第31話 結晶石の効果
「よっと……やっぱり、こいつらの中に入っていたのは結晶石だったか」
聖剣を引き抜いたレアは地面に散らばった巨人のスケルトンに視線を向け、胸元に存在した赤色に光り輝く直方体の結晶を発見する。聖剣に貫かれた際に大部分が砕け散っており、やがて光の粒子に変化を果たして完全に消失する。その光景を見たレアは直後に身体に成長痛が走り、結晶石を破壊した事で自分のレベルが上昇した事に気付く。
「いててっ……流石にレベルを上げすぎたのかな?うわ、レベル21!?」
レアはステータス画面を開くと自分のレベルが一気に上昇していいる事に気付き、目の前のスケルトンの結晶石を破壊した事で大量の経験値を獲得したことを確信する。それと同時に文字変換の能力を使えばこちらの世界には存在しないはずの現実世界の武器も作り出せる事が同時に判明した。
「手榴弾がここまで役立つとはな……だけど、少し勿体ない事したな。後で3文字の物体を探しておかないと……あいててっ」
成長痛に耐えながらレアは壁に背を預け、聖剣を手放して座り込む。ここまで移動する間に予想以上に体力を消耗しており、これ以上動くのは危険と判断した彼は休憩を行うために足元に落ちている石を拾い上げ、鑑定の能力を発動させる。
『小石――普通の小石、利用価値はない』
「何か辛辣な説明文だな……まあ、別にいいか」
レアは文字変換の能力を発動させて「小石」の文字を今回は「冷水」という文字に変換させると、彼の目のまで水晶瓶に収められた冷たい水が誕生し、休憩を行う。
「こんな事に文字を使っていいのかな……でも、食料なんて見つかりそうにないしな」
冷水を味わいながら周囲の警戒を怠らず、休憩を終えると身体を起き上げて移動を再開する。巨大なスケルトンが現れた通路は危険と判断し、彼はもう一つの通路に向けて移動を行う。
「ダガンさんは結晶石は滅多に出現しないと言ってたけど、スケルトンの奴等は全員が胸元が光り輝いていたよな……そう考えると少し勿体ない事したな」
最初に遭遇したスケルトンの群れをレアは聖剣に聖属性の付与魔法を施して殲滅したが、この時の戦闘で見逃していた結晶石が存在した可能性が高く、大量の経験値を入手できる好機を逃したことになる。最も聖剣の刃に触れた瞬間に普通のスケルトンは骨の肉体が崩壊してしまうので結晶石を破壊する前に浄化してしまう可能性があり、彼は聖剣に視線を向けて効率よく結晶石を破壊する方法を考える。
「最終的に聖属性の付与魔法を施した攻撃じゃないと止めを刺せないようだけど、普通の攻撃でも結晶石を破壊する事は出来るのか。再生するのは間違いないけど完全に直るには時間が掛かるようだし……」
スケルトンとの戦闘を思い返し、レアは結晶石がスケルトンの弱点である事を見抜き、単純に経験値を大量に得られる物体ではない事を悟る。彼の予想ではスケルトンにとっての結晶石とは「心臓」のように重要な役割を担う存在であると予測し、実際にレアの予想は決して間違ってはいなかった。
「力任せに剣を振り回しているだけだと体力も無駄に消費するし……今度からは胸元を集中的に狙って攻撃するか。それと他の付与魔法の効果も確かめないとな」
レアはデュランダルを持ち上げて掌を伸ばし、今後の事を考えて先に全ての付与魔法の効果を確かめるため、まだ戦闘には利用していない他の属性の付与魔法を試す。
「火属性エンチャント……あれ?」
彼が最初に試したのは火属性の付与魔法であり、レアの予想では刀身に炎を纏うと思い込んでいたが実際には刃の部分が高熱を帯びたように赤色に変色を果たす。試しに聖剣に掌を近づけると、想像以上に熱気に危うく火傷しそうになり、慌ててレアは掌を離す。
「熱っ!?これは……炎の剣というよりは熱の剣だな」
漫画の主人公のように刀身に炎を纏わせて攻撃する事を期待していたが、実際には刃を熱する程度の効果しか生まれたなかった事に残念に思いながらもレアはデュランダルを握りしめ、両手で振り抜く。レベルが上昇した事で身体能力も上昇しており、最初は片手で持つことはつらかったデュランダルも軽々と持ち上げられる事に気付く。
「次はこっちだな……水属性エンチャント!!」
今度はカラドボルグの刃に水属性の付与魔法を発動させると、レアの予想では刀身に「水」あるいは「氷」の刃が形成されるのかと考えたが、結果は刀身が青色に変色して全身から「冷気」が迸る。先程の火属性の付与魔法と似たような結果に彼は落胆したが、それでも斬り付けた相手を凍り付ける事が出来ると納得して次の付与魔法を試す。
「これ、どんな魔法だ……?えっと、土属性エンチャント!!」
今度は付与魔法が解除されたデュランダルを握りしめなおし、レアは刃に新しい付与魔法を発動させた瞬間、刀身に紅色の魔力を帯びる。そして先ほどまでは片手でも持ち上げられたデュランダルの重量が倍加したように重くなり、レアの掌を離れて地面に倒れこむ。
「うわっ!?な、何だ!?」
デュランダルの刃が硬い地面に突き刺さり、刀身の半分近くまで減り込んだところで紅色の魔力が消失すると刃が停止する。唐突なデュランダルの変化にレアは唖然とするが、すぐに彼はデュランダルを引き抜いて原因を確かめようとした時、彼はデュランダルの刃が突き刺さっていた地面の土砂の異変に気付く。
「……もしかして重力?」
デュランダルの刃が突き刺さっていた箇所だけではなく、剣が突き刺さっていた周辺の土砂が不自然に陥没している痕跡を発見し、剣の重量が増した原因が土属性の付与魔法である事は間違いない。そして彼の推論は剣の重量を単純に増加させたわけではなく、デュランダルに圧しかかる重力を加算させたのだと判断した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます