第43話 一人目との合流

「あっ!?き、霧崎君!?」

「何やってんの卯月さん!?」

『プギィイイイイッ!!』



無数のオークを引き連れて現れた雛に対し、レアは驚きながらも彼女を助けるためにデュランダルを構えようとしたが、オークの数は20体を超えていた。ゴブリンとは比べ物にならない戦闘力を持つオークの群れは流石に現状ではどうしようも出来ず、彼は足元に落ちていた「小石」を拾い上げて卯月の元に移動する。



「卯月さん!!こっちまで走ってきて!!」

「う、うん!!分かった!!」

「えっと……これだっ!!」



レアの言葉に卯月は頷き、彼は自分が回収した小石に「鑑定」のスキルを発動させ、文字変換の能力を発動して説明文に表示された文章を変更する。今回変換させた文字は「鉄壁」であり、彼は小石を放り投げて雛の背後に迫るオーク達の目の前に鋼鉄の壁を作り出す。



『プギィイイイッ!?』

「わわわっ!?」

「うわっと……」



オークと雛の間に誕生した鋼鉄の壁は横幅が40メートルは軽く存在し、高度は20メートルを超える巨大な壁であり、レア達の反対側から衝突音とオークの悲鳴が響き渡る。突然に出現した壁に雛も驚愕するが、彼女は足元をもつれさせて転び掛けた所をレアが抱き留める。必然的に彼女の身体を抱きしめる形となったが、その際に彼女の豊かな胸元を押し当てられて柔らかい感触がレアの胸板に広がる。



「うわっ……だ、大丈夫?」

「こ、怖かったよ~……ありがとう」



卯月は涙目でレアに抱き着き、怯えた様子で彼から離れようとしない。そんな彼女にレアは自然と頭を撫でやりながら前方の「鉄壁」に視線を向け、オーク達の混乱した声が向かい側から上がり、彼は壁を迂回してオークが現れる前に避難を行う事にした。



「卯月さん、一旦移動するよ」

「え?移動するって……」

「転移!!」



オークが到着する前に前にレアは転移のスキルを発動させて第二階層から地下の階層に移動を行う――





――数十分後、突然に見知らぬ場所に移動した雛は激しく混乱したが、レアが丁寧に彼女にこれまでの出来事を話して自分の文字変換の能力の正体を伝える。雛はともかく彼の能力で安全な場所に移動した事は理解すると、今度はレアが彼女に自分が居なくなった後の出来事を訪ねると、予想外の台詞が返ってきた。



「あれから1日も経過していない!?」

「う、うんっ……この建物の中だと時間がよく分からないけど、多分4時間ぐらいしか経っていないと思うけど……」



驚くべきことに雛によればレアが第一階層の落とし穴から姿を消してから4時間程度しか経過しておらず、彼女としては落とし穴に飲み込まれたレアが消えてからそれほどの時間は経っていないと告げる。だが、実際にレアは地下の階層に落とされてから既に4日程度は間違いなく過ごしており、彼の文字変換の能力も日付事に更新されていたので間違いなくレアが数日間は地下の階層に過ごしていたのだが、雛によれば少なくとも自分達が大迷宮に入ってから1日も経過していないのは間違いないという。



「霧崎君が落とし穴に落ちた後、瞬君と茂君が助けようとしたんだけどダガンさんに止められたんだよ。その時にダガンさんが霧崎君が……何だっけ?えっと……なんとかワームという名前の魔物に攫われたと言ってた気がする」

「なんとかワーム……良く分からないけど、俺が魔物に攫われたと言ってたの?」

「うん……最初は瞬君と茂君がダガンさんに助ける方法はないのか聞いてたけど、ダガンさんが凄く悲しそうな顔で土下座したんだ。だから皆、霧崎君がもう助けられないと思って……」

「そうなのか……まあ、仕方ないか」

「ご、ごめんね……瞬君と茂君は凄く悲しそうな表情を浮かべてたけど、高山君と鈴木さんは早く先に進もうって言いだして喧嘩をしちゃって……」



レアは自分が落とし穴に落ちた後に謎の魔物に攫われて地下の階層に移動した事を知り、実際に彼自身も地下に落ちた時に唾液のような粘液が自分の体に纏わりついた事を思い出す。他の人間が自分の事を既に死亡していると諦めていた事は残念だったが、状況的には命を落としたと考えても仕方がなく、レア自身は自分を諦めたダガン達を責める気はなかった(実際には自分だけ文字変換の能力で自由に過ごしていた負い目も感じている)。



「その後は暗い雰囲気のまま移動してたんだけど、途中で転移門を発見してダガンさんが持っていた転移石を使って上の階層に移動してたんだけど……」

「ちょっと待って、転移門って……?」

「あ、各階層を移動できる「転移の台座」が存在する建物の名前だよ。レア君もそれを使用して上の階層に移動してたんだよね?」

「あ、ああっ……あれね」



レアは第一階層で発見した建物を思い出し、雛の言葉から建物の名前が「転移門」と呼ばれる各階層を移動する転移の台座が存在する建物だと発覚する。

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