第30話 聖剣の二刀流
「ラストぉっ!!」
「アアアッ……!!」
最後のスケルトンをデュランダルで切り裂いた瞬間、骸骨が地面に砕け散る。それを確認したレアは汗を流しながら両手の聖剣を鞘に収めるとその場に座り込み、息を荒げながら周囲を窺う。予想以上の数のスケルトンに襲われたが全て打ち倒す事に成功し、彼の周囲には只の骨と化したスケルトンの残骸が存在した。
「ふうっ……やっぱり、聖属性の魔法じゃないと完全には止めを刺せないのか」
雷属性の付与魔法を施したカラドボルグでもスケルトンに電流を与えて感電させる事で動きを止める事は出来たが、しばらく時間が経過すると電流が消えて再び動き出すため、結局はデュランダルで止めを刺すしかなかった。それでも相手を短時間ではあるが硬直させる事には成功するため、カラドボルグで足止めしてデュランダルで止めを刺す戦法で乗り越える。
「大分倒したな……30体ぐらいは居たと思うけど、流石に体力を使いすぎたな……」
アイテムボックスを開いてレアは念のために事前に保管していた回復薬を取り出し、飲用する事で一気に怪我と体力を回復させる。聖属性の付与魔法でも怪我を治療する事は出来るが体力は戻らず、彼はステータス画面を確認すると自分のレベルが「15」にまで上昇している事に気付く。
「うわ、かなり上がったな……だけど成長痛は特に感じないな。自分で戦って経験値を手に入れたからかな」
不思議に思いながらもレアはステータス画面を閉じると現在の階層からの脱出方法を考える。文字変換の能力はまだ使用可能であり、食料や飲料水も作り出す事は出来る。武器の類はアイテムボックスに収納されており、彼は立ち上がって迷宮の探索から開始する事にした。
「この階層にはスケルトンしかいないのかな……風属性は相性が悪いけど、他の属性も後で確かめて見るか」
聖剣を装備しているとはいえ、彼のレベルには完全に聖剣の力は使用できず、付与魔法だけで戦闘を乗り越えるしかない。迷宮を移動しながらレアは道に迷わないように目印を残すため、壁に剣の刃で矢印を刻み込む。
「これで良し……聖剣じゃないと刃毀れしそうなぐらいに硬そうな煉瓦だな」
迷宮を形成している煉瓦はこちらの世界の特有の素材を使っているのか非常に頑丈であり、普通の刃物では傷を付けられない程の硬度を誇っていた。そのため、レアはデュランダルで定期的に矢印を残しながら移動を続けていると、分かれ道に遭遇する。
「どっちに行けばいいかな……ここは聖剣に決めて貰うか」
レアはデュランダルを地面に置いて倒れる方向に進もうとした時、不意に右側の通路から奇妙な呻き声が聞こえる。不思議に思った彼は通路に視線を向けると、そこには予想外の存在が接近している事に気付く。
「何だあれ!?」
『オアアッ……!!』
右側の通路から巨大な骸骨が狭い通路内を移動している姿を発見し、その体長は彼の身長の2倍以上は存在する巨人のスケルトンであり、両手で巨大な鉄槌を運びながら移動していた。その様子を確認したレアは現在のレベルでは戦うのは危険な相手だと判断し、彼は逃げ出そうとしたが相手が狭い通路の壁に左右の肩を擦らせながら移動する光景に視線を向け、絶好の攻撃の機会を本当に逃すべきか悩む。
「……こいつを使うか」
アイテムボックスから彼は水晶瓶を取り出し、鑑定のスキルを発動させて説明文を確認した後に文字変換の能力を同時に発動すると「水晶瓶」の文字を「手榴弾」に変化させる。直後に彼の手元に中身が空の水晶瓶が手榴弾に変化すると、彼はピンを抜いて巨大なスケルトンに投擲する。
「現実兵器を喰らえっ!!」
『オアッ……!?』
投擲された手榴弾に対し、左右の壁に挟まれた巨人のスケルトンは動揺した風に顔を上げるが、レアが投げ込んだ手榴弾は骸骨の右目の窪みに入り込んだ瞬間に爆発する。
『オアアアアアッ……!?』
「うわっ!?」
手榴弾が巨人の頭部で爆発した瞬間、爆風によってスケルトンの頭部が粉々に砕かれ、地面に散らばる。残された胴体も膝を崩して地面に倒れこみ、黒煙が舞い上がるが完全に死亡したわけではないのか吹き飛んだ破片が徐々に動き出して再生を始める。その光景を見たレアは完全にスケルトンが再生を果たす前に接近し、両手の聖剣に聖属性の付与魔法を発動させて胴体を狙う。
「お前らの弱点は……ここだろ!?」
『オアァアアアアアアアッ……!?』
これまでの戦闘でスケルトンの弱点を見抜いていたレアは巨人の胸元に向けて聖剣を突き刺し、骨の隙間から心臓のように赤く光り輝く宝石を砕く。全てのスケルトンには胸元の部分に赤色の宝石が存在する事に彼は気づき、こちらをカラドボルグで攻撃した時にスケルトンが完全に再生を果たすのに異常な時間を必要としていた事を見抜き、レアは巨人の胸元に存在するスケルトンの「結晶石」を破壊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます