り払うと胴体だけになった骸骨が起き上がる。その光景に彼は驚いて後退るが、骸骨は吹き飛ばされた頭部の方角に移動を行い、地面に落ちたまま瞳だけは怪しく光らせる頭を拾い上げて装着する。



「カタカタタッ……!!」

「くそっ……鑑定!!」



即座に骸骨型の魔物にレアは鑑定のスキルを発動させて相手の情報を読み取り、名前が「スケルトン」という名前の魔物である事を突き止める。死亡したまま放置された死体は闇の魔力を帯びるようになり、骨だけの状態で生ける屍の一種と化す。しかも人間だけではなく、人型の生物ならばスケルトンに変化するらしく、レアを取り囲む骸骨の中には明らかに人間とは違う形状の頭部をした存在もした。



「風属性!!」

『カタカタカタッ……!!』



接近してくるスケルトンの大群にレアはデュランダルに風属性の付与魔法を施して身構えるが、既に死亡しているスケルトンは死に対する恐怖は抱かずに襲い掛かる(そもそも生物としての理性があるのかも怪しいが)。ゆっくりと歩み寄るスケルトンの群れにレアはデュランダルを握りしめ、竜巻を纏わせた刃を振り回す。



「吹き飛べっ!!」



剣を薙ぎ払った瞬間、刃に纏っていた竜巻に触れた個体が粉々に砕けて吹き飛ばされる。その光景を確認した倒したかと考えたが、すぐに砕かれたはずのスケルトンの破片が地面に落ちた瞬間に動き出し、一か所に集まる光景が視界に移る。



「嘘だろ……再生するのかよ!?」

「カタカタカタッ……!!」



全体を粉々に砕いたにも関わらずにスケルトンが数秒程度で完全な姿に戻り、その光景を確認したレアは慌てて何度も斬り付けるが、何度砕いても再生する。それを確認したレアは物理攻撃が通じないのかと焦ったが、長剣に纏わせた竜巻が消失してしまう。



「くそっ!?風属性じゃ駄目かっ……うわっ!?」

「カタカタカタッ……!!」



考えている間にも無数のスケルトンが周囲から接近するため、レアは壁を背にして逃げ場がない事を確認すると別の属性の付与魔法を試す。彼が普段から使用しているのは「風属性」と「聖属性」だけであり、相手が死霊系の魔物である事を思い出して彼は一か八かの賭けに出る。



「悪霊に効くといいけど……聖属性エンチャント!!」

『アァアアアッ……!?』



デュランダルに聖属性の付与魔法を発動した瞬間、聖剣の刃が光り輝く。通常ならば周囲に光を照らす程度の魔法でしかないが、悪霊である魔物に対して聖属性の魔力は非常に効果が高く、周囲を群がっていたスケルトン達が初めて悲鳴のような鳴き声を上げて身体が崩れ去る。その光景を確認したレアは聖属性の付与魔法の予想外の効果に驚くが、この隙を逃さずに反撃を開始した。



「お前らっ、普通に喋れるじゃんっ!!」

「アアッ!?」



怒りを込めてデュランダルを振り回し、次々とスケルトンを打ち倒す。相手は光り輝く刃に接近するだけで身体が崩れ去り、完全に浄化されて只の屍に戻る。



「こいつはいい経験値稼ぎだな……よしっ!!」



スケルトンを打ち倒す事で経験値が入り、自分のレベルが上昇している感覚を実感したレアはアイテムボックスを開き、王城に居た時に生成して置いた別の聖剣を取り出す。



「こいつも利用するかな」



彼が取り出したのは「カラドボルグ」と呼ばれる聖剣であり、現実世界ではケルト神話に出てくる武器だが、こちらの世界では「雷光の聖剣」の異名を誇る金色の刃の宝剣である。最初に召喚された勇者が所持していた聖剣と言われており、レアは右手にデュランダルを握りしめながら左手にカラドボルグを握りしめ、別の属性の付与魔法をは発動する。



「雷光の聖剣か……なら、雷属性エンチャント!!」



カラドボルグの刃に雷属性の付与魔法を発動させた瞬間、刀身に電流が走る。レアも初めて使用する魔法なので不安はあったが、聖属性以外にスケルトンに攻撃を通じる魔法を確かめるために彼はカラドボルグを放つ。



「せいっ!!」

「アガガガッ……!?」



聖剣の刃がスケルトンに触れた瞬間、相手の骨の肉体を崩すのと同時に電流が迸り、地面に倒れこんだスケルトンは感電したように動かなくなる。完全に倒したとは言い切れないが、それでも物理攻撃以外の攻撃なら通じる事が発覚した。

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