第27話 ダガンの実力

「凄いよ皆!!まさかこんなに成長しているなんて……!!僕は感動した!!」

「ギィイイイッ……!?」

「あの……褒めてくれるのは嬉しいんですけど、ゴブリンをアイアンクローしながらこっち見ないでくれませんか……?」

「ああ、ごめんね!!よっと!!」

「ギィアアアアッ!?」



ダガンは無数のゴブリンに纏わりつかれながらも余裕の態度は崩さず、ゴブリン達は両手に握りしめる石で彼を叩きつけるが全く損傷を受ける様子はなく、虫を振り払うようにゴブリン達を引き剥がす。



「無益な殺生は避けたいけど、相手が襲い掛かってくる場合は遠慮しちゃ駄目だよ!!」

「は、はい……」

「そ、そうですね……」



勇者たちは血塗れの状態のダガンに身体を引くが、彼の言葉通りに魔物達は本気で彼等を殺害するために襲い掛かるため、躊躇すれば間違いなく殺されてしまう。そんなダガンの教えに全員が身を持って思い知る中、雛だけが杖を握りしめたまま明るい声を上げて残りのゴブリン達に魔法を発動させる。



「あ、やっと思い出した!!最初にこの魔法を覚えたんだよね!!サンダーランス!!」

『ギィアアアアアアッ!?』

「うわっ!?」

「危ないっ!?」



雛の構えた杖の先端に取り付けた黄色の宝石を想像させる「魔石」から電撃が放たれ、一気に4体のゴブリンを蹴散らす。相手は肉体が完全に黒焦げて絶命すると、雛は杖を持ち上げて電撃を解除すると全員が彼女の砲撃魔法の威力に戦慄した。



「す、凄いな……これが魔法か」

「やっぱ、霧崎の魔法とは比べ物にならねえな……」

「うっ……いや、これと比べられても」

「え~?でも、今のが一番弱い魔法だよ?」

「あの威力で!?」

「恐ろしいわね……」

「皆!!素晴らしいよ!!こんなに成長していたなんて!!」



ダガンが感動の声を上げてゴブリンを撃退した勇者達を褒め称えるが、初めての戦闘を終えた事で緊張の糸が崩れた全員がその場に座り込み、全員がかなり疲労していた。それでもレベル9のレアだけは体力的にも余裕があり、彼は倒したゴブリンの死骸を見ようとした時、ある違和感を抱く。



「あれ……?」

「ん?どうかしたの?」

「いや、ゴブリンの死骸の数が合わないなと思って……」

「え、嘘っ!?」



最初に現れたゴブリンと死骸の数が合わない事に気付いたレアは不思議に思いながらも死骸を数え上げるが、やはり数が1体少ない事に気付く。彼は不思議に思いながらも全ての死骸を確認すると、足元に緑色に光り輝く長方形の水晶を発見した。大きさは鶏の卵よりも小さく、不思議に思った彼は拾い上げるとダガンが驚いた声を上げる。



「キリサキ君、それはゴブリンの結晶石だよ!!良く見つけたね!!」

「結晶石?」

「魔物の中には打ち倒す事で肉体が結晶のような魔石に変化する個体がいるんだ。この結晶石は砕く事で大量の経験値を得られることから経験石とも言われているんだよ」

「マジかよ!!レアアイテムという奴かっ!?」

「生物の死骸がこんな物に……本当に凄い世界だな」

「おい、霧崎!!それを俺に寄越せよ!!最弱職のお前が持っていてもしょうがないだろ!!」

「うわっ……辞めてよ」



レアが拾い上げた結晶石に考が真っ先に取り上げようとしたが、他の人間が彼を取り押さえようとした時、ダガンは顔色を変えて結晶石を持つレアに声を掛ける。



「駄目だキリサキ君!!早くその石を捨てるんだ!!この階層には……!!」

「えっ?」



ダガンの言葉に彼が振り返った時、唐突に激しい振動が地面に走り、全員が体勢を崩して地面に倒れこむ。唐突な地震に誰もが驚愕するが、レアは自分の手元に存在する結晶石が光り輝いている事に気付く。



「な、何だ!?」

「地震!?かなり大きいぞ……うおっ!?」

「違うっ……これは……!!」

「ダガンさん?」



レア達はダガンの様子が可笑しい事に気付き、彼はこれまでに誰も見た事もない険しい表情を浮かべながら地面に視線を向け、レアに向けて大声で叫ぶ。



「何をしているんだ!!早くそれを捨てるんだキリサキ君!!」

「えっ……」

「この地震の正体は……!!」




――ダガンが言葉を言い終える前に一際激しい振動が地面に伝わり、地割れのようにレアが存在する地面が罅割れを起こす。そして彼が存在する地面が完全に崩壊を引き起こし、落とし穴のように地面に空洞が生まれて彼の身体が飲み込まれる。




「うわぁっ!?」

「き、霧崎君っ!?」



位置的に近くにいた瞬がレアに掌を伸ばしたが間に合わず、彼の身体は草原に誕生した落とし穴に落下してしまう。

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