第七章の3

3


 砕けた窓ガラスには透明プラスチックの板が打ちつけてある。

「大臣。そろそろ出発しましょう」

 窓は破壊されたまま放置されている。昨夜の襲撃の凄まじさ、執拗さを物語っている。窓ガラスも床に散乱したままだ。掃き集めて、捨てることは禁じられている。現場に鑑識がはいっている。そのままにしておくように、いわれている。襲撃者の足痕などが、こなごなにくだけたガラスの上にのこっている。

「どうして、襲われたのだ。思い当たることが山田あるか」

 山田は首を横に振る。

「どうだ、山田」

「ありません」

「襲撃は夙川組の武闘派だとわかっています」

 沈着冷静な渡瀬大臣が、めずらしく苛立っている。

 早く弁明しないと政治生命にかかわる。正体不明のテロ集団に襲撃された。どのセクトも犯行声明を出していない。ヤクザに狙われた。そんなことが知れわたれば――。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る