第12話 高山の能力

「全く……うるさい奴等だな、もう少し静かにできないのか?」

「高山君!?ここに居たのか……」

「てめえっ!!何で訓練をサボりやがった!!」



医療室に存在するベッドに横たわっていた人間が起き上がり、正体が早朝の訓練を抜け出していた考だと判明すると瞬は驚いた声を上げ、茂は怒鳴り散らすが彼は特に気にした風もなく欠伸をする。



「むしろそれはこっちの台詞だね……大木田の方こそ真面目に訓練に参加してる事に驚きだよ」

「君がタカヤマ君かい?僕はダガン、この城の守備隊長も任されている将軍だよ!!」

「ああ、どうも……僕は生憎と無駄なことはしない主義でね。訓練には参加しないよ」

「ん?どういう意味だい?君も勇者なんだろう?」

「勇者だからってあんた等に従う義理はないだろ?あの皇帝も面倒は見ると言ってたし……まあ、世話になっているのは事実だから魔王軍退治とやらは手伝ってやるよ。だけどあんた達の指導を受けるのは御免だ」

「高山君!!そんな言い方はないだろう!!ダガンさんだって君のためを思って……」

「佐藤……お前のその馬鹿正直に助けを求められたら断れない性格は良く知っているが、僕まで巻き込むなよ。お前達のような無能と違って僕は必要もない事をするつもりはないよ」

「それはどういう意味だい?体を鍛える行為は決して無駄じゃないさ!!ほら、こんな筋肉を身に着けられるんだよっ!!」



考の発言にダガンは上半身の服を脱ぎ去り、惜しみもなく上半身の筋肉を見せつける。その行為に医療室を任されている回復魔導士の老婆は「まあっ!!」という驚きの言葉を上げて頬を赤く染め、レア達はその圧倒的な質量の筋肉に身体を引くが、考も頬を引きつらせてダガンから距離を取る。



「そ、そんな物を身に付ける必要はないね。僕にはこの武器制作の加護がある……この能力こそが最強なんだよ」

「あ?武器しか作れない能力なのに何を偉そうに言ってんだ」

「その能力はこの世界の武器しか作れないんだろう?まさか……拳銃でも生み出せるようになったのかい!?」

「拳銃?はっ!!想像力が貧困だな……いいか?この能力はこの世界の「武器」を作り出せる能力だ。つまり、武器という条件さえ満たせればどんな物でも作り出せる……それが過去に失われた物であろうとな」

「まさか……聖剣とか魔剣みたいな武器を作り出せるようになったとか?」



自分の能力を自慢気に語り出した考にレアが適当に答えると、彼の予想が当たったのか考は驚いた表情を浮かべ、自分が説明する前に答えを告げられた事に不満を抱くが、気を取り直したように腕を組んでレアの言葉に頷く。



「まあ、そういう事さ……昨日の宴の後、僕はこの王城に存在する書庫にお邪魔したのさ。そこでこの世界の歴史と伝説として語り継がれている武器を全て調べ上げた」

「ま、まさか……!?」

「お前の能力で作り出せるのかよ!?」

「その通りさ!!僕は書庫で見た文献を頼りに武器制作の能力を試した。結果、僕の目の前に本に描かれていた通りの武器を生み出す事に成功したんだよ!!律儀に武器の名前と性能を細かに書いていた昔の人間に感謝しないとね!!」

「ふむ……」



興奮している考にダガンは冷静な表情で話を聞くが、レア達の視界には上半身が裸の筋肉質の男が仁王立ちの状態で立ち尽くしているので不気味でしかなく、考も圧倒されるようにさらに距離を開く。



「ぼ、僕の武器制作の能力は歴史上の強大な力を発揮した武器を何でも制作できる!!しかも1日に3個も生み出せるんだ!!まあ、一度発動した武器は僕にしか使えないし、1時間も経過したら消えるようだけど……特に問題はないね。この能力さえあれば僕は無敵だ」

「ちっ……!!だったら見せてみろよ!!その伝説の武器とやらをよ!!」

「まあ、いいだろう……どうせ減る者でもないしね。ほら、良く見てろよ!!僕の能力を!!」



茂の挑発に考は高笑いをしながらベッドの上で立ち上がり、両手を構えると彼の掌から魔法陣が空中に誕生する。そして魔法陣の内部から紅色の刃の「日本刀」が誕生する。その光景に全員が驚く中、考は笑みを浮かべながら日本刀を手に取って見せつける。



「どうだい?こいつは妖刀ムラマサ……こちらの世界では1日に数千人の敵を切り殺した将軍が所持していた刀だよ。大昔に召喚された勇者が制作したようだけど、現在は行方不明になっている武器さ。だけど僕は自分の能力で複製する事が出来る……どうだい?この美しい刀は……素晴らしいだろう?」

「けっ……只の刃が赤色な刀じゃねえか」

「なんか思ってたのと違う……」

「その剣は……いや、刀はどう使うんだい?」



考は自慢するようにムラマサを見せつけるが、他の勇者たちの反応は芳しくはなく、彼等としてはもっと派手な武器を見せてくれると想像していたが、出現していたのが自分達の国の武器である事に落胆を隠せない。確かに外見は美しいが、見た目だけでは刀の能力は分からなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る