第34話 ダンジョン暮らし
「……おかしいな、俺は何時から湯船に浸かっているんだろう」
大迷宮に家を造り上げてから数時間が経過し、目が覚めたレアは風呂場で湯船に浸かりながら現在の状況を冷静に考える。
彼が家を作り出してから随分と時間が経過していたが、何故か一度も家の中に魔物の襲撃は起きず、それどころか広間に到着してから一度もスケルトンの姿を見ていない。原因は不明だが魔物が現れない事でレアはゆっくりと身体を休ませる事に成功し、疲れが取れるまで休憩を行う。
「あ~……生き返る」
何故か異世界にも関わらずにレアは朝(家の時計の時刻から判断)から風呂に入れる事に疑問を抱きながらも湯舟から抜け出し、風呂場を後にして洗面所で新しい衣服に着替える。不思議な事にタンスの中に入っていたのは彼のサイズに合わせた衣服しか存在せず、まるで何者かの意志で彼の都合の良い「家」が誕生したように感じられた。
「まあ、別にいいか……エアコン最高~」
文字変換で生み出した家は何故かガスも水道も電気も通っており、エアコンを使用して快適な温度でレアは涼みながら食事の準備を行う。既に日付を迎えているので文字変換の能力も元に戻っており、彼は家の中で発見した「鉛筆」を利用して食料の確保を行う。
「食料……と」
鑑定のスキルを発動させて「鉛筆」の説明文を変化させ、彼は「食料」と書き込む。意味が漠然としている文字でも効果があるのかと彼は少し不安を抱いたが、無事に文字変換の能力が発動して机の上に米、肉、野菜、魚類が出現した。
「うわっ……丁寧に箱詰めされてるよ」
漠然とした文字でも能力が発動する事が発覚する一方、レアは机に誕生した食料に視線を向け、少なくとも1人だけで食べるとしたら1週間程度の余裕がある事を確認すると冷蔵庫に運び込む。食料の中には水が入ったペットボトルも入っており、レアは簡単な朝食を用意する。
「まさか異世界で元の世界の生活を送れるなんてな……皆に再会したら教えよう」
朝食を行いながらレアは窓の外の光景に視線を向け、魔物の姿が一切見えない事に安心する。理由は不明だがレアが辿り着いた広間にはスケルトンが近寄らず、最初は彼もこの家が特別で魔物が近づけない仕掛けでも施されているのかと考えたが、この広間自体に秘密がある可能性が高い。
「ここからどうすればいいかな……拠点としてこの家は残して置くとして、まずは何処の通路から移動するか」
レアが利用した通路は原因は不明だが閉ざされてしまい、現在の広間には3つの通路が存在した。この家を拠点にして敢えてレアは時間を掛けて大迷宮の探索を行う方法もあり、魔物に襲われない場所に辿り着いたのは彼にとっては大きな幸運だった。
「皆は無事だといいけど、今は脱出だけに集中しないとな。まずは武器の確認だけでも行うか……」
アイテムボックスを開き、レアはこれまでに作り出した伝説の武器や防具を確認する。彼が作り出した武器は「デュランダル」「カラドボルグ」そして未使用の「レーヴァティン」と呼ばれる聖剣の3つであり、防具は「アイギス」と呼ばれる盾を城から追い出される前に作り出している。
レーヴァティンとアイギスは後程効果を試す必要があるが、レアはデュランダルとカラドボルグに視線を向け、スケルトンとの戦闘では大いに役立ったが彼の脳裏に巨人のスケルトンを倒した時に利用した「手榴弾」を思い出す。
「現実世界の武器も作り出せるようだけど、いちいち文字変換を使わないといけないのが面倒だな……銃を作り出しても弾丸も用意しないといけないし、そもそもスケルトンに効くのかな?」
文字変換の能力を利用すれば現実世界の武器を生成する事が可能なのは昨日の時点でレアも確かめているが、仮に銃器の類を生み出しても使用する弾丸に問題がある。仮に銃器の制作の際に弾丸が装填されていた状態でも弾丸を使い切れば文字変換の能力を利用して予備の弾丸を生み出す必要があり、わざわざ貴重な文字変換の能力を使用してしまう可能性がある。
「だけど銃があれば一気に戦闘が楽だよな……あ、だけどスケルトンは聖属性の魔法で止めを刺さないと死なないじゃん!?」
今更ながらに重要な事を忘れていたレアは頭を抑え、スケルトンは結晶石を攻撃したとしても最終的には聖属性の魔法で止めを刺さなければ完全な絶命はせず、時間を掛けて再生を果たす。結晶石を仮に粉々に砕いたとしても聖属性の攻撃を与えなければ再生する事に変わりはなく、現実世界の銃器でスケルトンの肉体を粉々に破壊したところで倒すまでには至らない。
「くっそ~……現実世界の武器でチートは出来ないか」
スケルトンが相手では無ければ他の魔物相手には十分に現実世界の銃器は効果を発揮したかもしれないが、この階層では大きな役には立たない事にレアは溜息を吐き出す。
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