第8話 歓迎の宴

――歓迎の宴が始まり、召喚された勇者たちは恐らくは彼等が現実世界で普通に生きていれば一生味わえないと思われる豪華な食事を堪能した後、この国の将軍や大臣と邂逅する。殆どの人間が召喚された勇者が10代半ばの人間である事に驚いたが、中には普通の人間よりも容姿が美しい雛や美香に興味を抱く人間も多かった。


他の勇者達が国の重要人物と親交を深める間、付与魔術師の勇者であるレアは一人で会場の隅に移動してステータス画面を何度も確認していた。彼が不慮の事故でウサンの秘密を晒してしまった出来事が知れ渡っているのか、不用意に彼に話しかけてウサンに目を付けられる事を恐れて誰も話しかけない。ウサンはこの国では皇帝に次ぐ権力者であり、宴の席には彼も参加していたが憎々し気にレアを睨みつけていたが、当の本人は気付かずにステータス画面を調べる事に集中する。



「う~んっ……ゲームみたいに攻撃力とか防御力は表示されないのか」



自分のステータス画面を開きながらレアは思い悩み、RPGゲームのように自分の現時点の正確な能力を確かめられない事に溜息を吐く。



――――ステータス――――


レベル:1


主職:付与魔術師


副職:無し


SP:10


―――――――――――――


職業スキル(予備)


・無し


―――――――――――――


戦技(魔法、技等の戦闘系のスキル)


・無し


―――――――――――――


技能スキル


・翻訳スキル――異世界に文字・言語を完全に理解できる


―――――――――――――


固有スキル


・無し


―――――――――――――



勇者の加護


『文字の加護――1日に1文字だけあらゆる文字を変換できる。文字の削除や追加は出来ない』


―――――――――――――



これが現時点で表示されているレアのステータス画面であり、この世界に存在する「スキル」と呼ばれる能力は4つ存在する。まず最初の職業スキルは生まれた時に身に着ける職業であり、その人間の能力に適した職業が割り当てられる。例えば戦闘に向いている人間は「剣士」や「格闘家」の職業を習得し、魔法関連の能力が高い人間は「魔術師」の職業を身に着けている。この職業スキルはレベルの上昇の際の能力の成長率に大きくかかわっており、戦闘職の人間ならば身体能力方面、逆に魔法職の人間ならば魔法関連の能力を重点的に成長を遂げる。


技能スキルに関しては4つのスキルの種類の中でも最も数が豊富であり、様々な能力を身に着けられる。例えば剣士の職病の場合だと「剣術(剣の速度を速める)」や「腕力強化(腕力を強化)」のような技能スキルを身に付ける事が可能であり、他にも「料理人」ならば「調理(調理関連の技術を身に着ける)」格闘家ならば「頑丈(肉体の耐久力が上昇)」狩人の職業ならば「命中(標的が動かない限り、確実に命中させる)」を身に着けられる。但し、こちらのスキルはあくまでも「才能」のような能力であり、スキルを覚えても鍛え上げなければ高い効果は生み出せない。


戦技に関しては攻撃系統の全てのスキルを差しており、砲撃魔法もこれに含まれる。技能スキル程ではないが数は豊富だが、発動の度に体力や魔力を消耗する。職業に適した戦技のみに「熟練度」という項目が追加され、この項目の数値が高いほどに強い効果を発揮できる。


最後の固有スキルは他のスキルと比べても希少なスキルであり、滅多に習得している人間は居ない。このスキルは常に常時発動する事が可能だが、スキルの種類によっては本人の意思でスキルの発動を切り替える事が出来る。金木姉妹が習得した加護は固有スキルに酷似しており、彼女達の意志に関係なく時間帯によって能力を変化する点では固有スキルに非常に似た能力である。


現在のレア達は翻訳スキル以外にスキルを覚えていないが、このスキルは訓練を行う事で身に着ける事も出来る。例えば勇者の中で美紀だけは現実世界に居た頃から家の家事を手伝っていたので彼女は「調理」のスキルを身に着けており、瞬に関しても彼は現実世界では野球部のピッチャーを務めていた影響なのか既に「命中」のスキルを習得していた。



「このSPを使用すればスキルを覚えられるんだよな……だけど、SPはレベルを上げないと入手できないのか」



ステータス画面に表示されているSPを消費すれば新しいスキルを身に着けたり、あるいは既存のスキルを強化する事は出来るが、このSPは自分の職業に適した能力ならば消耗するSP消費量も少ない。半面に自分の職業に適しない能力の場合は「10」のSP消費を強制される。レアの場合は翻訳スキル以外に覚えているスキルは存在せず、彼は現時点で覚えられるスキルを確認する。

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