第20話 聖属性の付与魔法の活用法

――レア達が異世界に召喚されてから半月が経過し、男性陣は毎日激しい訓練の日々を送っていた。ちなみに女性陣は女性の将軍が面倒を見ており、こちらは効率的で身体に無理のない訓練を指導している。しかし、レア達の担当であるダガンはスパルタという言葉が生ぬるく感じるほどの訓練を彼等に課す。



「ほらほら!!早く走らないと置いていくよ!?」

「くそっ……何であいつはあんな恰好なのに追いつけないんだよ!?」

「喋るな大木田!!無駄に体力を消耗するぞっ!?」

「頑張って高山君!!」

「む、無茶言うなっ……うええっ!!」

「うおおっ!?高山がまた吐きやがった!!」

「霧崎君!!彼に魔法を掛けてくれ!!」



早朝の訓練は城内のマラソンから始まり、レア達は兵士の鎧を身に着けた状態で先頭を走るダガンの後に続く。彼は全身に鎧と大量の錘を身に付けながらも涼しい顔で駆け抜け、その後ろ姿を必死にレア達は追いかけるが、途中で高山が立ち止まって吐くと、即座にレアが彼の前に移動して聖属性の付与魔法を施す。



「聖属性エンチャント!!」

「ううっ……くそ、すまない……」

「いいから早く立て!!追いかけるぞ!!」



聖属性の回復魔法を受けた考は多少は回復したが、全快には至らない。この二週間の間にレアの聖属性の付与魔法も熟練度が「5」まで高まったが、それでも完全回復させる程の回復量には至らない。それでも訓練の途中で倒れこんだ人間に彼は積極的に聖属性の付与魔法を施し、肉体の簡単な治療を行う。



「くそっ……こんな事を何時まで続けるんだ!?」

「少なくともあと半月は続けるつもりなんだろ!!いいから行くぞ!!」



訓練中は勇者全員が共に行動する事を義務付けられており、考が立ち止まった事で他の3人も動けず、ダガンとの距離が開く。もしも彼よりもゴールである裏庭に1分以上の時間で遅れてしまうと朝食は抜きであり、昼食の時間帯までの訓練が地獄となる。



「お、おい霧崎!!聖属性の付与魔法は身体能力を強化させるんだろ?俺達にも掛けられねえのかよ?」

「それをしたらダガンさんも本気で走り出すから追いつけなくなるけど……」

「くそ、あの野郎……本当に俺達を勇者と敬ってんのか!?」

「いいから走れ大木田!!もう大分離されている!!」



全員が一斉に廊下を駆け抜け、既に見失ったダガンの後を追いかける――






――1時間後、無事に朝食の席に辿り着けたレア達は女性陣と共に食事を行う。最も昼前の訓練の前に食べ過ぎるといけないため、必要最低限の量だけ補給する。



「はあ……きついっ」

「だ、大丈夫?」

「ああ……何とかね」

「ねえ、朝から城の中を駆け巡られるとうるさくて眠れないんですけど?」

「うっせえっ!!僕達だって好きでやっているわけじゃないんだよ!!」

「ひ、す、すいません……」

「何で金木(妹)さんが謝るの?」

「全く……男子の癖に情けないわね」

「ああ?ぶち殺すぞてめえっ!!」



食事中にも関わらずに騒ぎ立てるクラスメイト達にレアは溜息を吐き出し、試しに全員に対して「鑑定」のスキルを施す。この半月の間に全員が訓練を受け続けており、中には新しいスキルを覚えている人間も存在した。最もこの中で一番成長しているのはレアで間違いなく、彼は毎日の訓練で確実に成長していた。



――――ステータス――――


レベル:9


主職:付与魔術師


副職:拳闘家


SP:23


―――――――――――――


職業スキル(予備)


・無し


―――――――――――――


戦技



付与魔術師(専用スキル)


・火属性 熟練度:1


・風属性 熟練度:5


・氷属性 熟練度:1


・雷属性 熟練度:1


・土属性 熟練度:1


・闇属性 熟練度:1


・聖属性 熟練度:5



拳闘家(専用スキル)


・乱打――拳を複数回突き出す  熟練度:3

・弾撃――全身を弾丸のように回転させて拳を打ち込む  熟練度:4


―――――――――――――


技能スキル


・翻訳スキル――異世界に文字・言語を完全に理解できる

・鑑定――視界内の物体のステータスを読み取る



拳闘家(専用スキル)


・腕力上昇――腕力を上昇    熟練度:2

・剛力――腕力を倍加      強化スキル

・脚力上昇――脚力を上昇    熟練度:2

・加速――移動速度を倍加    強化スキル

・体力上昇――体力を上昇    熟練度:3

・頑丈――肉体の耐久性を上昇  熟練度:2

・受身――外部からの攻撃を軽減 熟練度:2

・回避――回避の際に迅速に行動 熟練度:1


―――――――――――――


固有スキル


・魔法耐性――魔法攻撃に対して強い耐性を得る:レベル5(限界値)

・魔力回復速度上昇――消耗した魔力の回復速度を上昇:レベル5(限界値)

・魔法威力上昇――魔法の威力を上昇:レベル5(限界値)

・魔力容量拡張――魔力を増加:レベル5(限界値)


・アイテムボックス――異空間に物体を収納させる事が出来る。異空間に存在する物体は時間の概念を受けず、あらゆる物を回収できる


―――――――――――――


勇者の加護


『文字の加護――1日に9文字だけあらゆる文字を変換できる。文字の削除や追加は出来ない』

『文字変換の対象がアラビア数字の場合、別の数値のアラビア数字しか変換できません』

『一度変換した文字は24時間は変更できません』



―――――――――――――



これが現時点の彼の能力であり、この半月の間に彼が覚えたのは「アイテムボックス」と呼ばれるスキルだけだった。このスキルは異空間に物体を回収できる能力であり、このスキルを発動すると黒色の画面が表示され、この画面はあらゆる物体を吸収する事が出来る。この中に物体を回収させれば「アイテムリスト」と呼ばれる画面が表示され、自分の意志で自由に回収した代物が取り出せる仕組みである。

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