第41話 転移魔法陣
――レアが草原に移動してから1時間が経過し、ダガン達の痕跡を辿りながら移動を続ける。途中で何度もゴブリンの襲撃を受けたが魔装術だけで撃退を行い、魔力を消耗したら転移の能力で回復を行い、追い詰められそうになったら安全な場所に転移して避難を行う。
そして彼はダガン達の痕跡を辿る内に奇妙な建築物を発見し、黒色のサイコロを想像させる立方体の建物であり、全長が10メートルを超え、一つだけ存在する扉は大迷宮の出入口と同じく黄金を想像させる金色の扉だった。
「この中に皆は入ったのか……?鍵は掛かっていないようだけど……」
黄金の扉は既に左右に開かれており、レアは警戒しながら内部に入り込む。建物の室内には台座が存在し、レアが使用する「転移」の魔法陣と酷似した紋様の魔法陣が台座に刻まれており、天井には巨大な水晶が埋め込まれて日の光を魔法陣に注いでいた。台座の四方には柱が存在し、柱の上部には無色の水晶玉が設置されており、疑問を抱いたレアは鑑定の能力を発動させて台座を調べる。
『転移の台座――大迷宮内に存在する転移魔法陣が設置された台座。別の階層に移動を行える』
視界に表示された画面の説明文を確認するとレアは次の階層という単語に考え込み、現在の建物の傍に存在したダガン達の焚火の痕跡が残っていた事から彼等が次の階層に移動した可能性が高く、試しに彼は台座の魔法陣の上に移動するが魔法陣が発動する様子はなかった。
「何か仕掛けがあるのか?鑑定の能力でも使用方法は表示されないんだな……」
ダガンならば転移魔法陣の使用方法を知っていたのかも知れないが、レアは自力で台座の魔法陣を発動させる方法を調べるため、周囲の探索を行う。
「柱には特に怪しい所は無し……ゴブリンもここに入れるみたいで床が泥だらけ……お、魔法陣の中央に文字が刻まれているな」
魔法陣の中央に文章が掘られている事にレアは気付き、内容を確認すると魔法陣の使用方法の説明文が刻まれていた。魔法陣の発動には「転移石」と呼ばれる代物が必要だと書かれており、転移石を所持しているのは「ゴブリンキング」と呼ばれる個体を倒す事で入手出来ると判明した。
「ゴブリンキング?そんな奴がいるのか……どっちにしてもそいつを倒さないといけないのか、参ったな」
レアは転移魔法陣に必要な転移石を入手するためにゴブリンキングと呼ばれる魔物を捜索しようとした時、冷静に考えるとわざわざ時間をかけてゴブリンキングを探し出すよりも文字変換の能力を使用すれば良い事に気付く。
「よくよく考えれば探す必要ないな。普通に三文字の物を転移石に変換させればいいか」
このような状況の為にレアは家の中に存在した道具をアイテムボックスに保管しており、今回は食材の「レタス」を使用して文字変換の能力で「転移石」に変化させる。
「これでよし……変換!!」
掌の上に存在するレタスが能力を発動させた瞬間に光り輝き、やがて円形型の白色の石に変換する。表面に三角形の魔法陣が刻まれており、大きさは野球ボールよりも小さく、レアは転移魔法陣の中央に近づけると魔法陣が発光を始める。それを確認した彼は転移石を魔法陣に直接置くと、台座の四方に存在した柱の水晶玉が光り輝き、天井の水晶に台座と同じ魔法陣が浮かび上がり、やがて台座全体が光に包み込まれた。
――レアの視点からは見えなかったが、もしも第三者が建物の外に存在した場合、青空が描かれている第一階層の天井から光の柱が降り注ぎ、建物を飲み込んだ光景を目撃する事になる。
台座に存在したレアには視界が光で覆われ、一瞬だけ身体が無重力に襲われたような浮揚感に襲われ、気付いたときには何時の間にか別の場所に移動を果たしていた。
「ここが次の階層か……第一階層と比べると随分と殺風景だな」
彼が辿り着いた「第二階層」は荒野という表現が相応しい光景が広がり、第一階層の草原と比べると緑の自然が一切存在しない荒れ果てた大地が広がっていた。こちらは第一階層の天井が青空に染まっていたのに対し、天井に太陽が刻まれているだけで他には雲一つ描かれておらず、温度も草原と比べると高い。
「少し熱いな……皆もここに飛ばされたのか?」
額の汗を拭いながらレアは首位を見渡し、少なくともダガン達の姿は確認できず、彼は初めての階層に入ったので念のためにアイテムボックスからデュランダルを取り出して装備する。第二階層に関してはダガンから「オーク」の住処だと彼は聞かされており、用心しながら移動を開始しする。
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