第四章の6
6
「野田さん。ケガはどうだった」
野田のS、富士ゴルフ場のレストランでウエトレスをしている鹿沼ケイコからだった。おっとりとした声。
「職場からか」
「アパートの部屋から」
「デートの話でもするんだ」
「デート? 」
「そうだ。デートはどこがいい。おれも休み取るから。餃子でも食べてから、ベルモールで映画でも観ようか」
「ロングランで『君の名は』をまだやってるわよ」
ケイコとはデートなどしたことはない。まだ知りあったばかりだ。
盗聴を警戒して会話を誘導した。勘のいい娘だ。野田の配慮をいちはやく理解して、会話をはこんでいる。
これからすぐに会おうということになった。
鹿沼ケイコはうれしさが顔からあふれていた。
宇都宮の泉町の立飲みパブでしりあって以来、face to face――顔を合わせるのは、一月ぶりだった。夜、彼女の部屋からなんども連絡はあっが、なかなか時間の調節ができなかつた。彼女は土曜、日曜にはいそがしかった。野田はその日が定休日だ。
「ウチノ、ゴルフ場はVIPROOMがあるの。マスコミの目を憚かるひとが利用するのよ」
一般人の入れないレストランがあり、彼女はそこに勤務しているときかされた。
あのとき、ケイコのほうから話しかけてきた。野田がポケットのライターを探していると隣のスタンドに掛けていた女が馴れた動作で火をつけてくれた。話しているうちに、野田の職業が記者だというと「ウチノ、ゴルフ場には……」と話が発展した。逆ナンパされたような出会いだった。
「どういうことなの……」
「だれかに盗聴されているような気がした」
「どういうこと」
ケイコは同じ質問をくりかえした。
野田はゴルフ場の手前の林で暴漢におそわれた詳細はふせておいた。余計な心配をケイコにかけたくはなかった。ただ、ケガをしたとだけしらせておいた。
「ケガはどうなの」
ようやく、冷静になって、ケイコは野田のケガのようすをきいてきた。
「どこかで、ぼくがあの時間にゴルフ場にいくことがバレていた」
「それで心配してくれたんだ。わたしの口からもれたとは、疑わなかったの」
「ぜんぜん。そんなことを思うくらいなら、最初からケイコと友だちにならない」
「ただの友だちなの」
「信頼できる」
「うれしいわ」
「部屋の固定電話が盗聴されているのかもしれない。でもそのままにして置いたほうがいい。こちらが、盗聴に気づいたことを相手には、しられないほうがいい。このままにしておこう」
映画のあとで、遅い昼食を食べるために、「大戸屋」に入った。それから、「落合書店」にふたりはいき野田は「探偵の鑑定Ⅱ」を買った。
「記者の仕事は探偵や刑事とカブルところがあるんだ」
「わあ、スリリングなのね」
野田はうれしくなった。じぶんの職業をほめられたのははじめてだ。車を八幡山公園の駐車場にとめた。夕暮れ時の公園にはちらほらひとかげがあった。みんなペアだった。
ケイコも野田の肩にもたれかかってきた。そつと野田の股間をまさぐっている。布ごしだが感じる。すごくいいきもちだ。むくむく反応した。
「すごい。ボッキした」
こんなことしてていいのかな。いいのかな。と、とまどっているうちに、ひきだされた。あれよ、あれよというまに、含まれた。
「わたしって肉食系なんだから」
「まさか、ぼくのチンボコたべちゃうの」
「ある意味ではね」
ケイコは野田を押し倒すとのしかかってきた。
「わたしの下の口がたべたかっている。あなたのって、おいしそうだもの。ほらこんなになって……」
そらぁ、あたりまえだ。ケイコはさすりつづけていた。巧みにジッパーをおろし、夕暮れの公園の空気に野田のそそりたつ男根をさらした。
「うわぁ、アスパラだ」
野田はドキリとした。アスパラガスのようにチンボコが細くて貧弱だといわれのかと錯覚した。
