大四章の2

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 竜夫は蓮見病院にいそいだ。シビックの走りがものたりない。中古で買った車だ。老馬に鞭打つようでもうしわけないが、元気になった姿の麗子にはやく会いたい。

 麗子が吸血鬼マスターの血の呪縛から解放された。このよろこびを野田に伝えようと竜夫は携帯電話をとりだした。するとメールが一通はいっていた。野田からだった。着音に気づかなかった。吸血鬼マスターとの乱闘の最中に着信していた。

「すごいネタつかんだ」というメールだった。

 竜夫はあわてて直に野田に電話をした。呼び出し音はピピピとしている。だが、野田の声はきこえてこない。

「デスク。野田から定時の出席原稿は入っていますか」

「それはない。連絡もつかない。なにやってる。アイツ」 

 そんな。バカな。出席原稿を送ってこないなんて、几帳面な野田がすることではない。いままでだって、そんなことはなかった。竜夫は蓮見病院の駐車場に車を止めて正面玄関に走りこんだ。まず、麗子の元気になった顔を確認してから、野田を探そう。

 看護師があわただしく走りまわっている。

「なにかあった?」

みなまでいわせず、あわただしく返事がもどってきた。

「中藤さん。麗子さんが部屋にいません。なにか連絡はなかったですか」

 夙川ビルで戦ってきた。その間、野田から「すごいネタつかんだ」とメールが入っていただけだ。その野田もどこにいるのかわからない。麗子も病室にいない。これは、どうしたというのだ。

竜夫は不吉なシコリを胸に感じた。リアル夙川は青ざめて倒れていた。吸血鬼マスターの夙川の心臓を魔倒丸で抉った。あいつらは倒した。他におれたちに害意をもつものがいるのか。一件落着とはいかなかったらしい。

病院の広い廊下、待合室を探し回ったが、麗子はいない。見つからなかった。


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