第32話 スケルトン狩り

「重力を増加させる魔法なのか?だけど、なんで土属性という魔法なんだろう……まあいいか」



深くは考えずにレアはデュランダルを引き抜き、最後の闇属性の付与魔法を発動させようとした瞬間、通路内に足音が響き渡り、彼は前方に視線を向けると予想外の光景が広がっていた。



「なんだ!?猪!?」

「プギィイイイイッ……!!」



通路を疾走するのは巨大な猪であり、こちらはスケルトンの状態ではあるが猪のような鳴き声を上げながら彼が存在する場所に突進してくる。その光景を見た彼はデュランダルとカラドボルグを構えるが、狭い通路内では回避する事は出来ない。正面から迫りくるスケルトンをどのように対処すべきかレアは冷静に考え、ある作戦を思いついて両手の聖剣を地面に向けて突き刺す。



「土属性エンチャント!!」



聖剣の刃ではなく、武器全体に土属性の付与魔法を発動させる事で紅色の魔力を纏わせ、重力を増加させて地面に突き刺す。そのまま地面に固定された聖剣を手放し、彼は正面から迫りくるスケルトンが辿り着く前に後方に下がると、猪型のスケルトンが地面に突き刺さった聖剣に自分から勝手に突っ込んで吹き飛んでしまう。



「プギィイイイッ!?」

「おおっ、予想以上に上手く行った……」



スケルトンの突進を食い止めるためにレアは聖剣を地面に突き刺しただけだが、普通に剣を盾代わりに利用するだけではスケルトンの突進に耐え切れずに吹き飛ばされる。そのために彼は覚えたばかりの土属性の付与魔法を利用して聖剣に重力を増加させて聖剣を固定し、後は勝手にスケルトンが重力を帯びた頑丈な聖剣に突っ込んで自分が逆に吹き飛ばされる結果となった。


突進の際に身体が粉々になったスケルトンが再生を始める前に結晶石を見つけ出し、レアは先に結晶石を拾い上げて破壊する前にスケルトンの弱点である「聖属性」の付与魔法を試しに直接施す。



「聖属性エンチャント!!」

「プギャアアアアッ――!?」



結晶石に聖属性の魔力を宿した瞬間、スケルトンの断末魔の悲鳴が響き渡り、結晶石が粉々に砕け散る。レアは弱点の属性の付与魔法を施した場合は結晶石が砕け散る事を確認し、地面に転がり込んだスケルトンの死骸から聖剣を引き抜く。



「聖剣が無くても戦えない事はないな……とりあえずはスケルトンには聖属性の付与魔法で対処するのが無難か」



他の属性の付与魔法を試したいという気持ちもあったが、聖属性の魔法が最も効果的である事は間違いなく、レアはステータス画面を確認して聖属性の熟練度を確認するとスケルトンを倒し続けていたせいなのか大幅に上がっている事に気付く。



「結晶石を破壊したせいなのか……?妙に熟練度が上がっているな。それに他の付与魔法も順調に上がっているし、それにこいつらそんなに強くないよな」



聖剣と聖属性の付与魔法の効果が大きいとはいえ、実際にレアは既に数十体のスケルトンを打ち倒しており、第一階層のゴブリンと比べたらスケルトン自体の動作は単調で対応しやすく、冷静に対処すれば戦闘経験が少ないレアでも十分に対処できた。



「今度はこっちも試してみるか……折角練習したもんな」



レアは聖剣を鞘に納め、両拳を握りしめる。彼が密かに「魔装術」と名付けた戦闘方法を試すため、両手に付与魔法を発動させた状態で戦闘を行う準備を整える。使用する魔法は当然だが聖属性であり、場合によっては相手の攻撃に対処するために他の属性の付与魔法に切り替える場面が訪れるかも知れず、他の付与魔法の効果も実戦で確かめる事を決意する。



「それにしても何なんだここ……スケルトンしかいないのか?」



これまでにレアが地下の階層で遭遇したのはスケルトンしか存在せず、警戒を怠らずに移動を行う。左右は壁に挟まれている通路が延々と続き、先ほどの巨人や猪型のスケルトンのような存在が現れる可能性が現れた場合は拳では対処できないので聖剣を使用する必要があるが、通常のスケルトン程度ならば彼の攻撃でも攻撃は通じる可能性が高い。


最も警戒すべきなのは未だに遭遇していないスケルトンが現れた場合であり、レアは念のためにステータス画面を開いてSPを消費して新しいスキルを覚えようとした時、熟練度の項目に視線を向けて各属性の数値が目に入る。




―――――――――――――


戦技



付与魔術師(専用スキル)


・火属性 熟練度:2


・風属性 熟練度:6


・氷属性 熟練度:2


・雷属性 熟練度:3


・土属性 熟練度:2


・闇属性 熟練度:2


・聖属性 熟練度:8



―――――――――――――



最初の頃に比べると随分と熟練度が上昇している事に気付き、レアはこの状況でとある欲求に襲われる。それは文字変換の能力を利用すれば熟練度を一気に高める事が可能であり、レベルを急上昇させた時のように身体に大きな負担が襲い掛かる可能性があったが、それでも魔法の威力と精度を大幅に上昇できる事は間違いなく、彼は意を決して指先を画面に向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る