第52話 オークキング
「何だっ……!?」
「いたたっ……にゃああっ!?」
「あ、ごめん……」
押し倒した拍子にレアは雛の胸元を鷲掴みにしてしまい、彼女は猫のような声を上げる。だが、今は攻撃を仕掛けてきた存在の確認を優先し、レアは彼女とライムを抱き上げて矢が放たれた方角に視線を向ける。
「プギィイイイッ……!!」
「オーク……!?いや、それよりも……」
「あ、あの豚さん!?加奈ちゃんの弓矢を持ってるよ!?」
化石の内部から複数のオークが姿を現し、その中には「狩人」の勇者である「鈴木加奈」の所有していた武器を所持したオークが居た。弓矢を握りしめたオークだけが毛皮が赤色(通常は茶色)に染まっており、全体的にやせ細っていた。
「あいつだけ雰囲気が違うな……それに人間の武器まで使うなんて、もしかしてこいつ……」
『オークキング――オークの亜種であり、通常の個体よりも強靭な肉体を誇り、知能も高い。体内には転移石が存在する』
試しにレアは鑑定の能力を発動させ、赤色の毛皮のオークの様子を調べると予想通りに普通のオークではない事が判明する。名前に「キング」という単語が付いている事からこの階層の主である可能性が高く、同時に「転移石」を所有した存在である事が判明する。
本来ならば次の階層に移動するために必要な転移石を所持している魔物のため、大迷宮の挑戦者ならば次の階層に移動するには戦闘は避けられない存在である。ダガンは事前に転移石を所有していたので第三階層にまで移動出来たがが、レアの場合は転移石を所有していないので文字変換の能力で作り出すか、あるいはこの場でオークを打ち倒して転移石を入手する方法もある。
「こいつがオークの王様か……思っていたより随分と小さいな」
「よ、よ~しっ!!霧崎君、ここは私の魔法で……わあっ!?」
「プギィイイイッ!!」
「危ないっ!!」
杖を構えようとした雛に対してオークキングは弓矢を構えて彼女の足に向けて射抜き、咄嗟にレアが彼女の身体を突き飛ばした事で矢は回避出来たが、魔法を使用させる前に攻撃を仕掛けたオークキングの行動に彼は今まで倒してきた魔物とは一味違う事を思い知らされた。
「こいつ……雛が魔法を使おうとしたのを見抜いて攻撃したのか」
「いたたっ……もう、酷いよ霧崎君……わぁっ!?」
『プギィイイイイッ!!』
オークキングの周囲に存在した10体程度のオークが動き出し、レア達を取り囲むように移動を行う。逃走経路を遮断したつもりなのか取り囲んだ瞬間にオーク達は醜悪な笑みを浮かべるが、その彼等の行動が命取りとなる。
「全員痺れてろっ!!雷属性エンチャント!!」
『プギャアアアアアッ!?』
「わあっ!?か、雷っ!?」
「ぷるんっ!?」
レアが掌を地面に押し付けた状態で付与魔法を発動させた瞬間、彼の手元から流れ込んだ雷属性の魔力が周囲に拡散し、彼等を取り囲んでいたオーク達の足元から高圧電流が流れ込んで感電させる。この大迷宮に訪れてからレア自身もレベルを上げており、しかも付与魔法の熟練度も高まっているので魔法の電撃を受けたオーク達は全身が黒焦げになって地面に倒れこむ。
「プギィッ……!?」
「最後はお前だな……火属性エンチャント!!」
仲間が一瞬で倒された事でオークキングは激しく動揺するが、その隙にレナは地面にもう一度付与魔法を施す。先程の鑑定のスキルの結果によればオークキングの体内に「転移石」が存在すると判明しており、雷属性の魔法では体内に電流が流れ込んで転移石に悪影響が生まれる可能性を考え、彼は火属性の魔法を使用してオークキングの足元に火属性の魔力を流し込んだ瞬間、地雷のように地面が爆破する。
「プギィイイイッ!?」
「おおっ……これは便利だな」
「わあっ!?き、霧崎君、凄いっ……けど、ちょっと怖い」
オークキングは地雷を踏み込んだように派手に吹き飛び、やがて数メートル離れた地面に倒れこむ。通常のオークならば死亡しても可笑しくは威力だったが、オークキングは苦悶の表情を浮かべながらも起き上がり、憎々し気にレア達を睨みつける。
「プギィッ……!!」
「うわ、まだ生きてるのか……だけど、もう終わりだよ」
「ぷるぷるっ」
まだ反抗の意識が残っているオークキングに対してレアはライムを抱えてその場を離れる。自分が圧倒的に有利な状況で距離を取る彼の行動にオークキングは疑問を抱くが、すぐに彼の傍に存在する雛の行動を見て目を見開く。
「雛さん、お願いしやす」
「任せてっ!!いっくよ~……!!」
「プ、プギィッ……!?」
「フレイムランス!!」
雛が杖を構えた状態で自分を狙っている事に気付いたオークキングは離れようとするが、彼女は容赦なく砲撃魔法を発動させ、瀕死の状態のオークキングに向けて火属性の砲撃魔法を解き放つ。
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