大三章の3


「おれっちは、餃子はきらいだから」

 キッチンからでてきた野田がかれらを遅い昼食にさそった。

 争っている場合じゃない。

「タコ焼きかラーメンがいいな」

 かれらは餃子VSタコ焼の暗闘はしらない。かれらにも知らせておくべきだ。

宇都宮環状道路の大谷寄りにある焼き肉屋「大田原」の二階に席をとる。

 大田原の黒毛和牛だけを使用しているので人気のある店だ。

 大田原は『グーグーだって猫である』の大島弓子とU事工事の出身地だ。城下町で古き良き時代の田舎町の雰囲気をいまに残している。

「臨時収入があったからおれのおごりだ」と野田。

取材費からだせると思っているのではないだろうな? 

竜夫は心配になる。ところが野田は「みんな呼んだら」とつづけた。

吸血鬼の存在を認めないわけにはいかなくなった。太郎たちの話しを――秘密をもっとききたい。野田は興奮している。

「レディスがおれたち『凰夜』からスピンオフしたからこれで全員。チームは5人です」「メグとメコンにメールうつ」


 肉の焼ける音と辛味をおびた調味料のにおいので会話ははずむ。

「川村さんたち、そんな肌だったのか。だったらまちがいなく大谷出身だ。大谷の生まれでなかったら、そんな肌のわけがない。おれたちも『大谷』の血が混じっている」

「だからほら」と、太郎が明かした。たいへんなことをシラッといった。腕まくりしてみせた。ぐっと手を握っていると、埋没鱗なのだろう。肌が変化してくる。タト―とも見える。だとしたら、夙川の配下のQにも地元のQが合流しているかもしれない。だから、栃木の大中寺の藤の話、青頭巾のことをしっていたのだ。

「ワタシたち、こわくて、このひとたち、どこかちがう。ヘンダ。こわい。それで『凰夜』からぬけさせてもらったのよ」

 かけつけてきたメグが竜夫のとなりに座っている。

 メコンもうなずいている。

「はやく大谷に大いなる夜の種族が隠れ住んでいると教えてくれればよかったのに」

「いままで確信がなかったのよ。ごめんなさい」

めずらしくメグがすなおだ。AKBみたいなテロン顔でいうからブリッコじみてはいる。ひどく素直だ。

「おれたちはクォータだから。もうあまり目立たない。大谷にも純血種はそれほどいないス。おれたちだって、これで全員ですから。夜の一族だった記憶はこのサメ肌だけです」   

「そうすると関西風タコ焼き屋のコシダキしている西の吸血鬼と、駅ビルのラミヤができたころに全国から集まってきたラミヤ一族の女吸血鬼に刺激されて、急に動きだした地元大谷の吸血鬼の末裔がいるんだ。川村さんはそれで西の吸血鬼の餌食にされたんだろうな」

「竜ちゃん、これみてみろ」

 携帯PCを野田がさしだす。川村のモノだった。キッチンからでてくるのが野田は

遅かった。キッチンで探しものをしていたのだ。

「小麦粉の袋に隠してあった」という。野田はパソコンを食卓に置く。ポケットから取りだしたメモリーを差しこむ。呼びだしてみると、餃子の皮のレシピが幾通りも載っていた。そして営業日記も。

「野田、これは――」こんどは竜夫が意気込んだ。

「警察にとどけるといい。コピーはとったのだろう」

 野田がだまってうなづく。

 川村夫妻が襲われている映像になった。敵の正体は不明だ。想像はつく。夙川組だ。だが、襲撃犯の顔は薄暗がりなのでわからない。夫妻は作業場から逃げようとした。。だが捕まると、抵抗はしなかった。川村夫妻はいつか自分たちに関西の刺客がくるとおもい隠しカメラを忍ばせておいたのだ。連れ出された時は、殺される。覚悟していた。


 

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