野田にははじめなにをいわれているのか、わからない。つらつらかんがえてみるに、栄養ドリンク瓶の口径で、男根の太さをあらわしているのだと理解出来た。
「それって、誉めてくれてるんだ」
「そうだよ。友だちなんかモンキーバナナみたいに細いソチンしゃぶってものたりなかったなんていうの。これって極太だよ」
「ひとと比べたことないから……」
「バァカ。誉めてるのに謙遜するな。謙遜もホラのうちということもあるよ」
がばっと、口に含まれた。もぞもぞしていると思っているうちに、ケイコはジーンズを脱ぎ、パンテイを脱ぎ、男根にまたたくまにゴムをかぶせ、野田のパンツもおろし、のしかかってきた。これって。ゴウチン。ゴウチンされた。主導権はケイコ。腰をエッサエッサホイサッサと上下のゆする。そして、猛烈な甘美な快感が野田をおそい、やっとこ男根がはげしくピストンを開始した。野田が腰をしたからせりあげる。
「情報提供してお金になるのでしょう。情報は金になる。そう父におそわったわ」
ドキッとする。
「心配ないわよ。取りあえずは、これで、払ってもらいますからね。あっ、いい。とどく。おくまで、きてるよ」
ケイコが乱れた。からだが前後左右にゆれて、ロデオの騎士みたいだ。あまり激しくうごくので、野田は両手をケイコの手とつないだ。その反動をうまくとらえた。起きあがり、正上位にもちこむ。ケイコのおおぶりのサネが丸見えだ。たしかに男根がすつぽりケイコの膣にくわえこまれている。ヒクヒク膣穴の柔肉がうごめき、野田の男根をあじわっている。ぐいぐいと攻め立てる。ピストンの間隔がみじかくなる。
「あっ、いいよ、ケイコのココいい」
「どこが」
「からかわないで。わたしのプッシーよ」
ついに女ができた。いつでもヤラセテクレル女と出会った。女のほうが積極的だ。これからはひとり寂しくシコシコオナルこともない。これからは溜めこんでオナニーすることもないのだ。野田は涙が出るほど感激した。それもタダマンだ。男根で奉仕して払えだって。ホストになったきぶんだ。それこそ、給料を全部わたしてもいい。この事件がすんだら、同棲だ。エクスタシーにむかってのぼりつめていく。
「ああ、モウダメェ」
快楽にのけぞったケイコ。
「ダメダメダメイッチャウイクイクイクウ――」
ケイコがしずかになった。まだ、ケイコのなかにいる男根が膣のうごめきをあじわっている。
「草太。格闘技は」
ふいに、颯太とよびかけられた。
「格闘技……? なんのことだ」
「だれか、近寄ってくる。痴漢じゃないことはたしかね」
「はやく、パンツはいて」
野田も記者だ。なんども修羅場はくぐりぬけてきている。ケイコから離れるとすばやく身支度をととのえる。日のくれた公園にはひとかげはない。いや、かすかに薄闇のなかを近寄って来るものの気配がする。桜の巨木のかげから人影が湧いた。
野田のほうが男だから立ち上がるのははやかった。ケイコは上半身にも衣服をつけようとあせっていた。
「なにかあったら、逃げて。わたしにかまわず、逃げて」
いままでの痴態がウソのようだ。
やはり、さくじつ襲ってきた暴漢だった。ブラックスーツできめこんでいる。
「ゴルフ場のオネエチャンにホールインワンですか。一発でいれた感じはどうかな。いい味してたかな」
三人で品のない笑いを漏らした。からかわれている。ねらいはおれか。ならケイコを安全に逃がすことはできる。ところがちがった。
「支度はいいかな。一緒にきてもらう」
タッ! 烈迫の気合いがケイコの喉からほどばしった。声をかけてきた凶悪な顔の痩せた男がふっとんだ。股間をけられた。男のいちばんの急所だ。うずくまって、うめいている。銃声がした。野田が見たのはマズルフラッシュだ。ケイコが倒れた。肩口から血が噴いた。
どうしてどうして。
拳銃で撃たれた?
「逃げて。颯太!」
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