第46話 高山の捜索

「だけど高山君の盾をオークの洞窟の前に落ちていたのが気になるな……第三階層までは一緒だったんだよね?」

「うん……もしかして高山君も私みたいに第二階層に落ちちゃったのかな?」

「それは分からないけど、高山君の盾があった事を考えても第二階層に存在する可能性が高い。ちょっと行って調べてくるよ」

「えっ!?ま、待って!!私も一緒に行くよ!!一人にしないでっ!?」

『ぷるぷるっ』



レアが立ち上がって転移のスキルを発動しようとすると、スライムを抱えた卯月が慌てて引き留めるが、既に魔石も杖を失くしている彼女が行動を共にするのは危険であり、レアは彼女を優しく諭す。



「大丈夫だよ。俺は転移のスキルを持っているから自由に逃げられるし……卯月さんは危険だからここで留守番していて。俺の予想だと戻ってくるのにかなり時間が掛かると思うけど……」

「え?」



雛の話を聞いてレアはこの地下階層と別の階層の時間の流れが違う事を予測し、雛を残して彼は転移を発動させて第二階層に再度移動を行う――






――最初に雛と遭遇した場所に戻ったレアは自分が作り出した「鉄壁」を確認し、周囲にオークの姿が見えない事に気付く。レア達を見失った事で既に立ち去ったらしく、無数の足跡だけが残されていた。



「さてと……高山を探さないとな」



周囲の様子を窺い、レアは自分が生み出した鉄壁に視線を向け、彼は鑑定と文字変換の能力を発動させて別の物体に変化させる。今回は2文字なので彼が選択した文字は「拳銃」だった。



「これでよし……さて、何が出るかな?」



目の前に存在する鋼鉄の壁が光り輝き、やがて形状が縮小化して掌を差し出した状態のレアの手元に「マグナム」を想像させる拳銃が握りしめられる。種類はリボルバー式らしく、弾丸も6発だけ装填されており、彼は拳銃を両手で構える。



「マグナムか……やっぱり、意味が曖昧とした文字だと俺の想像通りの物が出るんだな。卯月さんの家を作るときは特に何も考えていなかったけど……」



拳銃を握りしめながらレアは操作法を確かめ、引き金を引いて試しに1発だけ撃ち抜く。彼は既にレベルが24に到達しており、身体能力の方も普通の人間と比べると強化されているため、拳銃を撃ち抜いた反動も現在のレアならば軽い衝撃が手元に走る程度だった。



「うわっ!?上手く狙えないな……」



初めて発砲した拳銃の弾丸が地面に衝突し、その光景を確認したレアは命中力に難がある以上は戦闘では利用出来ないと判断すると、彼はステータス画面を開いてSPを消費して役立ちそうなスキルを覚える事にする。



「狙撃スキルか……命中力を上昇させる。よし、これにしよう」



未収得スキルの一覧から彼は「狩人」や「射手」の職業の人間が覚える「狙撃」と呼ばれるスキルを習得すると、早速スキルの効果を確かめるために拳銃を構え、的になりそうな障害物を探す。



「おっ、あれがいいな。あいつを狙おう」



100メートル程離れた場所を歩いているオークを発見し、まだレアの存在に気付いていないのか腹部を摩りながら歩いており、その様子を確認した彼は拳銃を構える。弾丸の残り装填数は5発のため、外さないように気を付けながら撃ち抜く。



「ここっ!!」

『プギィッ!?』



狙いを定めて引き金を引いた瞬間、発砲音と共にオークの頭部に弾丸が貫通する。相手はその場を倒れて身体を激しく痙攣させ、先ほどは地面に間違って発砲したにも関わらずに今度は100メートル以上も離れていた標的を撃ち抜いた事に驚きながらもレアは拳銃の威力を確かめる。



「これは凄いな……だけど、弾丸に限りがあるのが面倒だな。補充の度に文字変換の能力を使わないといけないし、それに発砲音がでかすぎるから他の敵を誘き寄せるかも知れない」



拳銃の威力を確かめる事は出来たが、発砲音が大きすぎる事と弾丸の補充に難点があり、仕方なく彼はアイテムボックスの中に回収して探索を再開する。ここから先はカラドボルグも装備して移動を始める事を決め、高山の捜索を行う。



「高山の奴は何処に居るんだろうな……無事だといいけど」



医療室の一件では彼に大きな迷惑を掛けられたが、それでもクラスメイトが生き残っている事を祈りながらレアは荒野を移動する。だが、大迷宮の階層は非常に広く、徒歩であろうと長時間移動を続ければ体力を消耗してしまう。文字変換の能力を利用して「自転車」でも生み出そうかと考えながらレアは捜索を続けていると、前方に巨大な岩山を発見する。



「結構高いんだな。100メートルぐらいはありそう……何だ!?」




――プギィイイイイッ!?




岩山の麓に辿り着いたレアは上空を見上げると、頭上から人型の物体が落ちている事に気付き、咄嗟に彼は後退すると、岩山の頂上から落ちてきたのは全身に刀傷を受けたオークが地面に向けて落下してきた。

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