第三章の4


「レデイスが夙川ビルの地下からでてくるのをみた。それで疑った。宇都宮がそんなことになさっているなんて知らなかった」

 まだ……太郎がメグに話している。

「疑って、ごめんな」太郎があやまっている。

「川村さんには、学生のころからよく餃子ごちそうになった。川村屋は、もとは餃子屋だったの。ああ、それで大谷の出なので、太郎さんたちはあまりよろこんで餃子を食べなかっのね」

 ニンニクのにおいに敏感に反応してしまう。体がニンニクを拒絶してしまうのだ。

「この焼き肉だってニンニクのタレでは、たべられない。第一こんな高級な肉はじめてだ。大根おろしはさっぱりしてサイコウダ。ごちそうさま」太郎は食卓に置いてあったテッシュで口についた脂をふきとった。食欲を満たした。満ち足りた顔で竜夫にいう。

「なにかあったら、声をかけてください。スケットします」凰夜の五人のメンバーが声をそろえる。

「また一緒にアバレラレルネ」

 メグがうれしそうだ。

 話しはもりあがった。

 野田の携帯が鳴った。  からの連絡だ。

「川村さんの死因はやはり他殺。失血死。それに薬物は特定されていないが、胃から少量検出された」野田が会席の全員に携帯の内容を伝える。

「噛まれて、吸われた」

 太郎が悔しそうにつぶやく。

「おれは県警にこのメモリーをとどけてくる。コピーはとったから」

 ノート型パソコンから顔を上げて、野田は竜夫にウインクする。コピーしたメモリーをそっと竜夫に渡して席をたった。吸血鬼の存在を認めなくてはならないので渋い顔をしていた。

 竜夫はあわててレシートを野田に渡そうとした。コートを肩に颯爽と、スバヤク、レジの前をとおりすぎていく。「そんな、マエッタな」とはさすがに竜夫は口にはだせなかった。こちらは気ままなバチュラだ。特別出費もなんとかなるだろう。それにしても、トータル三万五千円。カードで支払った。この出費はイタイ。領収書をうけとっていると携帯がバイブレーションを起こした。


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